愛車のカスタムで一番手をつけやすいひとつがバックステップ。
ただステップは重要な機能パーツなので、"カッコイイ"からだけで位置を変えると乗りにくくなる場合もある。
そもそもバックステップという呼び方は、1974年から発売されたホンダCB400フォアが、英国をはじめヨーロッパで人気だったカフェレーサーのルックスをイメージさせるデザインに端を発している。
低く短いハンドルバー、長めの燃料タンク、そしてやや前傾するポジションのため、ステップ位置を後退させギヤチェンジはリンクを介する一連のスポーティに仕上げるカスタムの手法だ。
これを大型の4気筒スポーツで、量産車へ採り入れたのが1979年のCB750F。
前年に発表したCB750フォアの第2世代、4本マフラーのCB750Kをもっとスタイリッシュでスポーツ性を感じさせて欲しいとの要望で誕生した。
ご覧のようにCB750Kとは、ステップ位置が思いきり後退して、ライディングポジションもやや前傾する。
これが一躍人気車種となったのはご存じの通り。
以来、バックステップがカスタムの定番となり、ステップ位置を後退させる"カッコよさ"が独り歩きするようになり、中にはステップ位置が後ろ過ぎて乗りにくくなるケースもある。
MotoGPマシンと変わらない、
スーパーバイクのステップ位置
アップライトなスポーツバイクを、低く幅の狭いハンドルと後退させたステップ位置でカフェスタイルをカスタムするバイクと違って、スーパーバイクのようなスーパースポーツは、コーナリングの性能を楽しむカテゴリー。
ライディングポジションも、前輪や後輪への荷重配分や、重心を安定して旋回できるよう身体で姿勢をつくる、いわば制御を最優先した位置関係に設定されている。
そしてタイヤのワイド化やラジアル化による進化もあって、ステップは下半身が車体をホールドしやすい位置にセットされた、カフェスタイルからすると意外なほど前にある。
これは腰をコーナーのイン側へズラし、上半身もイン側の低い位置でライダーが思いきり重心を低くして旋回の安定と効率を高める走り方からきている。
このポジションは下半身をアウト側の膝や太ももに腰まで、タンクのニーグリップやシートの座面、そしてもちろんステップとをグリップさせることでライダーがバイクをホールドできる位置関係で、すべての操作のベースとなる重要な部分を担っているのはご存じの通り。
下半身ニーグリップの
ホールドしやすい位置を優先
なぜステップ位置が意外なほど前で、高さも意外に低い位置へ設定されているのかという理由は、すべてこのライディングフォームからきている。
これが後ろ過ぎると、下半身が開いてしまい、お尻の前のほうでシート座面と接するようになり、体重をベッタリと預けることができなくなるからだ。
またブレーキングの減速Gにも、このやや前にある位置だと自然にグリップしやすい位置関係でもある。
そしてステップ位置が高すぎても、アウト側の足首から脛に膝、そして太ももまでの下半身一連が面で車体へ接してグリップしやすい状況がつくれないことになる。
つい下半身の左右へ動かすとき、ステップ位置が高めだとフットワークがよくなる気がしがちだが、下半身が面で接しづらくなるデメリットのほうが大きい。
もちろん各自で体形も異なるので、よりフィットした位置関係のためにポジションが可変のステップキットを装着するメリットは大きい。
ただどの位置が無理なくホールドできるのかなど、やはり専門のプロからのアドバイスをうけたほうが、余計な回り道をせずに済む。
さらにスーパーバイク以外の、ネイキッドスポーツなども、ステップ位置を体形に合わせてセットできると、下半身のホールドが向上して俄然乗りやすくなる。
またステップやペダル類の剛性や操作性なども、手慣れたブランドだとさすがのクオリティで満足感も大きい。
下調べから細かくチェックして、慎重に選ばれるのをお奨めしたい。