レプリカの先陣を切る本気メーカーだけにGAGのデフォルメもさすが!
1986年、世はまさにレプリカ全盛期。2スト250cc、4スト4気筒400ccは毎年フルモデルチェンジする勢いで、まさにメーカー間で死闘が繰り広げられていた。
そんな緊張感が漂う状況に、いわばレプリカ時代をエスカレートさせた張本人でもあるスズキが、GAG(ギャグ)と命名した50ccのミニスポーツバイクをリリース。
前後10インチホイールのミニバイク的なサイズだが、何とフルカウルでフレームもツインチューブを垣間見せる、レプリカをスケールダウンしたバイクだ。
エンジンは実用車のバーディー50に搭載する4ストローク版がベース。水平近くまで前傾したSOHC単気筒2バルブで、39mm×41.8mmの49ccを5.2PS/7,000rpmと0.57kgm/6,000rpmにチューン。
ミッションを3速のオートマ遠心クラッチから、4速のマニュアルクラッチへ換装してスポーツバイクらしい心臓部としている。
全長1,540mmのコンパクトなサイズで、ホイールベースは1,080mm。シート高が610mmでポケバイほど小さくないので乗りやすい安定サイズ。車重は乾燥で64kgとこれも扱いやすい範囲に収まる。
さらにフルカウルのスポーティさを支えるフロントブレーキはディスクローターに放熱効果用に多孔加工された本格仕様。
リヤサスはモノショックで、車体はメインチューブ以外もシートレールやスイングアームも角断面と、雰囲気はまさに本格派だ。
その車体構成から燃料タンクは何と7リットルの大容量で、シートカウルに小物入れなど高い実用性も備わっていた。
そして用意された4種類の車体色は、単にカラー違いではなくそれぞれにオリジナルのグラフィックを施した異なるキャラクターで揃えられていた。
この良い意味でオトナへ向けたギャグっぷりに、高騰化の一途で手が届かない若いレプリカファンや、セカンドバイクで近所までの足に利用する中高年ライダーまで広く人気を博することとなったのだ。
こうした評価にそもそも1972年にミニトレGT50をヒットさせたヤマハが反応、2ストエンジンを搭載したYSR50で続くと、ホンダも2ストのNSR50で参入するなど、ミニバイクのレース参戦に直結する熱いカテゴリーへとエスカレートしていった
しかしスズキはあくまでGAG(ギャグ)としてのコンセプトを守り、このエスカレートには追随しなかった。
これもまたスズキらしさのひとつだろう。