半クラッチは熱膨張で繋がる位置が変わる!
ほんとんどのバイクは、エンジンのシリンダーよりちょっと後ろに丸い膨らみがある。これがクラッチ。
丸い膨らみの中には、エンジンのパワーを発生するクランクシャフトとを結ぶギヤが刻まれた、クラッチハウジングと呼ばれる大きな径の筒の中に、何枚ものフリクションプレート(画像は9枚)とこれも枚数が多いクラッチプレート(構造上フリクションプレートより1枚少ない)が交互に重なっていて、エンジンからの駆動を切ったり繋いだり、そして滑らせながら伝達するという仕事を担っている。
ご存じのように、エンジンは電気モーターのように停止した状態からチカラが出せない。アイドリングのようにまず吸気・圧縮・爆発・排気の行程を繰り返しながら回転した状態からでないと使えないからだ。
そこで回転しているエンジン出力を、止まっている車輪へ伝えるためにクラッチが必要になる。
自動車だとトルクコンバーターという、回転している扇風機を止まっている扇風機の近くに置くと回りはじめる原理を油圧を使って効率アップする構造を採用しているが、オートバイのエンジンにはそんなスペースもない。
さらにクラッチが滑らないよう接触面を大きくするとコンパクトなエンジンにできないため、このように複数の小径化に分散した構成としているのだ。
そうすると滑らしながら繋ぐ「半クラッチ」の状態だと、摩擦によって熱が発生し、プレートの隙間が熱膨張で縮まり、クラッチレバーを一定の位置にしておいても、いきなり繋がってしまうことに陥りやすい。
エンストを怖れて、エンジン回転を4,000rpmとかまで高めておいて半クラッチしようとすると、いきなり繋がってエンジン回転がストンと落ちてしまうのもこれが原因だ。
クラッチレバー操作は、ご覧のようにレバーのストローク位置で半クラッチ状態をつくるワケだが、これが熱膨張で位置が変わるとなると、ストローク位置を調整しなければ一定の半クラッチにできない。これが実はかなり難しくプロのレーシングライダーでもないかぎり、簡単にはこなせない。
低いエンジン回転域だけを使い、探りながらレバー操作せず、繋がる半クラ位置で短時間に済ませてしまう!
日常的な発進の半クラッチ操作は、低い回転域で駆動がはじまる条件が揃ったところで、スロットルを加速まで開けるのと、クラッチレバーを放してしまうのとが同時というタイミングがベスト。
とはいえ、ちょっとした遅れでエンストするリスクもあるため、短い半クラはなかなかできないと思いがち。
そこで覚えるべきは、もっと勘ドコロを掴んだ操作。
イラストのようにフロントブレーキをかけたまま、アイドリングのままギヤをローへシフトして、クラッチレバーをゆっくり繋いでみると、シート座面がググッと持ち上がってくるタイミングがあるはず。
ここが駆動力を後輪へ伝える半クラがはじまる位置。このレバー位置までサクッと操作してしまい、スロットルをエンストさせないよう捻りながら、クラッチレバーは徐々に離すのではなく、サッと放してしまうのがコツ。
慣れるまでエンストを繰り返すかも知れないが、クルマ通りのない場所で、懲りずに身体が覚えるまで練習しておこう。
そしてどのバイクにも、クラッチレバーの位置調整がついている。なかには手のサイズに合わせてレバー位置とストローク位置の両方が調整できる機種もある。
発進の度の操作なのだから、自分がやりやすい位置にしておくのが原則。面倒がらずそこへ気遣うのは大事だ。
この短い半クラができるようになると、発進してすぐの左折や、渋滞の中での進路変更など、日常的に自由度が大きくなるので、ぜひ早い段階でクリアされるようお奨めしたい。
▶︎▶︎▶︎YouTubeでもぜひご覧ください!▶︎▶︎▶︎第31回 RIDE LECTUREは『発進と小さなターンでクラッチを使いこなす』