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チェーンの張り過ぎはサスが縮まなくなる!?【ライドメンテナンス020】

Photos:
藤原 らんか,Shutterstock(dreamnikon/Daniel Jedzura)

最新のバイクほどチェーンは遊びを多めに設定、
張り過ぎると走行に支障が!

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最新のバイクほど、ドライブチェーンはほとんど伸びないので、新車だと慣らし運転後に僅か再調整する程度。
ツーリングへ出かける前に自分で調整などというメンテナンスも縁がないだろう。

とはいえ、雨降りを走ったりチェーンに過酷な状況が続くと、さすがに遊びが大きくなって、加速で駆動がかかるとギクシャクしてくるかも知れない。
そんなとき、もし自分でチェーンを引いて調整することがあったら、テンションが強すぎるまで張ると、サスペンションが縮まなくなるというトラブルに陥るので要注意。

それはトラクションの効率を高める設定によるもの。
加速してもリヤサスは縮まない、コーナリングからの脱出加速で、路面にグイッと食い込むようなグリップを得るための設定なのだ。

加速で路面を捉えるアンチスクワット設定を活かすために
チェーンの張りは思いきり緩めになる

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皆さんの愛車のスイングアームは、ドライブチェーン側のフレームと結んでいるピボット軸の近くで、スイングアームの上面に樹脂(プラスチック)かラバー製のスライダーが装着されているはず。

チェーンがスイングアーム上面を削ってしまわないよう保護をしているのだが、それはピボット軸をチェーンが擦れるほど高い位置に設定しているからだ。
なぜこのように上のほうへ偏った位置にしてあるかというと、 加速をしたときチェーンが後輪を沈めないよう、駆動でチェーンを引っ張ったとき、後輪を路面方向へ押し付ける応力が働くようにする位置関係にしてあるのだ。

もし後輪が加速で、リヤサスでいうと沈むほうへ動こうとしたら、たとえばコーナリング中でバンクした状態から加速がはじまった瞬間にタイヤは路面から離れるほうへ応力が働いてしまう。
もちろん、これは容易にスリップする。

そこでスイングアームのピボット位置を思いきり高くして、チェーンが引っ張られたとき、ドライブ軸とピボット軸と後輪アクスルとの3点の位置関係を、距離の短いスイングアームの下側を引っ張るようにしているのだ。

つまり加速で後ろがグッと沈んでいるように感じるのは、フロントフォークが伸びるのを相対的にリヤサスが縮んでいると錯覚しているワケだ。
この加速で沈まない(しゃがみ込まない)設定を、アンチスクワットといって、パワートルクの強大なマシンほど、このピボット位置が高い。

とくにオフロードモデルでは、瓦礫で空転しないようやんわりと路面へ押し付ける、たっぷりとした設定が与えられているのだ。

リヤサスが縮むとチェーンは遊びがなくなる!

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というこの3点の位置関係から、コーナリングで大きな荷重をうけた高速域や、大きな衝撃でリヤサスが深く沈んだとき、後輪のアクスル軸がピボット位置から最も遠くなる。
つまりチェーンは張る方向で引っ張られることになる。

このときチェーンの遊び調整で、行き過ぎた強めの張り方をしていると、チェーンがピンと張って、それ以上はリヤサスが縮まない、ストロークを抑えてしまいかねない。
それは衝撃吸収力を妨げたり、コーナリングでは大事な沈み込んでトラクションが機能するアライメントを崩すなど、かなり不都合な状態になる。

チェーンが張って、サスペンションがフルストロークできない状態へ陥るのは絶対に避けなければならない。
スイングアーム・ピボットやドライブ軸ベアリングにも大きな負担増になるからだ。

そのためにも、チェーン調整は指定されている位置(スイングアームの真ん中あたり)で指で軽く上下させ、必ず許容されている遊びになっているかをチェックしよう。
チェーンがやや張っている状態でも、指で押せば遊びがあるように思えてしまうが、それは既に張り過ぎであるのをくれぐれもお忘れなく。
どうせいつか調整するのだからと、少し強めに張っておくのもNG。
たっぷり緩んだ状態が良好な位置関係なのだ。