GSX400FS IIのエンジンをストロークまで変えてパワーアップ!
スズキは1981年に、400ccクラスでは初の気筒あたり4バルブ、計16バルブとした気鋭の新4気筒エンジンを引っ提げて、カワサキZ400FXにヤマハXJ400に対するGSX400Fをデビューさせた。
新4気筒は燃焼室の4バルブを、吸気側と排気側で1対としてふたつのドームを構成する形状として、吸気時にスワール(渦流)を発生させ燃焼効率のアップを狙ったTSCC(ツインスワールコンバッションチャンバー)を53mmしかないボアに収め、吸気φ19mmに排気φ17mmの大径バルブとすることができた高度な仕様。
ただ競争が激化していることもあって、期待したほど注目を集めず、翌1982年にはアンチノーズダイブのANDFを左のみから両方のフォークへ装備するなど、改良を重ねたGSX400FSIIを投入したがいまひとつパッとしない。
そこでスズキは6ヶ月後にこのGSX400FSIIをベースに、エンジンをさらにハイパワーにチューン、足回りもマニアックな豪華仕様としたGSX400FS Impulseをリリースしたのだ。
ズバリ、レースイメージへと変身させたインパルスは、エンジンのボア×ストロークを56×45,2mmからストロークのみ45.3mmへ延長、398ccを399ccにリミットいっぱいまで拡大、圧縮比も10.5から10.7へ高め、45ps/10,000rpmから48ps/10.500rpmで3.5kgm/8,500rpmへとパワーアップ。
しかも排気系を4into1の集合で、集合部分の形状を並列4気筒の爆発順序である1→2→4→3と同じにエキゾーストを取り回し、排気が渦を巻く「サイクロン」マフラーの、まさにヨシムラ・チューンを量産車へ採り入れたのだ。
加えてオイルクーラーの装備や段付きシートとして、赤黒のヨシムラ・カラーにペイントされた、いかにもすぐレースへ出場できる出立ちとなった。
リヤサスの減衰調整を左右連動でリモート操作が可能!
さらにスズキはこれでもかという仕様を奢った。
2本あるリヤサスペンションの伸び側減衰力を、1箇所のダイヤルで同時にリモート調整できるという豪華な装備だ。
この装備で、サーキットではピットインしたら数秒、ワインディングでも一瞬でダンパー調整して再チャレンジできる、いかにも即戦力なイメージを漂わせていた。
こうしたチューンナップされたインパルスは、価格が僅か6万円強しか違わず、盛り上がるレース熱と共に熱いファンが飛びつく、狙い通りの人気モデルとなった。
バリエーションとして黒赤のヨシムラ・カラー以外のFSIIと同じ塗装のモデルも追加されたが、サイドカバーにはImpulseのロゴがありファンは一瞬で見分けていた。
限られた期間でを思い切った仕様へチューンするスズキの熱量……いかにもなドラマが1982年の後半に展開され伝説と化していくのだった。