どんなに丁寧にシフトしてもショックと音が出てしまう……
どんなに高価なバイクでも、発進のときニュートラルからローギヤへシフトするとき、ギヤが入った瞬間「ガシャッ」とか「ガシャンッ」とショックを伝える音と軽く振動も感じる。
何だか無理やりシフトしている感じがして、ゆっくり丁寧にシフトしても、もしくは素早く軽い操作を試しても、ほぼ一緒の「ガシャッ」とか「ガシャンッ」になってしまう。
これはオートバイの独得なミッション構造から生じるメカニカルサウンドなのだ。
オートバイの変速機(ミッション)は、コンパクトで確実かつ丈夫な仕組みが重要なので、常時噛み合い式(コンスタントメッシュorドグミッションとも呼ばれる)という方式になっている。
クランクシャフトから1次減速された直後にクラッチを介したカウンターシャフトとドライブシャフトという2軸が並び、ドライブシャフトには駆動チェーンを回すドライブスプロケットがある。
この2軸には5~6速の減速比で噛み合ったままのギヤがあって、それぞれの軸に空転するギヤと軸にダイレクトに刻まれたギヤとが交互に存在する。
そして空転するギヤには横に突起(凸)があり、固定されているギヤには凹みが刻まれて、シフターフォークというセレクターが横へ空転ギヤをスライドさせ、凸と凹(ドグ)が噛み合うとそのギヤが駆動される仕組みだ。
停車で後輪が止まっていたらドライブ軸も回転していない。
そこへアイドリング回転したカウンター軸の凸をブチ込めば、
クラッチを切っていても「ガシャンッ」とショックと音はでる
この常時噛み合い式構造は、ギヤがニュートラル(空転するギヤがどこにも噛み合っていない)でエンジンがアイドリング回転していると、カウンター軸はクランクから1次減速された回転でまわっていて、ドライブ軸は後輪にチェーンやシャフトを介して繋がっているので回転していない状態。
そこへクラッチを切ってローギヤへシフトすると、ローギヤの凸が凹に押し込まれ、カウンター軸も回転をはじめるが、クラッチが切れているのでエンジンからの駆動力は伝わらない。
この回転していない凹に凸が噛み込むときのショックと音が、あの「ガシャッ」とか「ガシャンッ」なのだ。
乾式クラッチだとフリクションとクラッチ板が揺れて触れる
シャラシャラ音がしてSpl.なフィーリングが伝わってくる!
この「ガシャンッ」の原因のひとつが、クラッチの切れ。一般的にミッションと同じエンジンオイルに浸ったクラッチは、摩耗を防ぎ半クラッチでも滑りがスムーズとメリットも大きいが、クラッチを深く切ってもフリクション板とクラッチ板の間にはオイルが存在して、これがお互いを完全に途切らず引きずった状態にするため「ガシャンッ」が大きく生じやすい。
これがご覧のGSX-RRのようなMotoGPマシンだと、乾式クラッチといってオイルを掻き回す抵抗を嫌って、クラッチ本体のみ空冷にする構造で、スーパースポーツでもハイエンドマシンは、GPマシンと同じクラッチ本体がエンジン外部に露出した乾式クラッチを採用するケースもある。
こうした乾式クラッチなら、ニュートラルからローギヤへシフトしたとき、クラッチ内部でオイルによる引きずりがないため、「カシャッ」と軽く小さな音とショックも少ない状態となる。
そしてフリクション板とクラッチ板が、お互いの隙間が触れたり離れたり状態のため、ギヤをシフトした後に発進するまで「シャラシャラ」と独得なサウンドを聴かせるのだ。
また縦置きクランクのモトグッツィや2バルブOHVのBMWボクサーのように、エンジンのレイアウトからクラッチが単板式と、他の多板式とは異なる構成のため、クラッチの切れがハッキリしていることから、ショックと音のないローギヤへのシフトが可能なバイクもある。
ただ何れにせよ、ニュートラルからローギヤへシフトするとき、クラッチを切っているからといって、エンジンの回転を上げておいてギヤチェンジするのは避けたいトコロ。常時噛み合い式は、クラッチを使わず無理やりシフトしても破損しないほど頑丈につくられてはいるが、大事にするにこしたことはないのと、同じバイク仲間からすればあまり気持ちの良いサウンドではない。