21世紀へ向けた商品開発運動「東京クリエイティブ」に応えてデザインを手がける!

1989年の東京モーターショーに、スズキは21世紀へ向けた商品開発運動「東京クリエイティブ」に呼応して、Water Designの坂井直樹氏(ニッサンのBe-1やPAOなどもデザイン)とタッグを組んだデザインスタディでレトロ調バイクを出展。
猪突猛進してきた1970年代から1980年代への反動で「緩さ」に心惹かれる時代性を背景に、1950年代の英国ヴィンセントやアリエルなどのカバードモーターサイクルに倣った懐古デザインで、評判になったのに気を良くして商品化へ開発がスタート、3年以上を費やし1992年に発売が開始された。

この1950年代に英国で流行ったレトロなカバードスタイルは、スポーツバイクメーカーのトライアンフでさえ、シートから下をカバーで覆い後輪が見えないモデルを加えたほど、当時はメジャーなカルチャーだった。
SW-1はそのスタイルを、さらに進化させた斬新さと丸みに優しさを讃える絶妙なバランスで、世界から注目を浴びグッドデザイン賞にも輝いている。


カバーの下には1982年からのDR250Sベースの単気筒エンジンを搭載していたが、駆動を静粛でチェーンオイルで衣服を汚さないベルトドライブとするなど専用開発され、フレームに至ってはこの外皮を支える大柄で凝ったゲージを加えたりと苦労の後が滲んでいた。
ただここまで専用開発でコストもかけた結果、688,000円と当時はひとクラス上の400ccどころか大型のナナハンが買えてしまうほど高価。
さすがに手が出ないとあって、カタログには3年ほど存在したが実質初年度で結論が出されていた。






このDR250Sベースのエンジンは、後に2004年あたりのST250にも転用され、そこでもSW-1よもう一度のバリエーションモデルや、ボーイズレーサー風カフェスタイルと、英国ルーツの異文化の薫りを漂わせていたのがスズキらしい。
センセーショナルだったKATANAをリリースしたように、スズキはマイノリティのリスクに屈しないメーカーで、相応の夢を育む素地が常に耕されているからこそ、こうしたチャレンジを可能にしていたのは間違いない。

因みに贅沢なクオリティだったのと生産量が少なかったこともあって、コンディションの良い個体はコレクターズアイテムとしてとてつもなく高価で、滅多なことではお目にかかれない。



