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このバイクに注目
Royal Enfield
CONTINENTAL GT650

【ロイヤルエンフィールド コンチネンタル GT650 Vol.2】スタイルのみならず、そのハンドリングも伝統的であり正統派

Photos:
長谷川 徹

INT650」から派生したカフェレーサーが「コンチネンタルGT650」だ。両モデルの主な違いはライディングポジションだが、実はエンジンの出力特性も差別化。そのシルエットに見合う、スポーティな味つけが施されていた。

コンチネンタルGT650(以下、GT650)の車重は、198kgだ。この数値は兄弟モデルのINT650に対して4kg軽く、カフェレーサーらしいシャープな振る舞いを予感させる。

車体を引き起こしたり、取り回したりする時の手応えこそ、INT650より重く感じるが、それは致し方ない。なぜなら、ハンドル位置が低く、幅も狭くなっているため、入力初期はある程度の力を要するからだ。ごく単純なテコの原理である。

とはいえ、一度車体を直立させてしまえば、扱いは容易だ。793mmのシート高は足着き性に優れ、ステップが後退しているおかげで足をまっすぐ地面に降ろしてもステップバーやペダルがふくらはぎに干渉しない。

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カラーバリエーションは全5種類。スタンダードがブラックマジック/ベンチュリブルー(今回の撮影車両)、カスタムがアイスクイーン/ドクターメイヘム、スペシャルがミスタークリーンというラインナップだ

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マフラーは左右2本出し。後端を跳ね上げることによって充分なバンク角が確保されている。リヤショックはガス加圧式のリザーバータンクと6段階のプリロード調整を装備。トラベル量は88mmだ。クラシカルなパターンを持つタイヤはピレリのファントムスポーツコンプ

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メーターは右にタコメーター、左にスピードメーターを備えるシンプルな指針式。液晶ディスプレイ部分には、ガソリン残量、オドメーター、トリップメーター(A/B)が表示される

クラシカルな外観を持つものの、燃料供給はもちろんインジェクションで行われており、電装系も完全に現代のもので構成されている。それゆえ、エンジンはセルスターターを押すだけで始動。わずかに身震いした後、すぐにアイドリングは安定する。

INT650の試乗でも触れたが、このモデルの心地よさはギヤをニュートラルから1速に入れた時から始まる。適切なストローク量とほどよい踏力でカツンとミッションがリンケージ。そのさじ加減がこれ以上でも以下でもない絶妙なところに設定され、ギヤボックスの頑強さと組付け精度の高さを伝えてくる。

発進時のクラッチミートに気遣いは要せず、トルクも648ccという排気量以上に感じられる。ストップ&ゴーを繰り返す場面でもスムーズさと力強さがバランスし、街中でもストレスはない。本国サイトには「2,500rpmで最大トルクの80%を発揮」と記してある通り、誰もがそのフレキシビリティを体感することができる。

INT650の試乗記では「右手を動かさなくても、クラッチレバーを離すだけでタイヤは軽々と転がり始め、その後は3,000rpmを目安にシフトアップしていけばいい。数秒もしてバックミラーに目を移すと、交通の流れを余裕でリードしていることに気づくはずだ」と書いた。GT650でもそれは同様なのだが、直接比較すると出力特性が異なっていた。

というのも、GT650で同じようにシフトアップしていってもスピードの上昇はやや控えめで、トルクの盛り上がりもフラットに感じられる。INT650の加速感を得ようとすれば、500~1,000rpmほどプラスする必要があったのだ。

反面、GT650のエンジンは5,000rpmあたりで快活になり、よりダイレクトなレスポンスを披露する。両モデルの間には、劇的ではないが明確な違いがあり、ごく簡単に言えば低中回転重視のINT650に対して、GT650は中高回転重視のキャラクターになっていた。

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ギヤボックスはロイヤルエンフィールド初の6段を採用。ギヤが切り換わる時のタッチは滑らかで、スリッパークラッチの装備も手伝ってシフトダウンは極めてスムーズだ。充分な容量を持つコアガード付のオイルクーラーを装備

実感できるトラクション

カタログスペック上は、最高出力も最大トルクも、その発生回転数もまったくの同一である。にもかかわらず、その特性をマッピングによって変化させ、INT650にはアップハンドルらしい鷹揚さを、GT650にはクリップオンハンドルならではの機敏さを与えて強調している。実にきめ細やかな作り込みに感心させられることになった。

足周りは前後18インチのアルミリムとナローなバイアスタイヤを組み合わせ、穏やかに旋回していく。引き起こしで感じた入力時の手応えは動的な状態でも同様だ。倒し込むきっかけを作る時だけはクッと力を入れる必要がある一方、傾き始めると軽やかにリーンし、クリップオンハンドルとバックステップが高い一体感に貢献。バンク角とスピードと遠心力がバランスするコーナリング時間が長く続き、いかにもバイクを操っているという醍醐味を堪能することができるはずだ。

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バイブレのピンスライド式2ピストンキャリパーと、ブレンボのφ320mmシングルディスクを組み合わせたフロントブレーキ。ABSはボッシュのシステムで制御されている。アルミリムは前後とも18インチを採用する

コーナリング中の自由度は高く、リヤタイヤのエッジ部分を使っているのか、それともセンターに近い部分を使っているのかが分かりやすい。車体の隅々まで乗り手のセンサーが行き届いている感覚が強く、動きのすべてが予測の範囲内にある。

スーパースポーツならジワジワと探りながらスロットルを開けるような場面でも、GT650なら寛容だ。スパッと大きく右手を捻ることを受け入れ、その時に発生するトラクションによって、旋回力がさらに増大。ハンドリングの要は、開けやすいエンジン特性とリヤタイヤにあることを教えてくれる正統派だ。

INT650か、GT650か

厳しさを増す環境基準をクリアしようとすれば、出力の低下は免れない。それを補うため、昨今のモデルは排気量を引き上げていく傾向にあるが、ロイヤルエンフィールドは空冷のまま、648ccというほどよさを堅持しているところが好印象だ。電子制御に頼らなくともピュアにスポーツライディングを楽しめる、ちょうどいいところにすべてが収まっている。

さて、ではINT650とGT650で悩んだ場合はどうすればいいのか?

見た目の印象通りの答えになってしまうが、日常的に使うならINT650の低速トルクが光り、エンジンのみならず、デザインにもスポーツ性を求めるならGT650に軍配が上がる。

もっとも、こうした違いは同じ環境で乗り比べるから分かることであって、どちらのモデルも万能性を有していることに変わりはない。見た目の印象で選んでも失敗はないはずだ。79万5,000円~83万9,000円という魅力的な価格設定も含め、現代のハイスペックマシンが失ったものがGT650にはある。

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SPEC

Specifications
Royal Enfield Continental GT650 (INT650)
エンジン
空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒
総排気量
648cc
ボア×ストローク
78×67.8mm
圧縮比
9.5対1
最高出力
47bhp/7,150rpm
最大トルク
52Nm/5,250rpm
変速機
6速
車両重量
198(202)kg
サスペンション
F=テレスコピックφ41mm正立
R=スイングアーム+2本ショック
ブレーキ
F=φ320mmダブル R=φ240mm
タイヤサイズ
F=100/90-18 R=130/70-18
全長/全幅/全高
2,122/744(789)/1,024(1,165)mm
軸間距離
1,398mm
シート高
793(804)mm
燃料タンク容量
12.5(13.7)L
価格
79万5,000円~(77万6,000円~)
協力/ ロイヤルエンフィールド東京ショールーム

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