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ハンドルにチカラが入っていると曲がらないというけれど……【ライドナレッジ178】

Photos:
藤原 らんか

ハンドルで前輪を押えると曲がる機能を妨げてしまう!

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よくいわれるのが、肩や腕にチカラが入っていると曲がりにくくなるということ。
とはいえ、チカラが抜けていたほうが理想的かも知れないけれど、いうほど違いがあるとは思っていない……というライダーがほとんどだろう。

ところが、そこにはとんでもないほどの違いがあるのだ。
これを理解するのに、先ずオートバイの前輪の仕組みを知るところからはじめよう。

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前輪を支えているフロントフォークには、キャスター角という斜めの設定がしてある。
これは車体の重量をうけた前輪が復元力という真っ直ぐ前を向く特性と、少しでも車体が傾くと前輪に舵角がついて曲がりやすくなる特性と、相反する両方を併せ持つよう設定されているのだ。

そして実際、車体が傾くと前輪は促されるように後輪が描く軌跡の外側を、なぞるように弧を描いていきながら曲がっていく。
これをハンドルを持つ手が、手前に引いたり逆の前へ押したりすれば、後輪の軌跡に対し追従性を妨げる、つまり曲がり方を弱くしてしまうことになる。
それがどれほどの違いになるのか、ここからの説明を読んで試してみれば、驚くほどの差があることに気づくはずだ。

手首を真っ直ぐ、手の外側でホールドすれば、妨げられなくなる!!

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ツーリング中に、左手首が痛くなる人は多い。
とくに前傾のキツイ姿勢のバイクでは、上半身を支えるのがこの手首になりがちだ。
時間が経つにつれ、この手首が曲がって体重を載せてしまう状態が増えていくのはご存じのとおり。

これが先ずハンドルの左を前に押す、つまり右に切るような入力となるのはおわかりだろう。
この左手首の角度を真っ直ぐにするだけで、ハンドルを押したり引いたりをしなくなる。

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同じ意味で手首の角度だけでなく、ハンドルを持つ親指のつけ根に負担をかけないようにするのも忘れずに。
それには手の外側にある薬指と小指の2本でハンドルをホールド。

慣れるまで2本だと不安であれば外側3本、人差し指でハンドルを包み込まなければ、親指のつけ根を押し付ける負担はなくなる。
そうしたとき、実際にどれほど違うかは、イラストにあるようなふたりで前輪を左へ5センチ。右へ5センチほどゆっくり振ってみると明確にわかる。

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これはライダー側でいるより、前輪を左右へ揺する側の人が感じられる違いなので、ふたりで交替しながら試してみる必要がある。
まず手首を曲げた状態にしてもらい、前輪を左右へゆっくり振ってみよう。
このときの前輪の重さというか抵抗する反力を覚えておいて、次に手首を真っ直ぐにしてもらい、同じように左右へゆっくり振ってみるのだ。

するといきなり驚くほど軽くなるのがわかるはず。
左手首の角度だけでここまで違うとは、やってみるまで想像できない。

次に今度は手首の角度ではなく、親指のつけ根が圧迫される握り方と、外側2本でホールドしたときの違いだ。
そして今度はライダーにハンドルを左右へ切る方向へチカラを入れてもらう。
そうすると外側2本でホールドしていると、かなりチカラまかせに押えようとしても押えられないのがわかる。

この手首の角度と外側2本ホールドの組み合わせでハンドルを掴んでいれば、いわゆる前輪の旋回追従性を妨げない、専門用語でいうところのセルフステア、オートバイに元からある車体の傾きに促されて、前輪が曲がりやすい追従性が発揮されるというわけだ。
試しにカーブを走ると、イン側へバイクが寄り過ぎて慌てるほど曲がれたりする。

ぜひこの違いを実感して、慣れるまでは走り出したら10分おきにでも左手首が真っ直ぐになっているかを確認したり、親指のつけ根がグリップに圧迫されていないかを何度でも確認しよう。
できたらやっておいたほうが良い……などというドコロではない、決定的で大きな違いになるのは、この体験をしてみないことには信じにくいはず。
体験した人なら頷ける大差なので、是非ともお試しを!