満タンでコーナリングすると不安定を感じやすい
できれば燃料補給の心配せずにツーリングしたい。
でもビッグバイクなのにスーパースポーツは燃料タンクが小さい。
ツーリング途中で給油でガソリンスタンドに寄るのは面倒臭い、そう思う人がほとんどだろう。でもスーパースポーツだと、出発時に満タンにしておかないと、途中で給油に立ち寄る必要がでてくる。
ビッグバイクなのに、スーパースポーツは14~16リットルと燃料タンク容量は大きくない。ツーリング向けバイクだと25リットルなどと400~500キロを無給油で走れるマシンも多い。もちろんスーパースポーツはコーナリングなど、運動性を楽しむハンドリングを優先するため、軽量コンパクトに設計しているのだから当然といえば当然。
ところで燃料のガソリン、満タンでどのくらいの重量になるのかというと、比重が0.8程度と水より軽いとはいえ、16リットルで13kg近い。これが10リットルなら8kg。実はスーパースポーツは、このくらいの燃料で走るのを前提に設計していて、ハンドリングもこの重量バランスでつくられている。
だから、ワインディングの麓で満タンにしてから走るのは、せっかくのパフォーマンスを100パーセント楽しめないってことにもなりかねない。満タンだと、たとえばリーンした後に前輪へ大きな負荷が遅れて乗っかってくる、そんな状況に陥りアンダーステア的なほうへバランスが変わり、旋回が膨らむこともあり得る。
そこまでの違和感はなくても、S字の切り返しなど動きが鈍かったり重く感じたりしがちだ。
せっかくのスーパースポーツを味わい尽くすのに、ワインディングに差し掛かるあたりで燃料が半分ちょっとで、その理想的な重量バランスでコーナリングを楽しんでから、帰り道に給油して帰宅というプログラムを組めば完璧。
とくにベテランの年齢の高いライダーには、体力を使わない走りが望ましいので、面倒がらずに何度も給油する走り方に徐々に慣れていくようにしたい。給油で止まるのも、ひと息いれるリズムをつくれるので、ぜひご一考を。
MotoGPマシンは22リットルも積むため、レースで最初の数周は走ったことのない状態というリスクに。
ところでこの燃料の重量と闘う最前線がご存じMotoGP。この最高峰クラスは、コースによって事情は異なるものの、およそ40分で140kmほどを走るのを前提としている。
燃料タンクは22リットルなので、リッターあたり7.6kmと250ps以上で350km/hを楽々越えるトップスピードのマシンにしては燃費も悪くない。
というか、やろうと思えば300psも可能なのだが、そこまでチューンしてしまうと、レースでガス欠になってしまい走りきれないことになる。
なので燃料の残量を睨みながら、競い合うパワーを調整しているのが後半戦。それよりもっとシビアなのがレースがスタートしてからの前半だ。
ご存じスターティンググリッドを決めるQ2、Q1を目がけてプラクティスに全力で取り組む各ライダーとチームだが、プラクティスではベストラップを狙ってこの短時間で走れる燃料しか入れてないのは想像がつくと思う。
そして迎える決勝レース、燃料タンクが18kg近い満タン状態から走り出すワケで、そのコースでそんなに重い状態で走ったこともないから、多くのライダーがしばらくは様子を探りながらの走りになる。
このとき、プラクティスで色々な事情から本領を発揮できなかった後列にいたライダーが、いちかばちかでこの隙に先頭グループへ飛び出してくるのをご覧になったこともあると思う。
もっともレーシングマシンは、急減速や急加速に鋭いリーンなど激しい動きで燃料が波打ったり一気に偏って重量バランスを崩さないよう、タンクの内部に防爆材と呼ばれるバッファスポンジが詰め込まれて一気に動かない工夫がされ、ライダーがリーンした後にグラリと予想外に揺れたりしないようにはなっている。
このように燃料の重さは、ハンドリングに大きな影響を与える重要なファクターだ。サーキット走行会などで走る場合も、満タンにせず燃料タンクの半分くらいで走るほうが、すべてに扱いやすく馴染みやすい状態であるのをお忘れなく。
22リットルものガソリンを積んで決勝をスタートするMotoGPマシン。プラクティスでは絶対に試さない18kg近い「重荷」を抱えた序盤は慎重にならざるを得ない