カワサキも予想しなかったZEPHYRの大ヒット!
1989年、カワサキがリリースしたZEPHYR(ゼファー)は、レーサーレプリカ熱に辟易とした空気が漂いはじめたタイミングもあって、瞬く間に400ccクラスの販売トップを奪う大当たりとなった。
ギリシャ神話のZephyros(ゼフィロス)西風の神に由来したZEPHYRと、排気量を記さない車名もあって、広いファン層を一気に抱えることになった。
エンジンはGPz400Fの2バルブを流用、出力も46ps/11,000rpmといかにも肩ひじ張らないイメージ。
他でもカウルを纏わない新しいチャレンジも出はじめていたが、どれもレプリカに負けない、コーナーで追いかけ回すコンセプト。
ZEPHYRのいわば拍子抜けなスペックが、却って個性として人気に拍車をかけ、砲弾型メーターなど小変更はあったが、基本的にデビューそのままで継続生産されていた。
Z1、Z2懐古でないゼファーという新カテゴリーの進化が「χ」
そのZEPHYRが1996年にχ(カイ)というギリシャ文字を加え新型となった。
人気車種として大量生産されたこともあり、エンジンを4バルブ化やクランクシャフトからほぼ全てを刷新、その結果パワーが53ps/11,000rpmとなり、走りに機敏さと低回転域のレスポンスが向上していた。
またサスペンションも改良されハンドル形状も異なるなど、ルックスこそイメージをそのまま踏襲しているが、大幅な刷新が施されていたのだ。
2バルブでパワーにこだわらない資質が好評だったのに……そんな疑念を抱くファンもいたが、そもそもZEPHYRは神話的存在のZ1やZ2懐古ではないコンセプトで誕生したバイク。
肩ひじ張らなくとも、バイク好きの感性にフィットするよう、たとえばマフラーは4本ではなく集合としているなど、新しいスタイルの模索をしていた。
そしてこのZEPHYR人気に最もあやかれたのは当のカワサキ。
ZEPHYR750にZEPHYR1100と、ビッグネイキッドでヒット作をリリースする流れに繋がっていた。
750/1100ゼファーと共有したお約束グラフィック!
そうしたZEPHYRとχのコンセプトからいうと、Z1やZ2をイメージさせるカラーリングは相応しくないのかも知れない。
しかしファン心理としては、スタイリッシュで潔いダークな1色では飽き足らなくなるというもの。
とりわけ後から加わったZEPHYR750/1100では、Z1とZ2のグラフィックや、歴代のZシリーズで人気だった、大人びた渋めの色味にストライプの定番グラフィックが採り入れられていた。
その影響をモロにうけ、ZEPHYRχでも同様の火の玉やイエローボールも取り揃えられることになっていったのだ。
かくして2009年モデルまで、多くのライバルメーカーに影響を与えた、過去には例のない質の、ZEPHYRブームが続いたのだった。