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半クラ発進はナゼいつも同じにできない!?【ライドナレッジ164】

Photos:
藤原 らんか,DUCATI,ShutterStock(chanonnat srisura/TinoFotografie/Melyodes/Cerrotalavan)

ベテランも実は毎回同じにできていない!

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半クラッチはブレーキやギヤチェンジに次いでリクエストの多い課題。
今回もうまくいったり、できなかったりを繰り返すので、何とかしたいとのご要望なので、いつもと違う切り口に開眼のヒントを見つけられるかも、という期待も込めてはじめてみよう。

その半クラ発進、実のところベテランでもその都度少し違ったクラッチミートになっていて、毎回ピッタリ同じにできないのだ。
その理由をクラッチの構造から説明していくと……。

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クラッチはエンジンのシリンダーやクランクシャフトのすぐ後ろ、赤い○で囲んだ膨らみがそれだ。
この丸い膨らみの内側には、ご覧のように薄くて細い円盤状で、コルクのような表面で外にツメがでているプレートと、スチールの円盤で内側にギザギザが刻んであるプレートとが、交互に組み込んであるユニットがある。

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これがクラッチの正体で、コルクに似た材質が貼ってるのがフリクション・プレート、スチールのほうをクラッチ・プレートと呼んでいる。
外のツメと内側のギザギザが、エンジンからの駆動を受けている外側と、ミッションからドライブスプロケットへ繋がっている内側のカウンター・シャフトとで、密着したり離れたりでエンジン駆動を切ったり繋いだりする仕組みだ。

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これが実際にどんな動きで半クラッチになるのか、イラストの略図をご覧頂こう。
見やすくするため、フリクション・プレート3枚、クラッチ・プレート2枚の構造に描いてあるが、実際には写真にあるようにフリクション・プレート9枚、クラッチ・プレート8枚ともっと多い。

このフリクションとクラッチの両プレートが、スプリングで圧着していたのを、クラッチレバーの操作でお互いが離れれば駆動が繋がらない、つまりクラッチを切った状態で、クラッチレバーを少し引いた位置のお互いの密着が弱くなり、徐々に滑るのが半クラッチと呼ばれる状態だ。

そしてややこしいのが、勢いよく半クラしたとき。お互いが滑って摩擦熱を生じるため、両方のプレートが熱膨張、つまり隙間というより圧着度合いがいきなり変わり、食いついてすぐ繋がった状態になってしまうため、半クラッチ状態が維持できない。
ピョコンとフロントが持ち上がったり、エンジン回転がいきなり落ちたりと、スムーズを欠く状態に陥る。
レースライダーはこの膨張するのに合わせてクラッチレバーを僅かに引く調整をして、安定した半クラッチ状態をつくったりするが、これも膨張率が安定しにくいため、なかなか一定にはできない。

ということで、バリバリのキャリアでも、ゆっくり穏やかに発進するときは問題なくても、ちょっと頑張ろうとすると失敗する確立が高くなる、というわけだ。

探りながらレバー操作せず、繋がる半クラ位置だけを使う、 そのレバー位置をアジャストしておくのが大事!

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そうしたムズカシイ操作はともかく、通常の発進では熱膨張も僅かなので安定した半クラ発進が可能だ。
ただ何となくクラッチレバーを操作したのでは、毎回どこで繋がるか変わってしまう。
そうならないように、クラッチレバーのストローク位置と、機能との関係を予め確認して感覚を掴んでおくのが不可欠。

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ここでビギナーがやりがちなのが、クラッチレバーをバイクが前進する位置まで、おそるおそる探りながら離していく操作。
これだといつかはソロソロとゆっくり前進をはじめるが、エンスト怖さでサッと発進できないだけでなく、毎回アテにならない操作による不安から抜けだせないままが続いてしまう。

そこで覚えるべきは、もっと勘ドコロを掴んだ操作。
半クラがはじまる位置はわかっているのだから、そこまでサクッとレバー位置を操作してしまい、その半クラ状態で徐々に繋がる位置を見つける操作に徹するのだ。

そして発進の兆候を感じたら、クラッチレバーは徐々に離すのではなく、サッと放してしまうのがコツ。

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ということで、この半クラッチがはじめる位置が、左指の第一間接が曲がっていて第二関節は少し曲がる程度のリーチに合わせるのが、操作を失敗しにくい。
クラッチワイヤーのアジャスターを回転させ、手の指がちょうどイイ曲がりになるよう調整しておこう。

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バイクの機種によっては、手の大きさに合わせてレバーを調整できるダイアルがあったり、油圧操作だとピストンとの距離をアジャストするタイプもある。
コツは握りやすい位置を避けること。ラクなように思えて、レバー操作は意外に遠い位置であるのを忘れないことだ。

エンストに躊躇せずクラッチミートを覚えよう!

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徐々に慣れてきたら、半クラッチの区間、距離を縮めるあまり滑らさない発進を身につけよう。
最初はエンスト怖さにエンジン回転を上げておいて、そこへそろそろクラッチを当てていく操作になりがちだが、これだと半クラッチの区間が長く、発進してすぐ左折や右折ができないことになってしまう。

何とか頑張って、クラッチが繋がりはじめた半クラを掴んだそのときに、レバーを放すのと同時にスロットルを捻る、このタイミングを掴んだ操作へ持ち込むのがベスト。

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この練習に欠かせないのが、エンストを怖れず、むしろエンストを繰り返し経験しながら、エンジンのトルクが発生するタイミングにスロットルを捻る感覚を身につけるという手順のメソッド。

フロントブレーキを握ったまま、クラッチレバーを離していくと、シートがググッとリフトする位置があり、そこを経過してからエンスト!となるのをまず覚える。
そしてこのシートがリフトする後半の、エンスト手前でクラッチをポンと放すのとスロットルを捻るのを同時、という練習を重ねていくのだ。

広い駐車場のような周囲に交通のない環境で、エンストに備え立ちゴケしないよう身構えながら、懲りずに頑張ると、失敗せずに短い半クラ、既に半クラがないようなスムーズで安定した発進が可能になる。
実は坂道発進など、怖々の半クラはいきなり繋がってアクシデントというリスクもある。
ぜひ身につけておきたい大事なテクニックであるという認識をお忘れなく!

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