異質のデザインに賛否が分かれた
強烈なインパクトをもたらしたドゥカティの新世代ネイキッド
様々なカテゴリーのバイクをラインナップする現在のドゥカティにあって、モンスターシリーズはスポーツネイキッドとして、また最もスタンダードなモデルとしての役割を担っているのはご存知のとおりだ。
現在(2020年)の国内では排気量が異なる1200cc、821ccが発売されているが、そのルーツは1993年にまで遡る。記念すべき初期型は、当時のフラッグシップ、スーパーバイク851/888のフレームに空冷Lツインを搭載したネイキッドモデルとして登場した。
ドゥカティ=レーシングマシン
モンスターは、いまでこそ同社を代表するシリーズだが、デビュー当時には「異端児」とも言われ、ドゥカティのオーナーやファンの間で賛否両論を巻き起こした。
それは当時のドゥカティに対するイメージに対し、モンスターの容姿があまりにかけ離れていたからだった。
’80年代のドゥカティLツインの主力モデルといえば、’70年代から続く「ベベル」系の900SSや900MHR、「パンタ」系の750F1、水冷4バルブのスーパーバイク851/888など、TT-F1やワールドスーパーバイクで活躍していたワークスマシンの血統を持つ、いわばレーシングマシン同様のモデル。「ドゥカティ=スポーツバイク」という認識は、当時からすでに世界的に浸透していた。
スリムでありながら、ボリューム感が強調された燃料タンクは、前方のバックルを外すと、後端を支点にタンクを跳ね上げることができた。このタンクのデザインが、モンスターらしさを最も象徴していた
デザインを担当したのは、アルゼンチン出身のミゲール・ガルーツィ。当時の技術責任者、マッシモ・ボルティに幾度となく後にモンスターとなるネイキッドバイクのアイデアを出していたそうだが許可は出なかったという。そこで彼は少人数で秘密裏に製作を続けた。その結果、1992年のケルンショーでの発表に結びつき、大反響を巻き起こした
これはドゥカティなのか?
新たに登場したモンスターは、カウルのないネイキッド仕様。しかもスリムでありながらも前後に長く、ボリューム感が強調された独特な形状の燃料タンクなど、それまでのドゥカティのイメージとはあまりに異なっていた。奇異にも映るこのモンスターのデザインに、従来からの熱烈なファンにしてみれば納得できるはずはなく、失望の色を隠せなかった。
しかし、その一方でモンスターは新たなファン層を生み出した。それまでドゥカティに興味のなかったバイクファンが、新デザインに注目。パーツメーカーやショップもカスタムの素材としての魅力に気づき、同時代に人気の高かった900SSと共に様々なスタイルのモンスターカスタムが登場することになった。
デビュー当時こそ、ファンの賛否が分かれるなどのエピソードを生んだモンスターだが、後のドゥカティの屋台骨になるほどのシリーズへと成長。新たなファン層を生み出したモンスターは、現在もドゥカティになくてはならない存在となっている。