A.タンデムを可能にしておく利便性を考慮しているのです
スーパースポーツを2人乗りしようと思って、買う人はあまりいないと思います。
タンデムステップ外せばそのぶん安く、軽く作れますよね。
なぜ、タンデムシートをつけているのでしょう?
スーパースポーツは、走りの機能を最優先したバイク。こうしたモデルを購入するライダーに、タンデムでツーリングしようとする人は皆無に近いかもしれません。
だったら潔くシートやタンデムステップを外してしまえば良い……そうおっしゃるのも分かります。
中には限定仕様でシングルシートに割り切ったモデルも存在しますが、ほとんどはタンデム可能な仕様で販売されています。ではなぜメーカーがタンデム仕様をやめないのかというと、そうはいってもちょっとした移動で短時間だろうとタンデム可能にしておく利便性を温存したほうが良いとの判断からなのです。
シングルシートでナンバープレートの登録に必要な型式認定を取得すると、その段階で1人乗り専用のバイクとなってしまい、後からユーザーがタンデム仕様へ改造したくても、さまざまな手続きが必要になります。
だったらメーカーが2人乗りで型式認定を取得しておいたほうが、ユーザーのメリットになるというワケです。
欧州ではスーパースポーツでタンデムしているライダーをよく見る
実は以前、イタリアのビモータのような少量ハンドメイドのメーカーをはじめ、機能やデザインを優先してシングルシートに徹したモデルも存在した時期がありましたが、結局はユーザーからの要望に応えてタンデム仕様を追加することになった経緯もあります。
長距離長時間のツーリングには向かないとはいうものの、たまにはタンデムもできないと……複数台を所有できないユーザーが多数派なこともあって、現在ではタンデム可能にしておいたほうが良いということになっています。
確かに1人乗り専用であれば、タンデムステップもその取付けステーも不要になって、見た目もスッキリしますしコストもかかりません。それにサスペンションも2人乗りしたときの荷重を前提にした、普段は必要ない高荷重設定のスプリングやダンパーも不要になります。
コーナリングなど、走りの機能を考えればそのほうがより乗りやすくセッティングもしやすい足周りにもできます。
それでもガールフレンドを乗せてレース観戦に出かけたり、ご夫婦で郊外のカフェまでタンデムしたり、ヨーロッパやアメリカでは女性を伴って楽しみを共有するカップルが多いのも事実。
ストイックなエンスージャストが多い我が国とは、そもそものカルチャーが違っています。ボクもスーパースポーツには女性を誘う気になれないひとりです。
スーパースポーツのタンデムシートはあくまでも非常用⁉︎
しかしスーパースポーツは、ツーリング用のバイクのように、タンデムだけではなく荷物を積んだときも考慮した設定にまで対応していないのが一般的です。体重の重い人が後ろに乗ると、路面の段差でフルストロークしてしまうこともある設定ですし、バンプラバーという底づきの衝撃を吸収する機能で危険な状態に陥ることはまずありませんが、タンデムでも乗りやすい状態にあるとはいえません。
つまり基本は1人乗りを前提にした設定だと思ったほうが良いでしょう。メーカーの設定体重もツアラーよりも軽く想定していたりします。
それに前傾姿勢のバイクでタンデムすると、相対的に前輪側の荷重が少なく、カーブで前輪がセルフステアする特性も鈍くなり、リーンした瞬間の曲がり方も強くありません。
というように、最新のスーパースポーツはタンデム可能であっても、あくまでもそれはおまけの部分。コーナリングパフォーマンスを1人で堪能する面を犠牲にするまでには妥協していないと言えます。
短時間の移動など利便性が考慮された
スーパースポーツのタンデムシートは、長距離ツーリングはともかく、短時間の移動などでの利便性が考慮されたもの。それでもヨーロッパでは、後ろに奥さんを乗せてワインディングを走る……という使い方も多い
タンデムシートがあっても基本はひとりで楽しむもの
スポーツライディングを前提としたスーパースポーツモデルは、タンデムシートが装着されているものの、それは決して快適性を考慮したものではない……