「ニンジャH2SX SE+」のスーパーチャージドエンジンは、ラムエア加圧時には210psに達するハイパフォーマンスユニットだ。しかしながら、その威圧的なスペックとは裏腹に出力特性は徹底して躾られ、従順そのもの。意のままに操れるジェントルなフィーリングと、包み込まれるような乗り心地が魅力だった。
998ccのスーパーチャージドエンジンを搭載する、カワサキのフラッグシップツアラーが「ニンジャH2 SX SE+」(以下SE+)だ。KECS(カワサキエレクトロニックコントロールサスペンション)と呼ばれる電子制御サスペンションの採用、ブレンボのStylemaへ変更されたフロントブレーキキャリパー、スマートフォンとの接続機能の追加などが、STDモデル(SE)との主な違いとなる。
また、ライディングモードを切り換えることによって、トラクションコントロール、パワーモード、KECSのパラメーターが変化。それぞれの介入度や特性が最適化され、各種制御がよりきめ細やかなものになっているところが特徴だ。
ボリュームのあるフロントカウルと大型スクリーン、そしてきらびやかな外装色によって、遠目にも強い存在感を放っている。車重も262kgとそれなりのボリュームながら、820mmのシート高はその数値より低く感じられ、リヤサスペンションのプリロードを一人乗り用に設定していれば、足着き性はかかとがわずかに浮く程度(身長174cm/体重63kg)。車体を引き起こす時の手応えやクラッチレバーの操作力も特に重くはなく、極低速時の振る舞いは従順だ。
その印象はペースを上げていってもほとんど変わらない。右手の動きに連動してどこからでもトルクが湧き出し、車体姿勢と車速を自由自在にコントロールすることができる。底知れないパワーに驚かされるのはスロットルを早く、大きく捻った時に限られ、常識的な操作をしていれば、過給圧の高まりはリニアそのもの。これほどフレキシブルなエンジンはそうそうない。
ライディングモードには、SPORT/ROAD/RAINの3パターンがプリセットされる他、任意のレベルに設定できるRIDERの計4パターンがある。RAINを選択するとトラクションコンロールの介入タイミングは最も早い「3」(1/2/3/OFF)、パワーは最も低いロー(ロー/ミドル/フル)、KECSはしなやかなソフト(ソフト/ノーマル/ハード)へと自動的に切り換わるわけだが、ほとんどの走行シーンをこれ一択で済ませられるほど、充分なパフォーマンスを発揮する。パワーは約50%も低下しているとは思えないほど力強く、そして重厚なフィーリングで車速を押し上げていくのだ。
特筆すべきは、やはり電子制御サスペンションがみせる路面追従性のよさだ。それは包容力を言ってもよく、路面の凹凸を包み込むように吸収。スーパースポーツなら「ダンッ」とダイレクトに衝撃を伝えてくる場面でも、SE+のそれは「トンッ」とマイルドにいなしてくれる。ROADやSPORTにすると確かにストロークスピードは制限されるものの、それでも上質さの範囲を超えない。スロットルを閉じていれば走行中の切り換えも可能なため、その変化量を誰もが分かりやすく体感することができる。
そうやってサスペンションセッティングの入り口に立ち、さらなる楽しみを追求したくなればRIDERがそれに応えてくれる。なぜなら、このモードを選択すれば、伸び側と圧側の減衰力が10段階の幅で微調整できるようになるなど、いい意味で深みにハマれるからだ。
ハンドリングは、サスペンションの状態にかかわらず、常に一定の弱アンダー傾向を示す。スピード域やバンク角によって旋回力が大きく低下したり、切れ込んだりといった変化はなく、コーナーではバイクに身体を預けておけばなんの問題も起こらない。1,480mmのホイールベースは長い部類に属するものの、ヘアピンや交差点でもそれを意識することはない。
とはいえ、やはり真骨頂が高速域にあるのは間違いない。クルーズコントロールに任せて高速道路を一気に駆け抜け、雄大な山々の間を縫うようにワインディングを満喫し、瀟洒な宿で疲れを癒す。たとえばそんなゆとりある旅を望むなら、このモデルが最右翼になってくれるはずだ。
ETCやグリップヒーターの他、専用のアプリによって走行のログが残せる機能を標準装備。その他、片側28リットルの容量を持つパニアケースも純正アクセサリーとして用意するなど、ツーリングに必要な機能が抜け目なく揃っているのが、この「ニンジャH2SX SE+」である。価格に見合う豊かな時間をもたらしてくれるに違いない。
ニンジャH2と同系のエッジの効いたフロントマスクは空力にも貢献。向かって右側のエアインテークがスーパーチャージドエンジンの吸気ダクトとして機能する。ヘッドライトを筆頭とする灯火類にはすべてLEDを採用し、その上部にはハイスペックマシンの象徴であるリバーマークが輝く
パワーと燃費性能を両立したバランス型スーパーチャージドエンジンを搭載。低中回転域を重視しながらも最高出力は200ps、ラムエア加圧時には210psに達する。見た目はニンジャH2と同系だが、スーパーチャージャー、燃焼室、カムシャフト、吸排気システムなどを一新。扱いやすさが大幅に向上している
シフトアップとダウンに対応するKQS(カワサキクイックシフター)を装備し、スムーズな加減速を実現している。フットペグ上面はラバーで覆われ、走行中の振動が軽減されている
ハンドル左側のスイッチボックスには、ライディングモード、プリロード調整、クルーズコントロールといった主要な操作ボタンが集約され、走行中の選択や切換も容易。グリップヒーターのON/OFFと温度調整も行える。また、ハンドル右側にはディスプレイの表示パターンなど、より細かい設定が可能なMODEボタンが備えられている
メーターはアナログのタコメーターとフルカラーのTFT液晶ディスプレイが組み合わせられている。TFT画面の表示パターンは4種類の中から選択でき、自動調光機能や背景の色変更機能(白/黒)も備える。最も多用するであろう、SPORT/ROAD/RAINのライディングモードの状態がひと目で分かる他、ブレーキ圧やリーンアングル(バンク角)といった車両状態まで、様々な情報が一括表示される
ニンジャH2と比較し、容量の小型化(10リットル→7リットル)と軽量化(-2kg)を達成したテーパー型マフラー。マスの集中化によってハンドリングの向上にも寄与している
不安定な場所での駐車やメンテナンス時の利便性に効果を発揮するセンタースタンドを装備。262kgの車重に対し、引き起こす時の力はそれほど要しない
シートは前後分割式で広い座面を持つ一方、ライダー側の前部を絞り込むことによって良好な足着き性を確保。タンデム側はフラットな形状と大型グラブバーを備え、乗り心地のよさ、パッセンジャーの安全性、荷物の積載性に配慮されている
フロントフォークもショーワ。減衰力を制御するためのストローク量やストロークスピードを0.001秒毎に検知する驚異的な処理能力を実現している。そこにIMUの加減速(0.01秒毎)とECUの車速(0.01秒毎)を加えて、KECSを統括。高い路面追従性と快適性がもたらされることになった。ライディングモードに応じて、HARD/NORMAL/SOFTと乗り味が変化する他、伸び側と圧側の減衰力をマニュアルでセッティングすることもできる
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Ninja H2 SX SE+ Studio Video
SPEC
- 最大トルク
- 137Nm(14.0kgf・m)/9,500rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- トレリス
- 車両重量
- 262kg
- ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ250mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=190/55ZR17
- シート高
- 820mm
- 燃料タンク容量
- 19L
- 価格
- 282万7,000円