ビンテージバイク大人気で当時のタイヤサイズに新型登場
’70~’80年代のビンテージ人気は熱くなるいっぽう。日本製の初代ビッグバイクたちにとって、最大マーケットはいうまでもなくアメリカだ。
何せアメリカは広大、メーカー直系のディーラーではそこそこ規模のある街ですら、とてもカバーしきれず……当時そんな状況で全米中で暗躍していたのが仲買いのバイヤーたち。
生産が追いつかなくなった場合の品不足を補ったり、厄介だがメーカーにとって必要でもある存在の彼らに、何と正規流通ルート以外から相当数がデリバリーされ、それらが過剰在庫となり未だ新車の状態で保存されることとなった。
おまけに西海岸のように、乾燥して保存にも良い条件とあって、当時の5倍を遙かに上回る値段で取引されているというワケだ。
この当時の新車と変わらないコンディションが手に入るという奇跡の恩恵に授かれるオーナーはラッキーというほかないが、どんなに新車同様といっても残念ながらタイヤだけは確実に経年変化してしまう。
しかしヨーロッパのタイヤメーカーには、この40年以上も前のタイヤを生産し続けているケースが珍しくなく、とりあえず新品が手に入るので問題なく走れるのだが、ここまで需要が多いと各タイヤメーカーのエンジニアは黙っていられなくなるようで、このところ40年以上も前のナロウサイズに、新型タイヤを開発して供給するという現象が起きているのだ。
最新素材で刷新され、とりわけウエットグリップが著しく向上
この最新素材で刷新されたナロウサイズ・タイヤの性能アップが半端ない。
とりわけこの5年ほどで、頂点のハイグリップタイヤの性能向上を上回る勢いで進化したのがツーリングスポーツのカテゴリー。路面に接するトレッドのコンパウンド(ゴム質)が、低温でも柔軟性があって路面追従性を確保するだけでなく、凹む側には柔軟でも戻る側、つまりバネの反発力にような特性はクイックという、シリカを採り入れることでデリケートだがグリップ性能としては頼り甲斐が圧倒的な差となる進化を果たしているのだ。
おまけに内部構造のカーカスに使われる繊維も、最新パフォーマンスに見合った強靭且つ柔軟で、ダンピング性能まで持ち併せているという、かつてないほど大きく進化した素材が、このナロウサイズをフォローする箇所で使われていたりもする。いわば2輪タイヤの大きな変革期と重なっていて、路面を掴む実力は間違いなく大きな進歩を遂げている。
これからのシーズン、ぜひ新世代ナロウサイズで安全に楽しく!
まだタイヤの溝(グルーブ)もたっぷり残っている。とくに飛ばすワケでもなくリーンだって深くバンクしないし、わざわざ新品に交換しなくてもと思われるかも知れない。しかし、スポーティに走るかどうかではなく、乗り味として路面の段差などのグリップ感を残しつつ減衰性能でライダーを疲れさせない感触のよさはぜひ味わっておくべきだ。
来年、さすがに溝も減ったからと交換した折りに、これほど安心で醍醐味も楽しめる違いがあるとは……1年を返して欲しいと言いたくなる、とならないよう、ぜひこの春に交換されるようお奨めしたい!