メーカー出荷時のサス設定はほとんどが硬過ぎる
日本製に限らずビッグバイクは西欧のライダーが乗る前提で開発されている。つまり日本人は体格的に小柄で体重も軽いライダーが多く、サスペンションでいうと硬過ぎる場合がほとんど。
さらに海外では制限速度も高く、ドイツのアウトバーンでは200km/h以上のクルージングも可能だ。そして2人乗りの頻度がとても多く、調整可能にはしてあるがそもそが高荷重対応で設計されている。
そこで必要なのが1G’と呼ばれるライダーが乗車したときに、サスをどこまで沈めるかをアジャストするサグ出し。このライダー乗車時にサスが沈んでいる量(リバウンド・ストロークともいう)は、大事な路面追従性を左右するため、万一スリップしたときのリカバリー能力も決めてしまうので安全のためにもぜひ調整しておきたい。
注意したいのは、速いライダーは攻めやすいハードなサス設定を好むという都市伝説めいた誤解。わかりやすくいうと、レースの世界でも国内選手権で同じサーキットを何百ラップも攻めて綿密にセッティングするため、動きの少ないハードな傾向のサスを好むライダーが多い(最近はさすがに減っている)のに対し、海外の様々な国際レースを走る一流ライダーは大事なリカバリーがしやすく操る自由度が高い、良く動くサス、手で車体を揺すると驚くほど柔らかいサス設定にしているのだ。
言葉の印象でレベルの高いライダーほど高荷重設定のサスを沈められるなど混在した情報で、硬い=速いに結論づけてしまいがちかも知れない。慣れてないうちは沈められないけれど目指して頑張るのでサスは硬めがエライ、そう思い込むのはリスクも多く間違いなのをぜひ認識しておこう。
リバウンド・ストロークの効果を左右する伸び側減衰力
ライドナレッジ079でも説明しているように、サスの乗車時に沈んでいるリバウンド・ストロークは、路面追従性の働きに加え、イラストにある万一のスリップから一気に転倒しないようリカバリーを左右する重要な機能を担っている。
これは沈む量を決めるスプリングのプリロード調整がまず重要だが、次に大事なのがこの万一で伸びるときの動きを左右する伸び側減衰力。
サスペンションのユニットには、路面からの突き上げなどにスプリングが縮むことで衝撃を和らげる機能と、これが深くストロークしたときに元へ伸びる際、フワフワと落ち着かない反復を抑えるためオイルが通路を抜ける抵抗を利用したダンパーという機能がセットされている。
このフワフワを抑える伸び側減衰力が強過ぎると、伸びる速度が遅い、つまり動きの鈍いサスとなってしまい、充分なリカバリーが働かない状態に陥る。
この伸び側減衰力も、海外市場がメインのビッグバイクでは、2人乗りやクルージングアベレージが高いのを前提に、メーカーの工場出荷時にダンパーが硬めにセットされている場合がほとんどだ。