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曲がり切れないと思ったら【ライドナレッジ142】

Photos:
藤原 らんか,iStock(delobol)

上半身を横ではなく下へ、アタマはもっと低く!

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ヘアピン、とりわけ山の中の上り勾配や下り坂にある小さく180°まわり込んだカーブは走りにくい。 180°まわり込んでいると、低い速度でも曲がり続けていて、ふと気がつくとカーブからはみ出しそうな、曲がり切れなずガードレールまっしぐらの走行ラインだったりする。

そんなときの特効薬がコレ。そのままのバンク角で良いので、ひたすら上半身を低く、とくにアタマを低く低く意識すると意外なほど曲がって何とかクリアできるはず。
ここでやりがちなのが、上半身を横へ突き出すような姿勢。

これは下手をすると低速のリーンインで生じる、後輪へ横方向の荷重がないと却って曲がらない状況に陥る。
とにかく低く、下へ下へ……こう自分に言い聞かせるのが正解。
速度が出ていなければ効果てきめんなのでぜひ覚えておこう。できればヘアピンに遭遇したら、一度試しておくと安心なのでぜひ!

曲がりやすくなるチカラの抜き方

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こうした咄嗟の回避はともかく、ヘアピンだと手前から認識できていたら、バイクが曲がっていく能力をライダーが妨げないチカラの抜き方を意識しよう。
バイクは後輪を軸に、前輪が後輪が旋回する軌跡の外側を追従して曲がるという仕組みで走っている。

そしてヘアピンのように、旋回中にコーナリングフォースと釣り合う傾きで曲がれる速度域ではないと、唯々前輪のセルフステア追従という、ほんの僅かな角度でも軌跡が追従できる舵角のレスポンスがモノをいうのだ。
だから左手(首)がハンドルを押したり引いたりしないよう、チカラを抜いている必要がある。

それを左右するのが左手首の角度。ありがちな手首を曲げて体重を載せてしまうポーズはNG。
手の甲がまっすぐなるようにするだけで、ハンドルを押したり引いたりしなくなるのだ。

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そして、ハンドルをホールド(掴む)手の平は、薬指と小指の外側2本で、包み込むようにグリップできれば完璧。
心もとないと感じる場合は、僅かだけ左手でハンドルを上から軽く押す感じにしていると、前輪のグリップ感を含めてバイクの状態を把握しやすい。

前に座って(重心に近づく)リーンアウト、
後ろに座ると(重心から離れる)と浅いアングルですぐ曲がりはじめる

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もうひとつ、ヘアピンで意識すると運転しやすくなる要因に着座位置がある。
低速でバンク角が曲がり方のコントロールをしづらいシチュエーションでは、車体の重心近くに着座する、つまり前のほうに位置すると、エンジン(重心)を動かさず前輪と後輪が蛇行するような動きとなりやすく、クルリと小さく曲がれる条件下になる。

いわばリーンアウトでスラロームする、スネーキングのイメージでヒラリと小さく曲がるのだ。
シートのいちばん前、燃料タンクに触れる位置にいるほど、低速だと効果はかなりある。

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これと真逆の、シートの後ろのほうに着座すると効果があるのが、下り坂のヘアピンだ。
エンジン(重心)から遠く、シートの後ろのほうに着座していると、前輪を支えているフロントフォークのキャスター角(フォークが斜めになった角度)が、車体の僅かな傾きにも敏感に反応して折れ線グラフのような、カクッと曲がりはじめるきっかけが生まれやすい。

下り坂にかかりだしたら両腕が伸びるくらいお尻をスッと後ろへ引くと、車体が直立からちょっと傾いたくらいでも、スッと進行方向を変えるのがわかる。

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そしてこれは街乗りからの応用として、曲がりはじめるとき、視線を曲がっていく方向へクイッと顔ごと向きを変えるのも、小さな低速のヘアピンでは効果が大きい。

このように苦手なライダーが多いヘアピン・カーブには、効果も明確な操り方のコツが各種ある。
とくにバンクせずに曲がれる策は、速度が低い領域の大事なテクニック。意識して取り組んでくのが上達への王道であるのは間違いない。