ツーリングで後ろから見てくれていた先輩から、身体が硬直してバイクごと上下に跳ねていると言われました。どんな弊害があって、どうすればリラックスできるのでしょうか?
A. 力むとタイヤの路面追従性が損なわれ、グリップや安定性が大きく損なわれます。徐々にでも良いので留意すべきポイントをひとつひとつ身体に覚えさせながらクリアしていきましょう!
たとえば段差乗り越えで、身体の硬直と柔軟なときを比べてみれば
段差を乗り越えるとき、上半身から下半身まで全体に力んでいると、ご覧のように路面からの突き上げで車体からライダーの体重が抜けたり加わったりします。この状態だとタイヤの路面との面圧が変わってしまいます。これでは路面追従性を損ない、グリップを失いやすいのはいうまでもありません。
同じ状況で上半身や下半身からチカラが抜け柔軟に対応できていると、ご覧のように車体に加わるライダーの体重も変化しにくくなります。タイヤの路面との面圧も変化が少なく、グリップも安定性も損なわれる状況に陥りません。もちろんコーナリングでも起きていることは同じなので、旋回中の安全性を大きく左右します。
よく身体からチカラを抜け、力まないように……ビギナーの頃、頻繁にアドバイスされたと思います。
不慣れからくる緊張で、つい身体に力が入ってしまうので、まずは心と身体をほぐしましょう、ということなのですが、実は身体が硬直しているとバイクの安定性やハンドリング、ひいてはタイヤのグリップも左右してしまうのです。
どんな差があるのかは、ご覧のイラストやYouTubeのRIDE LECTURE 027で確認されるとわかりやすいと思います。
ご本人は気づいていなくても、後ろから見ていると上半身がピョコンピョコンと上に跳ねたり、お尻がシート座面からピョンピョンと一瞬浮いているのがわかります。
身体からチカラを抜くというのは、安全性上も大事なことだったのです。
路面には無数の凸凹や段差が続いている
どんなに平滑にみえる路面でも、実は小さな凸凹や段差の連続で、そこをある程度以上の速度で通過すればタイヤはとてつもない頻度で上下に激しく動いています。
コーナリングでも同じことで、ライダーが柔軟に操作をしているか否かで路面追従性、つまりはグリップできる条件が大きく左右されているのです。
上半身、とくに背筋のある背中で大きな振動はクッションして吸収し、下半身もリラックスして大事な体重が車体を通じてタイヤへ効率良く押し付けられるようキープすることで、状況は大きく改善されます。
大きく荒れた路面に遭遇したときなど、安定性を左右する鍵も握っているので、緊張する場面ほどバイクはライダーにリラックスして欲しいのです。
5つのリラックスさせるポイントを覚えよう!
とはいえリラックスした状態を、身体全体でキープするのはカンタンではありません。
コツはイラストにマーキングした5箇所のポイントを常にチェックすることです。
しかし乗車姿勢でやりがちなのが、時間が経つにつれ疲れからダラリと下半身からチカラが抜けたフォーム。
これはリラックスした姿勢で悪くないように思えそうですが、実はまったく逆で太もものつけ根や両肩から首まわりに脊椎と骨盤の継ぎ目あたりへ負荷が集中してしまいます。
実はコレ、長時間のライディングで身体の各部で痛みを感じる元凶なのです。
つまり適度に各部位で緊張した姿勢づくりを維持したほうが、路面からの衝撃やバイクの加減速による揺さぶりをうまく吸収できるのと、操作と感性を結ぶ神経が繋がった状態となり集中力も落ちないということも考慮しておきましょう。
とくに下半身のつま先を真っ直ぐ前に向けることや、膝がダラッと開いてしまわないよう腰をちょっとだけ引いて膝を閉じた状態にしておくのはかなり大事です。
痛みに気づいてから対応しても「時既に遅し」です。
何れにせよ、走り出しからてすぐこの5箇所を常に意識することで、バイクの安定性を損なわず、ハンドリングの良い扱いやすい状態をキープできて、身体に痛みを生じない無事な時間をどんどん延ばすことができます。
一石二鳥どころか一石五鳥くらいご利益があるので、ぜひぜひ次回のツーリングから心がけてください。
- Words:
- 根本 健
- Photos:
- 藤原 らんか,Shutterstock(L.Mendizabal),iStock(Canetti)