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このバイクに注目
MV AGUSTA
SUPERVELOCE 1000 SERIE ORO
2024model

MV AGUSTAのSUPERVELOCE 1000 SERIE OROを世界初試乗、レーシングマシンを頂点とせずワインディングでリアルな最高峰に浸れる新次元マシンを体感!【このバイクに注目】

Photos:
KEL EDGE,MV Agusta

まさかのリラックスしたライディングポジションと、失敗を怖れずに済むフルリカバリーのモードと猛り狂う公道では試せないフルパワーのモード!

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2022年のEICMA(ミラノショー)で展示されて以来、MV AGUSTAのバレーゼ工場はSUPERVELOCE 1000 SERIE OROをデリバリーするための作業に没頭していた。
ただMV AGUSTSA前所有者のロシアSARDAROV家から、同年11月3日にKTMが25.1%の株を取得し、新しい経営体制へ移行するまでやや足踏みを余儀なくされたが、2024年3月に過半数50.10%の株式を取得となり、オーストリアのPIERE MOBILITY傘下へ組み込まれ、遂に生産車両のデリバリーが開始されるまでに漕ぎ着けた。

この500台の限定仕様SERIE OROを、我らが盟友モーターサイクルジャーナリストのALAN CATHCART(アラン・カスカート)が現地バレーゼ(アルプスの麓になる北イタリア)で世界初試乗、彼の古くからの知りあいのMVのファクトリーテスターAndrea Rossignoliの先導によって全150kmを駆け抜けた詳細リポートが届いた。

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MV の工場敷地内に足を踏み入れ、太陽の光に輝くこのバイクを見ただけで、思わず息を呑んだ。製作者ステファン・ヴァッシュが私に言ったように、このバイクの存在感は特別だ。
スターターボタンを押すと、タンブリーニオルガン(最初のF4で鬼才タンブリーニがシート下に並べた4本のサイレンサーは愛好者にとってまさにパイプオルガンのそれに見えていた)の2024年バージョンから素晴らしいサウンドトラックが流れてくる。
しかも最近の主力3気筒が奏でる音色ではなく、スーパーヴェローチェの直列4気筒の点火順序は、7,000rpmを超える高回転域で、その名(SuperVeloce=超高速)にふさわしい叫び声を上げる。これはもう喝采モノというほかない!

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驚くほど快適なパッドで覆われたシート座って気づいたのが、SuperVeloce の予想外ライディングポジション。そもそもがBrutaleをベースに開発されてきた経緯も関係しているのだろうけれど、手首や肩に過度の重みがかからず、バランスの取れた長時間・長距離が可能なスタンスだ。
スクリーンはタウンスピードでは低すぎてウインドプロテクションにほぼ効果はないが、Andrea’s Racer Road(テストライダーAndreaのSpl.ステージ) の高速区間では風圧が強まり上半身が隠れる位置関係なのがわかった。
F4 のようにきつい前傾でバイクに掴まって走るというのではなく、クリップオンハンドルは35mm高く、デフォルトのフットレストの位置も70mm低くなっているのとかなり後ろにあるため、はるかにゆったりとしたライディングポジションで、疲れにくい。 SuperVeloce1000 は信じられないほど快適だ。

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それでも、最初の 30 分間は緊張感でいっぱいになる。ヴァレーゼの朝のラッシュアワーを巧みにかいくぐるAndreaを見失わないよう、アルプス方面へと駆け抜けた。そんな街中で、クラッチ レバーはストップ アンド ゴーを繰り返す状況では疲れを感じさせる。とはいえ郊外へ出て回転数とスピードを上げ始めると、すぐにシフトアップとシフトダウンの双方向でパワーシフターの素晴らしさを堪能できた。
毎回シームレスなギアチェンジを実現するよう完璧に設定されていて、動作は軽く且つポジティブで、感度をそれほど高くせずに、ブーツをレバーに軽く当てる以上の動作が必要なことから、メリハリを与えることを要求されるが、点火カットされる時間はごくわずか、ギヤシフトは両方向とも完璧だった。
ギア比も公道での走りに対し適切に選択されており、特に3速は曲がりくねった山道を醍醐味を味わいながら走行するのに理想的だ。

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SuperVeloce1000専用にチューンされたエンジンを、3,500 rpmという低回転から、本領発揮のパワーが出始める14,000 rpmの回転数リミッターまで回してみると、いやおうなしに現実的に乗りこなせる領域とリミッターが駆使される踏み込めない領域とを往復する。
41/15Tファイナルドライブギアリング(2次減速)では、3速で160kmhをはるかに超える速度へ到達して、良識ある範囲の終了を伝えてくる。
好奇心からそれ以上を試したことは認めるものの、そこは評価を云々ではなく垣間見たに過ぎない。
それより特筆したいのは、150kmを走り続けて感じたこの超強力なエンジンパッケージが、比較的ゆっくり走るのが驚くほど簡単というか得意で、100km/hほどのアベレージで走るとき、6,000rpm前後でショートシフトするのが快適だったこと。低速でのパワーフィーリングは本当に素晴らしく、シフトしやすいクラッチレス・トランスミッションのおかげで、ほとんどピークパワーの回転を使わずでも、トラクションの醍醐味をデリケートに楽しめる質の良さに終始していた。

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この回転上昇によるパワーカーブに段差はないものの、力強さが急激に変わる時点から4気筒エンジンは狂ったように回転数を上げ始め、それでもスロットル全開を続けるとSuperVeloce 1000は誘導ミサイルのようにまっしぐらに前方へ突進、並外れた加速Gに必死でしがみつくのに精一杯になる。
アンチウィリーの介入も、とりわけレース・モードではスロットル レスポンスに対し電光石火の素早さだ。
レベル 3 トラクション・コントロール (レベル 1 は介入が最も少ない) を選択すると、リヤのピレリ・スーパーコルサはアルプスの花崗岩を敷き詰めた滑りやすい舗装道路でもうまく路面を掴み続ける。柔軟で寛容な低速域と相俟って、道路の幅員が広い場面でSuperVeloce 1000は静止状態からロケットのように加速に身を委ねることが可能だ。
その一方で、5 速ギヤの120 kmhからの中速域加速でも、レスポンスは鋭く力強い加速を楽しませてくれる。但しこの道路状況では、トップ ギヤを適切に使用する余裕がないままに終わってしまった。9,500rpmでパワー伝達が一段と向上し、加速がさらに強くなるように感じられたものの、これ以上は無謀な速度域へ突っ込んでしまうのはいうまでもない。
しかも効果的なギヤ駆動カウンターバランサーが搭載されているため、どの回転数でも振動を最小限に抑え信じられないほど爽快なフィーリングに包まれていた。

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パワーに馴染みやすいことから、11,500 rpm でシフトアップを繰り返すと瞬く間にワープするような加速が得られので、SuperVeloceのコーナリング・ポテンシャルを思い知る領域が延々と続いた。
高速コーナリングでも非常に安定しているため楽しさは群を抜いているが、日が暮れるにつれて、幅広の200サイズのリヤタイヤがステアリングを重くしていることを次第に意識するようにもなってきた。
そもそものステアリング・レスポンスは速度で強さを自動補正するステアリングダンパーにより適度にシャープとはいうものの、2速や3速の連続するワインディングで左右に忙しく切り返すのは大変で、暑い日に疲れたことは認めざるを得ない。
しかしハンドリングは常に寛容で、カーブの途中で旋回速度の判断を誤り、少しスピードを落とそうとフロントブレーキレバーに指を当てたとしても、SuperVeloceは起き上がって道端の生け垣へ向かうことなく、そのままの姿勢で減速してみせる。
馴染むにつれ判断規準も変わりはじめ、それまでよりも1速高いギヤでコーナーを楽々と回るようになると、フロントのピレリが路面に張り付き、Öhlinsサスペンションが完璧に追従する高次元な仕事ぶりをあらためて堪能することとなった。

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エンジン・マッピングはスポーツ・モードとレース・モードの両方で理想的で、後者ではスロットル レスポンスが著しくアグレッシブに感じさせてはいるが、スロットルを閉めた状態からのピックアップは過敏ではなくジワッと力強く、このように超パワフルなパッケージでは非常にありがたいコントロール特性を感じられる。
ブレンボのキャリパーはいつもの優れた感触とフィードバックを提供し、ABSとのコンビネーションも、その素晴らしい制動力の下で体重が前輪にかかっても後輪の浮き上がりを最小限に抑える役割と連動してみせる。エンジン・ブレーキは、ギヤをシームレスかつクラッチなしでシフトダウンするとき、ラフな操作でもスリッパー クラッチを介して整然と安定した状態をキープし続ける。
このように集中力さえ途切れずコントロールできるライダーならば、リッタークラスのハイパーマシンを、ワインディングでどこかリスクを覚悟していた以前と違い、心の底から楽しめるという贅沢な時間を過ごすことができた。

2次振動を抑えるバランサー駆動の4気筒は、実績を積んだ仕様をさらに細かくチューン、エアフローとの取り組みも最新マシンならでは!

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この魅惑的なSUPERVELOCE 1000のデザインは、2020年9月にサンマリノ(イタリア北東部の小高い丘陵にある最古の共和国)を拠点とするCRC R&D部門にMVの新しいチーフデザイナーとして加わった、ホンダやGKデザインのヤマハでもキャリアを積んだフランス人のステファン・ザッシュがまとめている。
その目を見張る造形の力強く美しい新世代を感じさせる刺激的なルックスは、依然として他にない強いオリジナリティを楽しませてくれる。
独得のラジアル(放射状)バルブ配置のDOHC16バルブ4気筒は、79mm×50.9mmのボア×ストロークの998cc、13.4対1の圧縮比から最高出力153.0kW(208HP)/13,000rpm、最大トルク116.5Nm(11.9kgm)/11,000rpmを発揮。
ブルターレ1000RRに搭載してきたこのエンジンには、2倍速で回転する2次振動バランサーが装着され、14,000rpmで実に54%もの振動を低減しているという。
クランクケースの下にオイルリザーバーを作成することでオイル抵抗が低減されるセミドライサンプエンジンが実現し、急加速時にオイルがクランクケースの背面に流れ込むのを防いでいる。因みに0-100km/hを2.9秒のダッシュ力だ。
4つのライディング モード (レース、スポーツ、レイン、カスタム) はIMU 慣性プラットフォームによって制御され、スロットルを閉じることなく走行中に選択できる。最新の電子パッケージには、8 段階のトラクション コントロール、2段階のエンジンブレーキコントロール、オン/オフのアンチウィリーコントロール、スピードリミッター、クルーズコントロール、3段階のスロットル感度、双方向のワイド オープン パワーシフターが含まれる。
こうした各要素に最適なサプライヤーを選択し、MVの指示の下でそれらをつなぎ合わせることが必要なため、たとえば50mmスロットルボディ4個を備えたRBWシステムはミクニ製で、シリンダーあたり2つのインジェクターのうち下側もミクニ製で、上側のトップスプレーインジェクターはマニエティ・マレリ製と複雑な構成をとる。
切り替え可能な2段階のコーナリングABSがインストールされ、RLMリアホイールリフトアップコントロールも組み込まれた。
クロームモリブデン鋼管トレリスフレームと片支持スイングアームの車体は燃料を除く潤滑油・冷却水などを含んだ走行可能状態で209kg(乾燥重量 194kg)。
ホイールベース1,415mmでシート高は845mm。

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先進性へのチャレンジは、SUPERVELOCE 1000 SERIE OROを特徴づける各部や素材へも波及、リヤホイールのキャストスポークと一部ワイヤースポークとで混成する構造や、40パーツにも及ぶフォージドカーボンファイバーの軽量で強度のある新素材など、従来にはなかった要素で構成した革新的な成果が目立つ。

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アピアランス最大の特徴はいうまでもなくデザイン開発のメインテーマとなったエアロダイナミクス。
1972年に当時の世界GP500ccクラスでも、まだどのメーカーのワークスマシンにも見ることのなかったウイングを初めて装着したのはMVアグスタだった。
これに端を発しインスパイアされたフィロソフィとしてフロント両側にウイングを装備、320km/hで39.2kgのダウンフォースを発生するという。

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しかし最も注目すべきはアンダーカウルの先端から後方へ流速を高めるエアフロー。
前輪にはカーボンファイバー製のディスクブレーキ・カバーを装着、ブレーキ・キャリパーの冷却だけではなく、アンダーカウルへの流れはエンジンオイルの温度を最適化、さらにこのカウルに沿って外側を流れる流速全体を整える効果へ至る「抜け」をテーマとしたエアフローだ。
こうしたエアロパーツも含め、ウイング機能などが目的に見えるデザインと異なり、発想のスタートからトータルエアロダイナミクスで開発をしているレベルの高さはさすがというほかない。

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それはカウルや燃料タンクなどの造形のみならず、特徴的な5本スポークデザインの鍛造アルミホイールは、構造技術の開発部分から携わっていて、ユニークなエキゾーストシステム構造も開発から係わっているからこそ生まれた他で見られな取り回しとなっている。

この限定500台のSUPERVELOCE 1000 SERIE ORO(税込み958万円)は、これまでのMV AGUSTAの例では1~2年で量産仕様がリリースされてきた。
これが今回のモデルでも同様なのかは不明だが、ひたすらレーシングマシンに倣う頂点マシンと一線を画すMV AGUSTAの新しい発想が、少しでも多くのファンの夢を叶えることを願うばかりだ。

SPEC

Specifications
MV AGUSTA SUPERVELOCE 1000 SERIE ORO
エンジン
水冷4ストロークDOHC16バルブ4気筒
総排気量
998cc
ボア×ストローク
79×50.9mm
圧縮比
13.4対1
最高出力
153.0kW(208HP)/13,000rpm
最大トルク
116.5Nm(11.9kgm)/11,000rpm
変速機
6速
フレーム
クロームモリブデン鋼管トレリス
車両重量
209kg(燃料を除く潤滑油・冷却水などを含む走行可能状態)
キャスター/トレール
23°/97mm
サスペンション
F=テレスコピック倒立
R=スイングアーム+モノサス
タイヤサイズ
F=120/70 ZR17 R=200/55 ZR17
全長/全幅/全高
2,080/895/NA
軸間距離
1,415mm
シート高
845mm
燃料タンク容量
16L
価格
958万円(税込み)