A.走らずとも劣化して滑るので、2~3年毎に交換が安心です
年間で数千kmしか走らないので、タイヤの溝は残っています。
でも数えたら4年が経っていて、表面を手で触ると柔らかい感触がありません。変えたほうがよいのでしょうか?
タイヤのゴムはスポンジのような状態でオゾンが浸入しやすく、時間と共に弾力や柔軟性が劣化します
タイヤは溝が減ると滑りやすくなり交換する必要がある、というのが一般に知られている交換の条件だと思います。
しかしスポーツバイクは趣味の道具でもあり、機種や使い方で乗る頻度が低ければ走行距離が増えなくても、時間が経つとゴム質が劣化して滑りやすくなるため、安全を考えて一定期間以上が過ぎたら交換するのがお薦めです。
ではなぜ走行距離が短いのに時間が経過すると滑りやすくなるのでしょうか?
ご存じかも知れませんが、タイヤは工業用ゴムという石油系のケミカル製品です。
これにシリカなどケミカル素材やわずかですが天然ゴムを混ぜてつくるのですが、この混ぜ方が蕎麦を打つのと同じに圧延ローラーで何度も潰して延ばすを繰り返します。
誤解されやすいのが、液体に近い流動性のある状態からいわゆる型に流し込んで成形すると思いがちですが、一度も溶けた状態にはならないのです。
そうやって練ってから裏にタイヤのパターンを刻んだ高熱の釜に入れ、中からブラダーと呼ばれるエアバッグのような袋でタイヤを釜へ高圧で押しつけ、含まれている硫黄分やカーボンが分子の結びつきを高める時間を管理して、グリップ性能の基本となる弾力や柔軟性などが調整されて完成します。
乗らなくても大気中のオゾンで経年変化します
加硫といわれる高熱の釜から出されたタイヤのゴムは内部がスポンジのように密度が粗く、ホイールに装着した状態で置かれているだけで、大気中のオゾンが浸入すると分子構造が変わってしまう、いわゆる「生モノ」なのです。
このためチューブレスタイヤは、内側に空気が漏れないようインナーライナーというフィルムが貼られていて、タイヤの空気圧を保つようにできています。
つまり走らなくても、タイヤは装着してあるだけで経年変化するのです。柔軟性が劣化すれば、どんなに溝があろうとグリップ性能は落ちてしまいます。
これを防ぐには、たとえばアルミホイールを隙間なく巻き付けて、外部から光が入らない冷暗所で保管するしかありません。真冬に乗らなければそれも可能でしょうが、日常的にそこまで厳重な扱いはできないと思います。
タイヤメーカーも、摩耗してスリップサインが見えたら、もしくは3年を越えたら性能が劣化する可能性があると交換を奨めていますが、高性能なバイクでハイグリップなタイヤを装着しているなら、コストはかかりますが2シーズンを上限に交換するほうが安心できます。
タイヤの溝は残りが1.6mm以下になると、スリップサインというかさ上げをした部分が路面と接して交換時期がきたことを知らせる。しかしこの状態は相当に柔軟性を欠いているので、こうなる前に交換するのが安全上も好ましい