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このバイクに注目
HONDA
VT250 SPADA
1988model

SPADAのスチールより3kgも軽い高度なアルミ中空フレームは理解されず……【このバイクに注目】

Photos:
HONDA

ライフスタイルを意識させるスポーツバイクを狙いながら、パフォーマンスでCBRに負けないのがホンダ!

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1982年に打倒2ストロークを掲げて殴り込みをかけた、4ストDOHC8バルブの高回転高出力Vツインを搭載したVT250Fはいわば「戦闘機」。
このホンダの何が何でも勝ってやるという戦闘モードに、ホンダファンはもちろん多くのバイクファンがその刺激の強さに痺れていたのは間違いない。
それからというもの、レプリカブームもあってスポーツバイクはレーシーなスタイル一辺倒になってしまった。

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そのVT250Fも翌年カウルを纏ったVT250F INTEGRAをリリース、続いて1984年にハーフカウルに角断面フレームの2代目となり、半年後にネイキッドのVT250Zが登場、そして1986年にエンジン部分を除きカウルでカバーされたソフトイメージの3代目へと繋がっていた。
このVT250系は、発売後34カ月の短期間で250ccの累計販売台数10万台を初めて超える大ヒット。
しかしそれは同時に250ccユーザーの多様化するニーズへどう対応していくか、ホンダにとっても難しい舵取りを迫られていた。

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水冷4ストロークDOHC4バルブの90°Vツインは、ボアxストロークが60.0x44.0mmのショートストローク、排気量248ccで最高出力40ps/12,000rpmと最大トルク2.6kgm/9,000rpmの超々ハイスペックな、まさにスーパースポーツ向けエンジン。
ところが4ストのしかも2気筒という素性は、点火時期など適正化を進めると中速域でも扱いやすい実用性を身につけ、レプリカブームで4気筒化やパワフルな2ストエンジンが際限のないパワー競争へ陥るのに対し、タウンユースでの乗りやすさを含め明らかに優位な位置づけとなってきたのだ。
それを象徴するデビューから6年のモデル変遷だったが、ここでVT250をスーパースポーツ的なカテゴリーから外し、新しいスポーツバイクの価値観を込めたコンセプトへと歩みを進めるプロジェクトの検討がはじまった。
それがこのSPADA、イタリア語で「剣」を意味する車名はカジュアルさを軟派なイメージではなくスポーツバイクのスタンスを保ちながら、ライフスタイルを意識させる新たなデザイン・コンセプトへのチャレンジとなった。

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エンジンはVTZ250の開発でスタートした仕様で、吸気バルブをφ23→φ24mm、排気側もφ20.5→φ21mmへと大径化、点火プラグはφ12mmだったのをφ10mmへと小径化して燃焼室形状を整えている。エアーファンネルも前後で不等長としてVY250の積み重ねたノウハウで高効率化が進んだ。
さらにはACG(発電機)のフライホイールマスを若干だが増やして、トルクフィーリングをリニアな力強さとし、実走行テストでさらにクランクマスなど細かなセッティングで実用性を高める開発に注力していた。
そしてこのSPADAの中核となったのが、優れたアルミのキャスティング(鋳造)技術を持つイタリアン・テイストの造形を活かしたフレームだった。
ツインスパーの構造は中空キャスティングで、横剛性で22%アップ、捩り剛性は25%と強靭なフレームにもかかわらず、重量で25%(3kg)の軽量化も果たしていたのだ。

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そしてCASTECフレームと相俟ってシンプルな造形の燃料タンクやシートカウルで、単色の赤や黒にブルーやエメラルドグリーンといった、イタリアをイメージさせるカラーリングを纏ってのデビューとなった。
いわゆるまとまりの良いデザインほど、個性を感じさせないくい面もあって爆発的な反応がなく、メジャーとなったツインチューブフレームがアルミの引き抜き材で構成されていたことから、鋳造パーツが低コストの誤解をうけやすく実はさらに高度なテクノロジーとの理解がされなかった点も響いていた。

加えて周囲で個性をアピールする競争で、アクの強いネイキッドが目立つ状況とのコントラストから、シンプルで大人ぽい雰囲気はアピールが弱いと判断され、ホンダもSPADAに見切りをつけ3年後にはパイプフレームのXELVISへと路線変更していくのだった。

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イタリアンカジュアルを標榜する証しとして、レッドをメインカラーとしてグリーンをラインナップする戦略で、広告展開にもホンダF1ドライバーのアイルトン・セナを起用するチカラの入れようだったが、この超有名キャラクターに依存したこともバイクの特徴をぼやけたモノにしていたようだ。
実際に乗ればCBRよりコーナリングから立ち上がり加速で優れたポテンシャルで、知る人ぞ知る傑作バイクだったのだ。

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