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Q.いつものコーナーの安心と満足感を卒業するには?【教えてネモケン149】

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スポーツバイクはバンクして曲がる感覚が楽しくて、慣れ親しんだワインディングへ出かけて好きなコーナーをそこそこバンクして駆け抜けるのを楽しんできました。慣れた道はコーナーの先がわかっているので満足感を味わえる速度とバンク角が可能ですが、ツーリングで知らない道だとマージンあり過ぎてストレスに感じます。でも知らない道を楽しめないライディングも何とかしないと、将来バイクを楽しめない気もします。この状態を卒業するにはどうしたら良いでしょう?

A.慣れたコーナーには先が見えている安心感で、そこそこアベレージ高くコーナリングできる満足感を楽しめます。でも慣れているからこそ潜んでいるリスクも考えましょう。知らない道のほうが楽しいといえる走り方こそ、バイクを操る実力といえるからです。

慣れたコーナーは徐々にアベレージが高まり、いつの間にか攻めてる状態になりがち。

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スポーツバイクは車体を傾けてコーナリングします。
このバンクして旋回する醍醐味こそ、ライディングする歓び……ガンガン攻めるライダーから、まだおっかなびっくりのライダーまで、そんな思いのライダーは少なくありません。

そうしたライダーたちにとって、お気に入りの峠道にあるワインディングで、そこそこのアベレージで駆け抜けられるコーナーがあったりします。
カーブの曲率や出口までどうなっているかを知っていれば、それほど警戒せずにバンクできるので、その満足感を味わいに通ったりするライダーもいます。

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もちろん一般公道は対向車がいきなりセンターラインを割ってきたり、路面状況も常に同じとはかぎりません。
安全マージンをとって、他の交通に脅威とならない気遣いが必須ですが、慣れてくると安心感からご自分では気づかないうちに危険領域で走っていたりします。

それとバイクの醍醐味をこの限られた環境でばかり味わっていると、ツーリングなどで初めての道の知らないコーナーでは満足できず、ストレスを溜めるので楽しくない……そんな状況に陥り、ご質問された方のように将来に楽しみを見出せるのか?などの疑問符も生じてくるでしょう。

バイクは状況対応できるスキルが真の実力、そこが楽しめるレベルを目指そう!

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ボクが世界GP転戦していた1970年代後半は、まだ全体で半分が一般公道を閉鎖して競う、マン島T.T.のようなレースが残っていました。
転倒すればサーキットのような滑りながら緩衝してくれるグラベルもありません。激突あるのみです。

サーキットしかレース経験ないので、正直ビビりっぱなし。
メーカーライダーではない初の日本人ライダーということで、ジャコモ・アゴスティーニをはじめチャンピオンライダーたちが、おそらく興味本位で気にしてくれて、悲惨な状態に声をかけてきたのです。

鈴鹿のラップタイムとか聞かれたので答えると、オッ悪くないネ、全日本チャンピオン獲れたんだもの当然か~、そのタイムで第3コーナーでライン1メートル外したらどうなる?と問われたので、心臓が喉から飛び出そうになると告げたら、ソッコウ「日本へ帰りなさい、ヨーロッパは毎レースが初めてのコース、数多くラップして慣れながらタイムを詰めていくレベルは通用しない」とピシャリ。

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いやココまで頑張ったのでチャレンジは続けたい、そう返したら傍らにいたスウェーデンのチャンピオンのケント・アンダーソンが来週オランダでインターナショナル・レースがあるので、今から言うことを絶対に守るならエントリー手配するよ、ということに。
その条件とは9,000rpm以上回さないこと。TZ250で9,000rpm以下はパワーバンドから外れてしまい、勝負になるはずもない。とはいえ、ココまで言われたのなら服従するっきゃない、そう覚悟を決めてツァントフールトという海岸にあるコースへ行きました。

もちろん初めてのコース。平坦なので9,000rpm以上回せばすぐバレるので、仕方なく言われるままに走ると、当然の抜かれっぱなし。
どうだ?と聞かれたので、コースの印象や他の有名ライダーの走りに感心したことなどを話すと、ケントさん曰く「余裕があると短時間でもそれだけ情報をとれる、トップライダーが見せる曲がれるチャンスを活かすメリハリ、複合コーナーのアプローチまでほぼ掴んでる、それにタイムも10秒も離れていない……先週は瞳孔が開きっぱなしで、まばたきもできないほど緊張して目いっぱいだった筈、モーターサイクルはアグレッシブさより様々状況対応できる心とワザで勝負する、というかそれを楽しめなきゃ成長できない」と、ひとつひとつ納得できる諭され方。

自分を追い詰めたり、リスクに踏み込まず、楽しいと思える範囲で状況判断に集中する……次のスウェーデンGPからこの原則を守って先輩達から走りも盗み、次のシーズンには3ラップもすればプラクティスのベストラップの80~90%で走れるようになれました。
早いハナシが、やみくもに頑張っちゃうのはダメなんですね……。

バンク角を深くしないアプローチで向き変えで繋ぐメソッドを身につける!

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本題に戻りましょう。
もちろん皆さんはレースなどするためのノウハウなど必要ないでしょうが、ご質問の方やまだ不慣れだけどそこそこのアベレージでコーナーを駆け抜けたいキャリアの方には、リスクを避けて走るという意味のヒントになると思います。

ワインディングで車体を傾ける醍醐味はわかるのですが、そちらのスリリングさから、たとえばバンク角を深くしないで、バイクが方向を変えられる一瞬のチャンスである直立からリーンする最初の10~20°の操作など、使えるワザの組み合わせで如何なる状況にも先手で対応できるセンスを身につける……漠然としていますが、要素はそんなに多くないので慌てず落ち着いて対応するリズムを覚えれば、知らないワインディングでもそれがブラインドでも、余裕たっぷりに駆け抜けていけるワザを習得できます。

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詳しくはピックアップのジャンルにある、RIDE Knowledge(ライドナレッジ)で多方面から解説しているので、お時間のあるときにでもご覧頂きたいのですが、取り敢えず初めてのワインディングでブラインドコーナーを、攻めるのではなくリスクを避けバイクを的確に操作する基本に触れておきましょう。

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バイクは直立からリーンする初期段階に、俗に向き変えといわれる「くの字」に進路が変わる領域があります。
これは車体が傾いた状態から、ブレーキを軽くかけると直立しようと反力を伴うのを利用すると、スイッチにように曲がりはじめるタイミングをつくれます。
広い交通のない場所で、イラストにある説明に従って反力を感じたらブレーキをリリースして、元の傾いた状態へ戻る動きを予め態勢を整えて逆利用するという手順に慣れましょう。

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ブレーキのリリースで曲がりはじめる「向き変え」ができるようになると、ブラインドコーナーへの進入で曲がりはじめる箇所をカーブのはじまる入り口ではなく、ちょっと入ったポイントまで進入して「くの字」をつくる組み立てにします。
少しセンターライン寄りに斜めカットすると、より奥のほうで「向き変え」できるのでマージンたっぷりになりますが、もちろん対向車が見えないきついカーブではセンターラインに寄り過ぎたり、すぐ回避できる心づもりも忘れずにいましょう。

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そして右に左にと次々現れるカーブに対し、正面に見える入り口のアウト側の道路の縁が曲がっている角度で、およその想定をする訓練をします。
何となく見つめてしまわず、120°とかヘアピンなど判断したカーブの様子を声に出して言い聞かせます。
最初は違ってしまうこともあると思いますが、何度も重ねているうちに徐々に推測することに慣れ、そこへの身構え気構えができるようになっていきます。

何とも漠然として正確さに欠くなどと思わず、概略でも様子を予め掴もうとすることが大事なのはわかってくるはず。
複合コーナーで「向き変え」を何度も挟んでクリアしていく手順では、早く状況を掴んで次の行動へ切り替える操作がすべてを決めてしまうのが理解できてきます。

誤解のないよう繰り返しておきますが、そこまで詰めて乗らなければいけない、などと言うつもりはありません。
ただスポーツバイク好きだと、徐々にペースアップしてしまう流れは避けられず、その結果いきなりリスクに直面して慌てたりアクシデントに見舞われないために、経験を意識して積み上げるよう心がけておくのをお奨めします。

Photos:
Shutterstock,藤原 らんか