世間で期待されていたZ1復刻ではなくオートバイらしさを新しく独自のカタチで!

1989年、カワサキのZEPHYR(ゼファー)は瞬く間に400ccクラスの販売トップを奪うネイキッドブームの旋風を巻き起こした。
ギリシャ神話のZephyros(ゼフィロス)西風の神に由来したZEPHYRと、排気量を記さない車名もあって、幅広いファン層を一気に獲得していた。
エンジンはGPz400Fの2バルブを流用、出力も46ps/11,000rpmだったが性能など 二の次だったユーザーにとって関心事ではない。
とはいえライバルもこの牙城を崩そうと新ネイキッドを続々リリース、迎え撃つ側でも対応をはかり1996年、新たにZEPHYRχ(ギリシャ文字で改の意味を込めたカイと読む)を投入した。




ZEPHYRのそもそもは1984年ごろ、カワサキ社内で海外からの要望でZ1の復刻版をつくる構想があった。
しかし開発陣は旧いバイクを目指すのではなく、新しい規準でスタンダードなバイクを考えようというコンセプトへ繋がり、このZEPHYR(ゼファー)プロジェクトがスタートしたのだ。
新しさとトラディショナルの融合という実は難しい課題に対し、エンジンの選択や直線的なフレームなど絶妙なバランスで反映した勘ドコロに、Z1から成功を収めてきた自信を感じさせていた。
エンジンは空冷GPz400Fの2バルブを流用、55.0mm×42.0mmの397ccからピークを狙わない中低速域重視にパワーダウン、54ps/11,500rpm→46ps/11,000rpmに抑えたのだ。
カムシャフトは作動角を狭め、吸排気のオーバーラップも小さく設定、排気系の圧力波を効率良く利用するため、外観がショートマフラーに見えるエンジン下にチャンバーを設ける最新モデル同様の手法。
オイルクーラーやデジタル点火など世代刷新のレベルを超えた再設計で刷新されていた。
ZEPHYRχではこれを4バルブ化、クランクシャフトからほぼ全てを刷新した結果、パワーも自主規制値の上限53ps/11,000rpmとなり、キャブレターにスロットル開度センサーを設け、走りの機敏さと低回転域のレスポンス向上を得ていた。
しかし外観的には変化をアピールすることはなく、1989年のデビュー以来メーターを砲弾型にするなど、ほぼ大きく変わることなく6年を経過、このゼファーらしさを踏襲する姿勢を貫いていたのだ。
目立ったところではシートのテールカウルがややリフトした新形状となり、性能アップに対応したマフラーが容量を増やしてやや伸びたコト、フロントブレーキのキャリパーがGPZ1100と同じ4ポッドへとグレードを高め、ハンドル形状を変更してリヤサスから減衰調整が省かれ、ホイールは5本スポークだったのが3本タイプへとデザイン変更していた。
これらは開発時にやり残していたり、6年の間に痒いトコロへ手が届かなかったほとんどを注ぎ込んだとのことだった。


とはいえリリース時には渋めの3車体色でスタートしたものの、当初からの旅バイク的なアピールに加えスポーティなイメージも訴求、1997モデルと1998モデルにはストライプを施したグラフィックも登場。




さらにZ1やZ2のレジェンドファンの期待に応え、年を追うごとに次々と懐かしいグラフィックが投入されていった。
1999年にはゼファー10周年を記念して、ファイヤーボールと呼ばれるレジェンドカラーが登場、ビッグバイクで絶対的な存在を誇っていたグラフィックの数々が巧みに配され、カワサキファンは嬉しい悩みの日々だった。
人気のイエローボールや渋めのダークとストライプ、漆黒のエボニー、さらにはブルーを採り入れたファイヤーボールだったりと、どれも人気をわける存在で大型ゼファーで展開されたほとんどを纏っていた。










そうした流行りを象徴するように、最終モデルとなった2008年型ではまさにファイヤーボールグラフィック。
かくしてカワサキ自らが名車の歴史を紐解くカタチで人気を継続してきたゼファーも、インジェクション化されることなくキャブレター仕様のまま2009年にその幕を下ろすこととなった。



