異端児、スパルタン、エントリーモデル、救世主……ドゥカティのモンスターは時代時代で様々な使命と共に生きてきた。1993年のデビュー当時は「こんなのはドゥカティじゃない」とまで言われるが、まさかの大ヒットで、1990年代のドゥカティを経営危機から救うほど人気を博した。現在までに40種類以上の派生モデルを生み出し、35万台以上が生産され、いまではドゥカティの普遍的なアイコンとして世界中にファンがいる人気機種。果たしてNEWモンスターは、その伝統をどのように受け継いでいくのだろう。
異端児だったモンスター。いまではドゥカティのスタンダードに
1993年、初代モンスターはドゥカティ=スポーツバイクという時代に誕生した。スーパーバイクである851-888系のフレームに伝統の空冷Lツインエンジンを搭載し、それはストリートファイターの元祖ともいえるだろう。その後、ほぼすべてのメーカーがこのスタイルを追従したのは記憶に新しい。
異端とさえ呼ばれ、バイク好き、そしてベテランほどその存在を受け入れられなかった。しかし、程なくしてモンスターはブームに。ドゥカティの屋台骨を支える存在へと成長していった。
そこから何度か大胆なモデルチェンジを繰り返しながらも、モンスターはモンスターらしさを一度も失うことなく進化してきた。これは簡単なことではない。しかもドゥカティはモンスターを革新させ続け、その攻めの姿勢を崩すことはなかった。こうして改めて思い返すとドゥカティがモンスターというブランドをいかに大切にしてきたかがよくわかる。
それでも、今回のモデルチェンジほど大きな革新は過去になかった。
伝統のパイプフレームをなくし、エンジンは水冷の937ccにスケールダウン(1,200ccと比較すると)。1台でこれまでの821、1200をカバーする使命を与えられ、軽さと運動性をどこまでも追求しているのがわかる。
実際に目の前にすると期待感が大きくなってくる。とてもスリムで無駄な贅肉を削ぎ落とした感じ。そして、どこまでもモンスターらしさと、ドゥカティらしさに溢れている。
「ドゥカティは上手い」各部に触れていくと一瞬で納得している自分がいた。
シート高は820mm。オプションで800mmのローシートも用意され、さらにサスペンションのローダウンキットを組み込むことにより、シート高は775mmまで下げることが可能
(RIDE HI NO.5の記事内に日本仕様のシート高は775mmになるという表記がありましたが、日本仕様に関しては未定でした。混乱を招き申し訳ございません)
モンスターとは何か。ドゥカティはそれを考え抜き、辿り着いた
ドゥカティの魅力のひとつは、幅の狭いエンジンにある。それはほぼ単気筒と変わらないスリムさで、これが軽快なハンドリングを生み出す。これまでのモンスターは、そのエンジンに寄り添うようにパイプフレームがあり、そこにエンジンを懸架していたわけだが、Newモンスターはフレームが見当たらない。横から見るとLツインエンジンの存在感が強く、ちょっと不思議な感じだ。
実はフレームはエンジンの真上にあるのだが、これまでのようにエンジンのサイドに何もないため、937ccのバイクとは思えないほどスリムに見える。タンクやシート、そしてマフラーなどもシャープなデザインでまとめられているため、無駄なものを一切排除したアスリートのような筋肉質な佇まいなのだ。
スーパーバイクで培ってきた技術をネイキッドに落とし込む。これは歴代モンスターが貫いてきた思想だ。ユーザーのニーズに期待以上の技術とデザイン、そしてアイデアで応えてきた。
見るほどに色々なディテールが気になっていく。
テスタストレッタ11°水冷4バルブのLツインエンジン。パイプフレームを廃しエキパイの取り回し方により『L』が強調されている。最高出力は82kW(111ps)/9,250rpm、最大トルクは93Nm(9.5kgm)/6,500rpm
1993年に登場した初代モンスターのDNAを受け継いだデザイン。ボリュームのあるガソリンタンク、丸形ヘッドライトを現代風にアレンジ。装備重量は188kgで、乾燥重量はわずか166kg。モンスター821よりも18kgも軽量に仕上がっている
モンスターをいかに調教するか。その楽しみを味わいたい
モンスターは日本の市街地にスッと溶け込んでいく。イタリアンらしい派手目のデザインは強い主張を持っているが、同時に気品を漂わせる。これは歴代に共通する、モンスターらしさだ。
これほどまでに一気に洗練されたことがあっただろうか。エンジンを車体の一部と考えるドゥカティは、車体構成がとてもシンプルだ。エンジンからスイングアームが伸び、エンジンの上にあるエアボックスを兼ねたフレームは猛烈にコンパクト。そこにフロントフォークを懸架する。わかりやすくいうと部品点数が少なく、それが軽量化にも繋がっている。乾燥重量166kg、装備重量188kgはホンダのCB400SFよりも軽いのだ。
軽いバイクは、「乗りたい」と思ったときに乗れる気軽さを約束してくれる。そしてそれはスポーツ性の高さにも直結する。だからモンスターは多くのニーズに応えるのだ。
モンスターに乗る。その優越感は計り知れない。
怪物を調教することもできるし、怪物の意外な優しい一面を見ることもできるだろう。モンスターとのバイクライフはすべてにおいて優越感に浸ることなのかもしれない。感動や悦び、刺激や高揚をモンスターと共有していく。モンスターらしさを磨きあげたNewモンスターと過ごすその贅沢な時間は間もなく実現する。きっとキャリアを問わず贅沢な時間を約束してくれるだろう。まずはドゥカティディーラーに足を運び、跨り、そのスリムさを実感してみてはいかがだろう。
斜め後ろや上から見るとNEWモンスターのスリムさがよくわかる。既存のモンスターにはないディテールがとても新鮮だ
ハンドルはややワイドなアップハンドル。タンクは、モンスターの伝統を受け継ぐ力強くカーブしたライン、ニーグリップ部分がそぎ落とされた形状となる。このモデルからウインカーもデザインの一部として大きな役割を担っている
モンスターとしては、初めてライダー部分とパッセンジャー部分が独立したシートを採用。フロントのセミカウルとシングルシートカウルを装備するのが『+』だ
サイレンサーはシャープなデザインの2本出し。スイングアームの肉抜きにも注目。Newムルティストラーダ などにも採用されるデザインで、モンスター821と比較して1.6kg軽量に仕上がっている
モンスターを象徴する丸形のフルLEDヘッドライトは、LEDデイタイムランニングライト(DRL)を採用。とても凝った造形で、実際に触ったりするとドゥカティがいかにこのヘッドライトを作り込んだかがわかる
NEWモンスターは最新の電子制御を搭載。路面のコンディションやライダーのスキルに応じて自分の好みに合わせ込むことができる
まずはディーラーで跨ってみるのがオススメ。そのスリムさや軽さをすぐに実感することができるはずだ
SPEC
- 総排気量
- 937cc
- ボア×ストローク
- 94×67.5mm
- 圧縮比
- 13.3対1
- 最高出力
- 111ps(82kw)/9,250rpm
- 最大トルク
- 93Nm(9.5kgm)/6,500rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- アルミニウム
- 乾燥重量/装備重量
- 166kg/188kg
- キャスター/トレール
- 24°/93mm
- サスペンション
- F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアーム+モノショック - ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ245mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
- 軸間距離
- 1,474mm
- シート高
- 820mm
- 燃料タンク容量
- 14L
- 価格
- 144万5,000円~