スズキ独自の油冷はオイルを燃焼室の外壁へジェット噴射する冷却方式!

スズキは2001年、油冷エンジンでは最大の排気量となるビッグネイキッドのGSX1400を発売。
1990年代からはじまった1,000cc~1,100ccのビッグネイキッドブームに、スズキはBANDIT1200で対抗していたが、ホンダCBとヤマハXJRが1,300ccへと排気量アップ。
スズキも新たに大幅な見直しで油冷エンジンを開発して対抗したのだ。


4気筒エンジンはいうまでもなく1985年のGSX-R750から培ってきた「油冷」を選択。
燃焼室の外壁にオイルを専用ポンプで高圧噴射、熱源の境界層を冷却する独自のテクノロジーをさらに完成度を高め大幅な刷新を込めた新開発だった。
それは従来のエンジンとベースは共有しながら、排気ガス規制に対応して燃料噴射化とバルブを直押しに変更、さらに1軸2次振動バランサーを駆動するなど、クランクシャフトからシリンダーまで、完全新設計といえる本格的なモノ。



エンジンの排気量はボア81mm×ストローク68mmと1,402ccまで拡大。
最大出力が74kW(100ps)/6,500rpm(輸出用は105ps/6,800rpm)、126Nm(12.8kgm)/5,000rpmと、とてつもない強大トルクのエンジンだ。
そのためスロットルを捻った途端、常に前輪がリフトする凶暴な特性となってしまい、電子制御のフューエルインジェクションには、スロットルがライダーがダイレクトに開閉するバタフライと、もうひとつ吸気の負圧を感知して補助的な開閉をするバタフライを持ったSDTVという最新装備を奢り、頂点ネイキッドらしいスムーズで自然なレスポンスに調教されていた。
因みに車重は乾燥で228kgと、リッターオーバーでは油冷ならではの最軽量に収まる。


フロントフォークにカートリッジタイプのダンパーを内蔵したり、フロントブレーキに6ポッドのキャリパーを備えるなど、他のライバル・ビッグネイキッドとは次元を異にするスポーツ性を狙った足回りで、異例といわれた軽快なハンドリングは腕に覚えのあるライダーから好評を得ていた。
そのターゲットに含まれていた、ヨーロッパやアメリカにも翌年から輸出されたのだ。

そうした海外向けでは、カラーリングもイヤーモデルでバリエーションが変わり、日本国内向けにはなかったブルーやホワイト単色のモデルもラインナップ。
また特別仕様として2005年に黒一色を纏ったGSX1400Zが登場、2本に振り分けていたマフラーを4-2-1と右側へ集合した見た目にも長く延びた1本マフラーとした。
ただこのZ仕様の1本マフラーは、他の車体色のモデルでも採用され、最終モデルの2009年までこの仕様が継続している。

とはいえ「油冷」も23年が経ち、迎える2008年の新しい規制をクリアして延命するか否かを問われるタイミングがやってきた。
空冷のひとつではあるが、単に潤滑オイルを大型オイルクーラーで冷却高価を高めるのではなく、航空機や一部のレース用4輪エンジンでしか例のなかった高圧でオイルをジェット噴射する「油冷」が、一般で使われるエンジンで採用されたのは稀なこと。
水冷化せずとも高性能で軽量コンパクトなエンジンとできるメリットが、まだまだ活かせるのをGSX1400は立証してみせていた。

しかし、これほどまで高度なメカニズムをファンが理解して選択しているかといえば、残念ながら「油冷」が購入理由になるほど知られていなかったのも事実。
潤滑オイルを高圧でジェット噴射して、燃焼室外壁の高温な境界層を吹き飛ばす、スズキ独自の「油冷」は、残念ながら2009年の生産をもってその幕を閉じることになった。



