ハンドルの違いだけじゃない、気遣いの行き届いた本格的な仕様の違い
厳しくなるいっぽうの排気ガス規制で、既存の空冷バイクが次々と水冷化されたり、製造中止に追い込まれていくなか、何とまったく新たに設計した空冷ツインとして注目を浴びるロイヤルエンフィールドのINT650とコンチネンタル GT650。
ベーシックなアップライトハンドルのINT(インターセプターの略)と低く幅の狭いハンドルのGTは、このハンドルの違いだけではない。
GTは前傾したライディングポジションに合わせて、フットレストの位置が後退していて、ギヤチェンジペダルとブレーキペダルもセットで後ろにあるスポーティな仕様。
このスタイルに合わせて、燃料タンクのデザインもINTの丸みを帯びたティアドロップに対して、GTは’70年代以前のレーサー風にロングタンクと似た形状となっている。このニーグリップ形状の違いから関連してシート形状も異なるので、実際に跨がるとGTは膝の部分を狭く感じて、細身な感じに思えるほど。
INT 650
コンチネンタル GT 650
タウンスピードで勢いづくINTと、コーナリング域で伸びやかなGT
そして驚くなかれ、実はエンジン特性がINTとGTでは異なるのだ。
エッ、この2機種のスペック表、ハンドルの違いが車輌サイズの違いとして記してあっても、エンジンはパワー表示も同じで、違いなど表記してないのに……。
仰る通りで、エンジンは出力特性が変わる吸排気のタイミングを左右するカムプロファイルなど、機械的な仕様は違っていない。
ではどこが違うのかというと、スロットル操作のレスポンスが、電子制御でエンジン回転域によって異なるという、言葉ではわかりにくいかも知れないが、乗れば誰でもわかる明確な違いなのだ。
INTは2,000~4,000rpmあたりのレスポンスが活気を帯びていて、街中の交通をついリードしたくなる俊足ぶりを楽しみたくなるに違いない。ひとたびスロットルを捻ると、グワッとこの低中速域で素早く盛り上がるような加速を感じさせるからだ。
対してGTはというと、同じ2,000~4,000rpmあたりはフィーリングでいうと、真っ直ぐ直線的な加速で、INTに比較すると盛り上がるトルクという感じは少ない。ただ4,000rpmを越え5,000~6,000rpmと回転が高くなるとグーンとパワーが高まっていく加速感が味わえる。
となると、GTのほうが速い、と思いがちだが、それは走るシチュエーションによる。街中とかワインディングでも、低い回転域でスロットルを大きめに開けて後輪でグイグイトラクションの醍醐味をお尻に感じるのが大好きなライダーには、間違いなくINTのほうがオススメだ。
GTはどの領域でもバランスの良い乗り方で、スマートに駆け抜けたいライダー向けでといえるかも知れない。
ただGTにしても3,000rpmも回っていれば、曲がりはじめるときシッカリ全閉にしておくと、スパッと勢いよく捻ったほうが後輪の旋回安定性と曲がれる力量が高まる走りが得られる。
それは270°という不等間隔爆発による、後輪が回転するとき路面を刻むように蹴る特性からきているメリットで、そうっと滑らかにスロットルを捻っていると、せっかくの特性が発揮されにくいということも知っておくべきだろう。
INT 650
コンチネンタル GT 650
英国流テクノロジーの使い分けは半世紀以上も前の黄金期から
見た目の違いだけでなく、実際の走りも伝統的なブリティッシュツインで流派があった、アップライトスポーツとカフェレーサー風との違いを反映しているあたり、さすがジョンブル・バイクと言わざるを得ない。トライアンフ、BSA、ノートン、マッチレス……知る人ぞ知る、ドイツやイタリアのスポーツバイクとは一線を画した、しかし英国勢同士でもキャラクターが明確に違う、そんな'50~'60年代の黄金時代を彷彿とさせるバイクの登場なのだ。
とはいえ、設計は英国でもロイヤルエンフィールドはインドの工場で量産されている。
インドはいまヨーロッパ・ブランドにとって、スポーツバイクのパーツ生産や、コンプリートマシンも組み立てている拠点になりつつある。
しかもロイヤルエンフィールドは、ハーレーよりも生産台数の多いメーカー。クオリティでも心配の必要はない。
まずはご試乗あれ、もちろんINT650とコンチネンタル GT650の両方を乗り比べないと、ロイヤルエンフィールドの魅力は語れない。
SPEC
- 最大トルク
- 52Nm/5,250rpm
- 変速機
- 6速
- ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ240mm
- タイヤサイズ
- F=100/90-18 R=130/70-18
- シート高
- 804(793)mm
- 燃料タンク容量
- 13.7(12.5)L
- 価格
- 77万6,000円~(79万5,000円~)