低い回転域なら大きく開けても強烈なパワーは出ない!
エンジンの低回転域なら、爆発間隔が広くなりパルシブな脈動で路面をグリップしやすく、トラクションの効率が高まるのでスロットルも大きめに開ける……わかっちゃいるけれど、ビッグマシンは低い回転域でも超強力、いきなりダッシュがはじまるのではと、なかなかスロットルを捻られずにいたりしないだろうか。
しかし2,000~3,000rpmあたりなら、内燃機関の宿命でのけぞるような加速は不可能。
なぜならスロットルの開度は、インジェクションの燃料を噴射している吸気通路にある、バタフライと呼ばれる円形の板を開け閉めしているからだ。
ご覧のスロットルバルブは、BMWのS1000RR。回転域で特性を変える可変バルブを装備したエンジンで、エアインテークのファンネルも長くなったり短かったりと長さを変えるメカニズムがついている。
そのマニホールドの奥に見える真鍮色の円形バルブを、水平に開けると全開、90度に蓋をしたように閉まると全閉という仕組みだ。
エンジン回転が低ければ吸気速度は遅い!
スロットル開度とパワーは比例せず、安全な範疇で路面を蹴る
エンジンは空気にガソリンを噴霧した混合気を、吸気バルブが開くタイミングでピストンが下がるときの負圧で吸い込み、ピストンが上昇するときに燃焼室で圧縮され、点火されて爆発したエネルギーでパワーが発生して、ピストンが上昇するタイミングで排気バルブを開けて排気ガスを排出……を繰り返している。
この吸気する筒状のマニホールド(通路)で真鍮色の円盤が、水平になったり90度に通路を閉じたりしているのがスロットル操作というワケだ。
このエンジンの行程サイクル、速くなる、つまり高回転になるほど爆発回数が増えパワーが大きくなる。
そのとき吸気速度も高まり、これにスロットルを水平(全開)にして燃料噴射も増やすと最大出力が得られる。
という反面、低い回転域では吸気速度も低くなり、この領域でスロットルを水平にまで開けても、燃料噴射を増やし過ぎると混合気が濃くなり過ぎて、効率が悪く加速できない状態へ陥る。
そのため混合気を燃焼効率に良い状態とする燃料噴射量に抑えるため、物理的に急激なダッシュができる状態にはない。
つまり低い回転域では、たとえ排気量の大きなエンジンでも、スロットルを大きく捻ってものけぞるような加速はできないということだ。
低い回転域ほどパルシブな爆発間隔の効果が大きい
リスクなく醍醐味ある曲がり方を楽しもう!
そしてこの低回転域ほど、2気筒エンジンの不等間隔爆発が、路面を強く蹴ってグリップするという効果を大きく得られる。
絶対に飛び出したりしない回転域でスロットルを大きく捻れば、傾いた後輪でこのパルシブなトラクションによってグイグイ曲がれる醍醐味が味わえるのだ。
スロットルバルブはどこを操作しているのか、そして吸気速度が低ければ、鋭いレスポンスにはならずジンワリと時間をかけた加速になり、爆発間隔の広さを活かした路面グリップが得られる……この原理を理解しておくために、周囲に交通のない直線路で2~3,000rpmあたりでスロットルを大きく開けて、そのリスキーではない状態を確かめておこう。
そんなに飛ばしたいワケじゃないから、スロットル開度は控えめに……と躊躇したままは、あまりに勿体ない。
リスキーな走りを求めるのではなく、安心確実な曲がり方を少ないリスクで得られる走り方を、ぜひ身につけて走りの楽しみを拡げてみよう!