ride-knowledge_081_main.jpg
ピックアップ

下りのヘアピンは頑張らずにやり過ごす!【ライドナレッジ081】

Photos:
藤原 らんか,iStock(delobol)

ヘアピンコーナリングしようと思わないこと

ride-knowledge_081_01

きつくまわり込んだヘアピンを苦手に思うライダーは多い。山肌を180°折り返す、小さなくせに長く曲がったカーブは、ちょっとでもスピードが出ると曲がり切れない方向へバイクが向かってしまう厄介なシチュエーションだ。
速度も低いので、専門的にいうとコーナリング荷重もないためタイヤのグリップを引きだす乗り方もできない。レースでもヘアピンはちょっとしたミスで呆気なくスリップダウンする気が抜けない箇所でもある。
基本は腰をズラして重心を下げるなど、ライダーがパフォーマンスしようとせず、街中の左折のつもりでやり過ごす曲がり方に徹するのが一番。
とはいえ、曲がれるか不安だったり、怖さが先に立ってどうしてよいかわからない状態に陥ってしまうかも知れない。
お奨めなのは割り切って燃料タンクに近づいた前のほうに座り、上半身が起きたまま車体だけちょっと傾けるリーンアウトだと無難にやり過ごせるのだが、普段ほとんどやっていない乗り方がすぐできるのかという難しさもある。
そこで人によっては違う乗り方のほうが馴染みやすかったりするので、どちらが乗りやすいかを試される前提で手順を説明していこう。

エンジン(重心)に近づくとスラロームしやすい

ride-knowledge_081_02

まずは下り坂でヘアピンに遭遇してしまったら、試してみたいのが燃料タンクに当るまで腰をもっていき、思いきり前に着座する「前乗り」。減速しながら「前乗り」位置になったら、ハンドルをこじらないようにしながら燃料タンクを挟んだ腰と下半身でクイッと車体を傾ける。
この「前乗り」は重心であるエンジンに近く位置することで、重心を中心にいわば前輪と後輪がくねくねとスネーキングしやすい状態で、スラロームに向いた位置関係だ。
車体だけ傾いて上半身が起きたリーンアウトに近い姿勢だが、アクションの割に鋭くは曲がらず意外に大回りするので、焦らず速度を落としたまま曲がっていく先のほうを見据えると、旋回が続いて曲がり切れるはず。

エンジン(重心)から離れるとちょっとした浅いアングルですぐ曲がりはじめる

ride-knowledge_081_03

そしてもうひとつは、下り坂でヘアピンが見えてきたら、通常の着座位置よりさらに後ろ、タンデムの位置にかかるくらい両腕も伸びた思いきり後ろへ腰をもっていこう。
これだとエンジン(重心)から遠くに身体があることで、前輪を支えるステアリングヘッドの角度に、直進から僅か傾いただけですぐ曲がりはじめる、舵角をつけやすいのと似た効果が得られる。
ただそれはリーン直後の曲がりはじめるレスポンスが鋭いだけで、そのままグイグイと曲がり続けてはくれない。なのでアウト側の下半身で車体をホールドする乗り方で、バンクせずに曲がれる状況をつくる必要がある。
具体的にはすべてアウト側だけで、ブーツは車体に接する内側に踝(くるぶし)が当るよう軽くステップを外に蹴り、同時に膝がタンクのアウト側ニーグリップで押した感じになるようステップをやや前に蹴り、シート座面のアウト側の太ももで腰を後ろへ突き出すようにすると、アウト側だけで車体をホールドできる。
ここで少しでも力むと筋肉がグイッと盛り上がって、それぞれの面に対して圧着している面積を減らしてしまう。車体に触れた皮膚に、ちょっとズレた撓み(たわみ)が生じているレベルが最適なことをお忘れなく。
このアウト側ホールドで車体を掴み、イン側はステップにも体重を載せない「空っぽ」にして、脇腹を脱力するなど身体の重心をイン側の低めに集める動作が、この「後ろ乗り」で曲がる手順となる。
因みにこれは速度の高い、曲がり方も120°など浅い角度のコーナーで、カクッと向き変えする際のメソッドで低速用ではないのだが、下りのヘアピンのように限られたシチュエーションで曲がりはじめるきっかけが与えられるため、ライダーにメリハリを感じさせるアクションとして有効活用できるはずだ。

このふたつ、とにかく速度は思いきり落としておいてから、低速なのに時間がかかるカーブをどちらがピンとくる乗り方なのか、余裕のある状況でぜひ試してみよう。

ride-knowledge_081_04