2003年の東京モーターサイクルショーで
ST250の発表と同時に並べられたカスタムモデルへ注目が集まった!

2003年の東京モーターショーのスズキ・ブースには、ST250と命名された250ccスポーツがリリースされていた。
1982年のアメリカン、GN250Eの単気筒エンジンがベースの、いかにもシンプルなロードスポーツで、早々とカスタマイズを意識させるレトロなルックスのバージョンも並べられていた。
中でも注目を浴びたのが、展示されたカスタマイズのプロトタイプのひとつ、カフェレーサー。
英国ノートン・マンクス500ccレーサーを彷彿とさせるエキゾーストの取り回し。
ミニカウルとシングル・レーサー・シートが、ノーマルの燃料タンク形状と相まって、実にカッコよく映えていた。

前後18インチといかにもベーシックスポーツな構成のST250は、その後2008年から燃料噴射仕様となるなど、何と2019年までロングセラーとなる門出だったのだ。
そのバリエーションは、いかにもカジュアルからクラシカルな色合いまで、乗るライダーの嗜好に合うようカスタム化の潜在力を讃えた感性を伝えていた。


そして、まさかのビッグニュースが巷を駆け巡った。
あのST250に並べて展示されていたカスタマイズ・プロトタイプ、セパレートハンドルとバックステップ、フロントカウル、シングルシート、前後アルミフェンダーなど、レーサーをイメージしたモデルが、「ST250 E type Cカスタマイズ」として限定販売されることになったのだ。
ただ実際にはデリバリーされた数量は僅かで、いまや希少車として特別レアな存在だが、何れにしても個性を大事にするスズキらしいマイノリティなデザインは、ファンにとって忘れることのできないプロジェクトだった。




ST250のOHC単気筒エンジンは、1982年のオフロードモデルDR250Sと同時開発したGN250Eの4バルブがベース。
ST250ではこれを低中速の回転域での特性を重視した2バルブ仕様として、14kW(19ps)/7,500rpmのスペックで生産していた。
さらに2008年にキャブレターを燃料噴射としたモデルから、15kW(20ps)/7,500rpmと21Nm(2.1kgm)/5,500rpmのより低い回転域を意識したスペックにチューンしているのもスズキらしさだろう。

イヤーモデル毎にカラーリングのバリエーションを揃えるなど、様々な個性で幅広いユーザーへアプローチしていたのが印象的で、輸出モデル名のTU250Xでは小排気量らしいホワイト・ベースのモデルも存在、トラディショナルからカジュアルまで同じバイクに見えないほど。

実はST250の前に、1994年から4バルブ仕様だったVOLTYが存在していて、何とシングルシートがベースで荷台にタンデムシートを載せるという、いかにも新しいライフスタイルを漂わせた意欲作。
海外ではユーティリティの高さと、曲面を多用した個性的なデザインで好評だったが、国内的には手を出しにくいカテゴリーとなってしまった。
ST250はこの超クリエイティブだったコンセプトを、いわば引っ込めてからの後継としてのモデルでもあった。

こうしたマイノリティな企画でも販売まで漕ぎ着けるスズキのこだわりと、それでも模索を繰り返す粘り強さには、あらためて頭が下がる思いだ。濃いファンが多いのも頷ける。



