ルーツは英国のカスタム好きが
カフェに集う愛車自慢カルチャー
カフェレーサーやネオカフェなど、最近カフェのつく呼び方のカテゴリーが目立つ。ただそのスタイルは、カウルつきだったりネイキッドだったりと多種多様だ。ちょっとビンテージで、それでいてスタイリッシュといった雰囲気は伝わるのだが、どこか釈然としない……。
ということで、カフェレーサーのルーツに触れ、そこからどのように受け継がれてきたかをチェックしてみよう。
まず1960年代、スポーツバイクの頂点といわれたトライアンフやBSAにノートンといった英国製ビッグツインが集まるカフェに、さらにカスタムで磨きをかけた愛車自慢が集うなか、粋なスタイルとしてハンドルを短く低いポジションとしたカスタムが流行りはじめたのだ。
ビッグバイクは堂々と乗るのが定番だったのを、前傾を強めてスピーディーなイメージとしたこのルックスで、大事なところは世界GPなどで走るホンモノのレーシングマシンにフォルムが似るのはNG。効率を求めた闘うマシンに遊びゴコロや華麗な雰囲気はない……当初はハンドルだけ短く低くして、着座位置が後ろになるのに合わせステップ位置を後退させ、ギヤチェンジペダルはリンクを介し、シートは後端をちょっと盛り上がらせてアクセントにする、そんなフォルムが主流だった。
この流行りが60年代~70年代へと進化をはじめ、燃料タンクもロングタイプとなりシートへテールカウルがつき、さらにノートンは750コマンドに有名なハーフカウルを装着した限定マシンを発表、メーカーがアフターマーケットに委ねず、自らオリジナルで最初からカスタムしたフォルムで販売する流れができたのだ。
日本車も敏感にその流れに乗り、ホンダが集合マフラーと低いハンドルのCB400フォアを発表、さらに新進気鋭のドゥカティもフラッグシップであるスーパースポーツを、ハーフカウルのカフェレーサーのフォルムで登場したのだ。
1974年、ホンダは日本メーカーとしては画期的なカスタマイズされた市販車を発表、一躍世界中の注目を集めた
ハーフカウルでスーパースポーツと一線を画す
これもカフェスタイルの定番に
その後は、そのドゥカティをはじめホンモノのレーシングマシンにかぎりなく近いレプリカの流れがメインストリームとなり、カフェレーサースタイルはノスタルジックなカスタムを好むマニア向けのイメージとなっていた。
しかしBMWやドゥカティで、バリエーション的な位置づけでこのカフェスタイルが度々登場し、スーパースポーツやスーパーバイクの究極のパフォーマンスを求めると、どのマシンも似てきてしまうことへのアンチテーゼとして、人々の心に宿り続けてきたトラディショナルを愛でるマインドが、またもや台頭してきたといえるのだろう。
最近では、このトラディショナルなフォルムが効率を追い求めるスーパーバイクより一歩余裕を感じさせるからか、性能はスーパースポーツでもフォルムはカフェのようなカテゴリーが育まれつつある。
初のスーパースポーツ750SSで成功したハーフカウルで、人気となった量産車900SSでドゥカティは成功を収めた
再生なったノートンでは昔のサイズを踏襲しながら再設計されたコマンド961が限定生産されている
ロイヤルエンフィールドの真新しいINT650には、バリエーションとしてカフェスタイルのGT650が用意されている。燃料タンクも違えばステップ位置も後退する本気度の高いカフェだ
MVアグスタでもスーパースポーツでF3を持ちながら、そのパフォーマンスを扱いやすく整えたスーパーベローチェをハーフカウルと思い切ったデザインで好評を得ている
トライアンフは最新モデルでハイパーなスーパースポーツ的な位置づけに、ハーフカウルのスピードトリプルRRを発表、個性と狙いの違いをアピールしている