1964年頃からGPレースではじまった内膝を開くスタイル
1966年ドイツGPのJ.レッドマンとM.ヘイルウッドと250cc6気筒RC166。それまでレースでもリーンウイズだったのが、細いタイヤでも軽いリーンインと内膝を開くフォームが定番に
膝擦りどころか肘擦りが珍しくなくなったレースシーン。そこまでアグレッシブでなくても、ワインディングでそんなに深くバンクしてないのに内側の膝を開いているライダーを見かけたことがあるはず。
これ、膝を擦りたくて突きだしているのではなく、こうするとカーブが曲がりやすくなるからだ。
1980年代の腰を思いきり落としたハングオン(オフともいう)スタイルが流行るずっと前、1964年頃からそれまで両膝は閉じたリーンウイズだったのを、ホンダやヤマハの高回転ハイパーGPマシンが台頭してきたタイミングで、当時のトップライダーだったジム・レッドマンやマイク・ヘイルウッドなど、次々に内側の膝を開きだし、たまに膝頭を路面にタッチするライダーも出現する、完全に主流のライディング・スタイルとして定着したのだ。
もちろんGPレプリカブームの前でも、峠の腕自慢ライダーたちは内膝を開くフォーム。曰く「内側に空気抵抗をつくって旋回しやすくなる……」などと専門誌が謳う怪しげな言葉を信じていた?ある意味平和な時代でもあった。
実は体幹で重心を内側下方向へ移動する効果が得やすい姿勢
この内膝を開くフォーム、カッコだけではないのだ。効果としてはイラストにあるような、リーンウイズのフォームのまま体幹で重心を内側下方向へ移動させる、効率は良いものの経験の浅いライダーには難しい動作を、この内側の膝を開くことで似たような状況を生み出せるのである。
但し、内側の膝を横へパカッと開く動作では効果は半減以下。コーナーの外側になる腰から太ももに足首まで、外側でジワッとシート座面に燃料タンクのニーグリップ、そしてステップホルダーへ踝(くるぶし)を擦りつけるように、全体で下半身をホールドしておき、そのうえで内側のステップなどに体重をかけない状態で、いわゆる脱力したようにダラリと開く感じにする。しつこいようだが、横へ突き出すのはナシ。
コツは膝を開くというより、ぴったりめのパンツの生地へ内側太ももで寄りかかる……という感じの脱力、チカラを抜く側で、動作ではないイメージでカタチをつくる。
しかし、やったことがなければ、カーブでリーンをはじめるタイミングで、このダラリと内膝をニーグリップから離してみるのをお奨めしておく。腰をズラすとか派手なアクションは、勘違いで車体へ悪影響を与えやすい。誤解の多い腰を捻る動作も実はNG。そんなことをせず、チカラを抜く側で膝を内側下方向へ重心を移す効果へ使うほうが、曲がりやすく安定する。ぜひお試しを!