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このバイクに注目
HONDA
VF400F
1982~1985model

VF400FでミドルクラスへV4を投入したホンダの徹底した戦いぶり!【このバイクに注目】

NR500からスタートしたV4戦略が400ccクラスにも降臨!

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ホンダは1970年代にアメリカでクルマの排気ガス規制マスキー法をクリアするのに全エンジニアを投入、その間に2輪開発のピッチが遅くなり劣勢へと追い込まれたのを一気に挽回する戦略戦術を練っていた。
その急先鋒となったのが世界GP復帰。席巻していた2スト500ccに、4ストV型4気筒20,000rpmの超高回転で挑んだNR500は、気筒あたり8バルブで長円ピストンの革命児だった。

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経験のないエンジン型式に加え、カウルを卵の殻のようにボディとしてメインフレームを持たないモノコック構造、いまでこそ当たり前の倒立フォークやバックトルクリミッターなど、経験のない課題が多すぎて実戦では2スト開発へ道を譲ったものの、スポーツバイクの将来像として選んだV型4気筒に対してのブレは全くなく、1982年3月にロードスポーツVF750 SAVREとクルーザーVG750 MAGNAをリリースした。
次にメージャーなカテゴリーでの尖兵として、V4の半分のV型2気筒VT250Fを1982年6月に発売を開始。

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その僅か半年後の1982年12月に、VF400FとVF750Fのスーパースポーツが登場、この矢継ぎ早にV4を投入する姿は、溜め込んだ常に先陣を切ってきたホンダの底力がまさに炸裂したといえる爆発的な勢いに満ちていた。

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初の400cc90°V4は、55.0mm×42.0mmのショートストロークで399cc。53PS/11,500rpm、3.5kgm/9,500rpmで、ホイールベース1,415mmで完全なダブルクレードルのフレームで乾燥重量173kg。
前輪に世界GPからフィードバックされた前輪16インチの小径化、ホンダオリジナルのコムスターホイールに組み込まれたインボードディスク(効力とタッチで優位な鋳鉄ディスクが外見で真っ赤に表面が錆びるため)に、アンチノーズダイブのTRACやリヤサスのプロリンク等々、最新テクノロジーを満載したスーパースポーツだった。

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レーサーレプリカ全盛の前に見ることのできたスーパースポーツ・フォルムのV4!

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デビュー当初、V4を経験したことのないライダーにとって、2気筒並みにスリムで軽快なV型4気筒の振る舞いに及び腰。慣れてきた直4の幅があるクランクシャフトがもたらす安定感とは違い、中速域のスロットル・レスポンスが鋭いだけでなく、従来のトルクが呼び出されるまでのラグのない燃焼効率で一気にトラクションを高めるポテンシャルに戸惑うばかりだった。

しかし慣れるにつれ、全日本F3クラスでワークスマシンが他を圧倒するのを横目で睨みながら、徐々にそのポテンシャルを開花させるライディングも浸透、翌1983年にはベストセラーだった同じホンダのCBX400Fを抜くヒット作となったのだ。

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このスーパースポートとして直4との棲み分けも兼ね、ホンダが上級クラスに設定するカウルを装着したINTEGRAが1984年モデルから設定されることとなった。
しかし、こうしたロードスポーツとしてのスーパースポーツという姿は、HY戦争をはじめバイクブームに火をつけたレーサー・レプリカの領域へと中心が移りはじめていた。

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市販車でタコメーターのレッドゾーンが12,500rpm~という、とてつもない状態の到来に、エスカレートする競争原理はV4もレプリカ専用エンジンへと的が絞られ、VFはVFRに、そして400の後ろにRがつく車名の、まさにレーシングマシンと同時開発されるサーキットでその本領を発揮する仕様へと展開されたのだ。

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ただご存じのようにブームにはいつか終焉が訪れる。
そして過ぎ去ってみれば、スーパースポーツの原型すら記憶にない空しさが漂うなか、ネイキッドブームの再来からトラディショナルなアドベンチャー系やスクランブラーのフォルムが彷徨う時代を迎えている。
そうした状況で40年以上も前のスーパースポーツを目の当りにすると、機能美とライダーの夢を育むフォルムとのコンビネーションに、懐かしさより新しさを感じるライダーも多い。

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