H.ムートのチームが熟成してきた個性だけに完成度の高さに好評だった!

スズキは日本メーカーで4ストローク化が1976年からの最後発。
しかしヨシムラとタッグを組んだレース活動など、瞬く間に肩を並べ一気に追い抜く勢いで駆け抜けていた。
そうした性能面は良いとして、同じ4気筒エンジンを搭載する立場で弱いのは、スズキとしての個性をアピールする面。
そうしたスズキ側のニーズと、ドイツでBMWのデザインを手がけてきたハンス・ムート率いるチームとの出逢いが、KATANAというプロジェクトを生んだのだ。
ムートはベンツからデザインのレンダリング依頼をうけたのをきっかけに、ドイツフォードのデザインチームに参画、英国フォードに米国フォードと国際的な状況の違いを学び、1971年にBMWの仕事を担うことに。
乗用車の5シリースや7シリーズのインテリアを手がけ、BMWを選んだ理由のひとつだったオートバイのデザインにも関わり、初のフルカウルR100RSからR80~R45まで多数を手がけ、彼らの特徴的なデザインの発端ともなったR65LSを世に出した。この間にMBBのBK117(カワサキが提携先で日本でも活躍する機種)ヘリコプターで内外装デザインもこなす多彩ぶり。
このBMWから離れ2人のデザイナーとタッグを組んだのがスズキのKATANAプロジェクトだった。



そして1980年、ドイツで開催されたケルンショーに、既存のデザイン概念を完全に突き崩す1台のプロトタイプが登場した。
それがご存じGSX1100S「KATANA」で、1981年に販売を開始。
ただこのGSX1100S に先行して、ムートのチーム(ターゲットデザイン)とスズキは後にGS650Gとなるプロトタイプを試作していた。





実はヨーロッパで600~650ccクラスに、趣味嗜好の強い個性的なバイクを好む層がいて、当初はまずこのバイクで先鞭をつける案で進行していたのだ。
それはツーリングユースへの対応も意識したコンセプトで、ヨーロッパでのリリースには専門的な解説とデザインの感性を表現するカタログから伝わるように、オトナ向けを強くアピールしていた。




このGS650G、ほぼ同時に開発されていたシャフトドライブのミドルクラス・ツーリングユーザー向けのGS650GTがベース。
ボア×ストロークが62mm×55.8mmの673cc。気筒あたり2バルブのDOHCヘッドで、65PS/9,500rpmと5.3kgm/8,000rpmのスペック。
典型的なツーリング・スタンダードでヨーロッパから北米まで広く販売されていた。
果たしてGS650Gは、そのデザイン性の強さから好みがわかれるところもあって、前評判ほどは販売が奮わず、翌年にはヨーロッパでのクルージングスピードへ対応したミニカウルが装着されたり、グラフィックも一新するなど毎年マイナーチェンジが加えられていた。
しかしデザインの先進性に対し、徐々に浸透してきた流れもあり、もう少し一般性の高いチェーンドライブのGS550をベースに、KATANAの外装を纏ったGS550Mというモデルも追加され、幅広い層に親しまれるようにもなったのだ。
そうした経緯も踏まえ、この個性的なデザインがあらためて注目されるようになり、いまでは世界各国で希少な名車として人気のバイクとなっている。



