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このバイクに注目
YAMAHA
FZ400
1997model

ヤマハファンでもほぼ知らないFZ400は600版がヨーロッパで大ヒット!【このバイクに注目】

ヨーロッパ向けツーリングスポーツの400cc版を国内リリース!

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濃紺に白地と赤のグラフィック……一見して1984年にヤマハが大ヒットさせたFZ400Rをイメージするものの、2灯ヘッドライトが丸形ではなく角形2灯。
1997年にリリースされたヤマハFZ400は、ほぼ認知されず1シーズンで姿を消した短命ということもあり、記憶に留めていないファンが多い。

車名のFZ400も、13年を隔てた後のバイクなのに紛らわしいが、「ネイキッドを超えた新スポーツマルチ(多気筒の4気筒を意味する)」を謳って登場した。
当時、ヤマハは空冷4気筒ネイキッドのXJR400/Rと、空冷単気筒のSR400をこの400ccクラスにラインナップ。
このトラディショナル系のみな状態へ、よりスポーツバイクらしい機動性を与え多様化すると睨んだニーズへ向けての意図があった。

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実はネイキッド・ブームという現象は日本国内のみで、排気量がミドルクラス以上のスポーツバイクは高速道路での移動速度も高く、ハーフカウル仕様が標準的でいわゆるスポーツ・ツーリングがメジャーなカテゴリー。
ヤマハはこのミドルクラスへ新機種のFZS600を投入するタイミングで、これに相乗りするカタチで国内向け新ネイキッド・スポーツが開発されたのだ。

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エンジンは水冷DOHCの気筒あたり4バルブ。レプリカ全盛だった1980年代とは異なるアップライトで乗る姿勢での運動性を前提とするシリンダー前傾角だが、バルブの挟み角が一気に狭くなったジェネシス以来の2本のカムシャフトが近いヘッドまわりのコンパクトさもデザインとしてアピール。
ボア56mm×ストローク40.5mmの399cc(FZS600はボア62mm×ストローク49.6mmの599cc)で自主規制上限の53PS/11,500rpmと3.8kgm/9,500rpmのパフォーマンス。
フレームはパイプのダブルクレードルをワイドにレイアウト、乾燥重量177kgに収めていた。そして何より目立つのがフロントブレーキにブレンボ製キャリパーを装備と、当時のヤマハXJR系譲りの豪華仕様でもあった。

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短命で終わったFZ400に対し、600版はFZ600Sへと進化!

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しかしネイキッド・ブームも一段落していた当時、ライバルメーカーもミニカウルやロケットカウルを装着する流れもあり、FZ400は新規の機種といったイメージをアピールできず埋没してしまう状況に陥っていた。
対してヨーロッパへ向けたFZS600は、ほどよい斬新さが好評で大ヒット。
その勢いにカウルをより高速イメージとしたFZ600Sが、2001年からリリースされる好況を呈していて、これに気を良くしたヤマハは新規にR6ベースの新世代FAZERエンジンと、レプリカ時代に鍛えたアルミ鋳造技術を駆使したネイキッド専用のフレームで構成するFZ6-Nを2003年に発表、スタイリッシュなデザインとパフォーマンスで記録的なヒットを飛ばしたのだ。

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このいかにもヤマハらしいFZ6-Nの400cc版は、スポーツバイク全体が失速気味だった国内向けに企画されることはなかった。
FZ6-N系はその後バリエーションも増やし、ヨーロッパのスタンダートモデルとして位置づけされるまで認知度を高めたが、日本ではこうしたヤマハらしさを繋ぐことのない時間が過ぎていたのが何とも悔やまれる。

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日本では2輪運転免許制度で、大型バイクの免許が教習所で取得できる時代となったことが、400ccスポーツバイクの需要を大きく落とした原因でもあるが、海外のようなミドルクラスを充実させる転機とできないほど、日本の国内スポーツバイク・マーケット規模が縮小したタイミングでもあった。
そうした背景で不人気だったFZ400、実は中古価格の手頃さから最近は品薄で、注目機種となりつつある。