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このバイクに注目
KAWASAKI
Z H2 SE

スーパーチャージドエンジンを日常に【Z H2 SE インプレ】

Photos:
折原弘之

Zブランドの最高峰「Z H2 SE」に試乗した。カワサキが世界初のスーパーチャージドエンジンを送り出したのは2015年のことだが、それから6年が経過した今、リニアリティが劇的に向上。エンジンも足周りも日常に寄り添うフレンドリーさを身につけていた。

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「Ninja」と並び、カワサキの双璧を成すブランドが「Z」だ。その名を持つモデルが登場したのは1972年のことで、「Z1」(900 Super4)がオリジナルとなる。そこからすでに半世紀近くが経過した今、ブランドの勢いは衰えるどころかますます拡大。その系譜を引き継ぐ、最新にして頂点のモデルが、この「Z H2 SE」である。

STDモデルの「Z H2」は2020年4月にデビューしている。SEは上位グレードの役割を担い、2021年4月から発売を開始。主な違いは、下記の通りである。

  • 減衰力が路面状況に応じて変化する電子制御式サスペンションKECSの装備
  • レインモードで安定性が増すショーワのスカイフックサスペンションEERAの採用
  • ブレンボのモノブロックキャリパーStylemaとマスターシリンダーの採用
  • エアインテーク部分に施された銀鏡塗装

この通り、ショーワのサスペンション技術とカワサキが求める減衰力が組み合わされた足周りの充実が、Z H2 SE最大のポイントとなる。ここからはそれを踏まえつつ、実際に試乗した印象をお届けしよう。

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シート高は830mmだ。これは「Ninja H2 SX SE +」に対して10mm高く、両足を着くとカカトが40mm程度浮く(身長174cm/体重63kg)。ただし、この部分だけを切り取ってネガティブに感じてはいけない。なぜなら、ライディングポジション自体は快適なものになっているからだ。

簡易的な手計測ながら、例えばハンドルとステップ間の距離はNinja H2 SX SE +より50mmほど広く(=ハンドル位置が高い)、逆にハンドルとシート間は30mmほど近い。つまり、より上体が起き、より前へ座れることを意味し、安楽かつコンパクトなポジションを実現。取り回しや極低速走行は容易になっている。

その印象を後押しするのが、241kgの車重だ。数値だけ見れば重量級に思えるが、アップハンドルの取っつきやすさと、カウルを持たないことによるフロント周りの軽さがそれをカバー。感覚的には、Z900RS(215kg)よりわずかに重いかな、というレベルに収まっている。

軽快な身のこなしは終始一貫していて、車体はヒラヒラとリーンするだけでなく、ハンドルを大きく切って曲がるような場面でも緊張感は極めて少ない。200ps級のエンジンを搭載していることなど、つい忘れそうになる。

そのパワーをどうやって絞り出しているかと言えば、スーパーチャージャーによる過給が源だ。排出ガスの圧力を利用するターボチャージャーとは異なり、パワーとトルクが盛り上がる過渡特性が把握しやすいのが特徴とはいえ、2輪で受け止めるにはいささか凶暴なシステムだ。

実際、2015年に登場した世界初のスーパーチャージドエンジン搭載モデル「Ninja H2」は近年稀にみる手強さだったが、年々リニアリティが向上。その進化版であるZ H2 SEのパワーユニットはバランス型スーパーチャージドエンジンと呼ばれ、低回転域から高回転域まで極めてスムーズな出力特性が与えられている。

5,000rpmを超えると明確にトルクが上乗せされ、後方から蹴り飛ばされるというよりも、前方から引っ張られるような得体の知れなさがあるのは事実だ。しかしながら、意図せず急激な加速が始まることはなく、車体に張り巡らされている数々の制御がセーフティネットとして機能。ライダーのスキルをフォローしてくれる。

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電子デバイスは「インテグレーテッドライディングモード」に任せておいて構わない。このモードには、SPORT/ROAD/RAINの3パターンがあり、それぞれに応じてパワー(フル/ミドル/ロー)とトラクションコントロール(1/2/3/OFF)がプリセットされた値に変化する。もしもカスタマイズの望むなら、RIDERを選択すれば、制御の介入度をマニュアルで設定することも可能だ。

また、車体姿勢と加速度を検知するIMUを搭載し、バンク角やその時の速度をきめ細やかにモニタリング。その情報を元に、コーナリング中でもブレーキ圧力やエンジン出力を最適化され、高いスタビリティをもたらしているのだ。

さて、ここまでならSTDモデルにも共通する機能である。SEの真骨頂は、セミアクティブタイプの電子制御式サスペンションにあり、これによって快適性がさらに引き上げられているところがポイントだ。

サスペンションのストローク量とストロークスピード、車体の加減速情報、前後ホイールの回転数、フロントブレーキのフルード圧力から得られる情報を統括し、ライディングモード毎に減衰力をリアルタイムに変化させることによって、路面追従性が向上。ごく簡単に言えば、バイクとの一体感を常に高いレベルでキープしてくれる。

基本的な仕組みは、Ninja H2 SX SE +のそれと同様だが、Z H2 SEだけの装備もある。それがショーワ独自のスカイフックテクノロジーを組み込んでいる点だ。スカイフックとは、文字通り空から吊り下げられているような乗り心地を目指したもので、単に減衰力を変化させるだけでなく、車体姿勢の変化も最小限に抑え、スタビリティを高めるための制御を指す。これはライディングモードでRAINを選択した時に機能し、より安定した走行をもたらしてくれる。

テスト中、大きなうねりや凹凸が至るところにある首都高を走行したが、路面が舗装し直されたかのようにギャップを吸収。乗り心地のよさもさることながら、距離を重ねた時の疲労軽減に大きく貢献するのは間違いなく、この種の電子デバイスが新しいフェーズに入ったことを実感できた。Ninja H2 SX SE+の試乗時も、ほぼRAIN一択でいいのでは?と感じたが、Z H2 SEはそれ以上の懐の深さを見せてくれたのである。

そのたたずまいは完全にシロートお断りのオーラを放ちながら、いざまたがれば実にフレンドリーだ。スーパーチャージドエンジンを日常的に使うことを許容するオールラウンダーとして極めて高い完成度を誇る。

なにより、現実的な問題として見逃せないのが、217万8,000円という車体価格だろう。これほどのパフォーマンスとエンターテイメント性に対して、バーゲンプライスという表現は大げさではない。寛容と刺激の間を自由に行き来できる、プレミアムモデルの登場を歓迎したい。

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「SUGOMI」(凄み)をデザインコンセプトに掲げ、猛獣をモチーフにしたアグレッシブさがこのモデルのアイデンティティだ。LEDヘッドライトを中央に据え、左右で異なるアシンメトリーな形状が迫力を増長している

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2輪部門のみならず、航空宇宙システムカンパニーやエネルギー・環境プラントカンパニーなどがパワーユニットの開発に関与。川崎重工の技術が集められたスーパーチャージドエンジンを搭載する。998ccの排気量から200psの最高出力を発揮すると同時に、扱いやすいトルクフルな特性も併せ持つ

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大型の触媒をエキゾーストパイプに内蔵し、ユーロ5排ガス規制をクリア。吸気ダクト、スーパーチャージャーの作動音、集合部分の形状、マフラーの内部構造といった各部は音響解析にかけられ、心地いいエンジンサウンドを奏でる

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フロントブレーキキャリパーにはブレンボのモノブロック・Stylemaを新たに採用。STDモデルのM4.32キャリパーよりも軽量で、ダイレクトなレスポンスを実現している。IMUと連携し、バンク中に制動しても安定性を維持するKIBS(カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム)も搭載

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ショーワのスカイフックテクノロジーEERAを実装した前後サスペンション。そこにカワサキのセミアクティブサスペンションKECSを組み合わせ、ライディングモードに応じた理想的な減衰力を得ている。またRAINモード選択時は垂直加速度とピッチレート情報も検知。車体姿勢のさらなる安定化が図られているのが特徴だ

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テールライトの他、ターンインジケーターやライセンスプレートホルダーも含め、灯火類にはすべてLEDを採用。テールライトを点灯させた時の光跡は、Zの文字をイメージしたものだ

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メーターにはフルカラーのTFT液晶ディスプレイを採用する。背景の色をホワイトとブラックの2色に切り換えられる他、表示パターンには2種類を用意。ギヤポジションや速度といった一般情報の他、ライディングモード、リーンアングル、ブースト圧、IMUインジケーターといった詳細なデータが把握できるようになっている

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ハンドル左側のスイッチボックスには、MODEの選択ボタンやクルーズコントロールのセットボタンを備える。速度調整は1km/h毎の増減が可能だ

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ヘッドライトの左サイドには、スーパーチャージャー用の吸気ダクトが備わり、インペラへと導かれる。ダクト表面はNinja H2に初採用された銀鏡塗装が施され、デザイン上のアクセントと同時に、質感の向上に貢献している

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カワサキのリッタースーパースポーツ「Ninja ZX-10RR」のノウハウをフィードバックした両持ちスイングアームを採用。高い剛性と軽量化を両立している。前後17インチのアルミ鋳造ホイールにはピレリのスポーツラジアルタイヤ「ディアブロ・ロッソⅢ」が純正装着される

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エンジン回転数が2,500rpm以上の時に機能するKQS(カワサキクイックシフター)を標準装備。シフトアップとダウンの両方に対応し、なめらかな加減速を可能にしている

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シート高は830mm。パッセンジャー側のシートはキーによる脱着式で、その内部にはETC車載器や工具が装備されている。座面自体は広くないものの、フラットな形状を持ち、荷物は固定しやすい

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2021 Kawasaki Z H2 SE | Feature Video |

SPEC

Specifications
KAWASAKI Z H2 SE
エンジン
水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量
998cc
ボア×ストローク
76×55mm
圧縮比
11.2対1
最高出力
147kW(200ps)/11,000rpm
最大トルク
137Nm(14kgf・m)/8,500rpm
変速機
6速
フレーム
トレリス
車両重量
241kg
キャスター/トレール
24.9°/104mm
サスペンション
F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアーム+モノショック
ブレーキ
F=φ320mmダブル R=φ260mm
タイヤサイズ
F=120/70ZR17 R=190/55ZR17
全長/全幅/全高
2,085/815/1,130mm
軸間距離
1,455mm
シート高
830mm
燃料タンク容量
19L
価格
217万8,000円

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協力/ カワサキモータースジャパン