カワサキは威風堂々のフラッグシップから
スポーツ性をアピールする先駆けとなっていった
1972年、センセーショナルなDOHC4気筒の900cc、Z1でホンダCB750フォアの独り舞台を許さなかったカワサキ。
すべてのパフォーマンスで頂点を極め、クオリティでも当時の常識を覆し、ハンドリングでは揺るぎない最高評価を得た、まさにフラッグシップと呼ぶに相応しい存在感を誇った。
そして1978年、トラディショナルなティアドロップ型の燃料タンクを、次世代を意識させる角張ったフォルムへと変え、キャストホイールを装着したZ1000MkII、そしてビキニカウルを纏ったZ1-Rがデビュー、威風堂々の頂点バイクからスポーツ性で他との差別化を標榜する路線を明確に打ち出した。
そんなカワサキへ追い風となったのが、全米選手権AMAのスーパーバイク。このアメリカならではのアップライトなネイキッドスポーツで闘うレースで、Z1000 MkIIを100PSへパワーアップしたZ1000Jで、エディ・ローソン選手がチャンピオンを獲得したのだ。
カワサキはこのAMA参戦を目指す市販レーサーと、ローソンレプリカと呼ばれるZ1000Rを発売、これに装着したビキニカウルが、実に35年もの間、カワサキのネイキッド・スポーツのアイコンとなるとは、当時は誰も想像すらしていなかった。
こうした空冷4気筒のパフォーマンスと、評判のハンドリングなど人気車種に君臨したことが、水冷化への後れをとることになった。
紆余曲折を経て、カワサキは1984年に最後発の水冷DOHC4気筒GPZ900R(Ninja)でスーパースポーツ領域を一気に挽回、ベーシックスポーツはゼファー750など空冷が主流となっていたが、1997年に他にも転用されたきたNinja900の水冷4気筒エンジンを1100ccへ拡大、新しいネイキッドへ搭載したZRX1100Rを投入したのだ。
ZRX1100Rはローソンレプリカを甦らせ
ZRX1200Rでさらに多様なファンへ拡がりをみせた
ZRX1100Rはローソンレプリカを彷彿させるビキニカウルを纏い、段差のついたシート形状などレーシーなスポーツネイキッドのフォルムで、狙い通りカワサキのラインナップで欠かせない定番バイクとしてのポジションを獲得。
さらにライバルメーカーがビッグネイキッドの排気量をアップしていく流れに対抗、2002年モデルとしてZRX1200Rが登場した。
まさしくローソンレプリカのカラーリングにはじまり、イヤーモデルとして毎年バリエーションカラーの発売を重ねたが、2006年にはパールクリスタルホワイトのカラーリングにBEET社製カーボンサイレンサーを装着した限定車を追加、その翌年にはブラックを基調としたグラフィックが登場するなど、Ninja900同様にファンの心を捉え続けた。
2008年、インジェクション仕様となり
車名をDAEG(熟成/飛躍)として最終章へ
スポーツネイキッドZRXシリーズは、既に10年を越えるロングランモデルとなっていたが、2009年に排気ガス規制への対応でフューエルインジェクション化をはじめ、フレームなど細かなアライメントの変更など次世代として見直しをはかったZRX1200 DAEG(ダエグ)を投入。
燃料タンクにマーキングされた、古代から中世に北ヨーロッパ民族で使われたルーン文字で「D」にあたるDAEGは、区切りや終わりと始まりなど相反する意味も込められ、最後の完成形としてのZRX1200への思いが込められていた。
最大の変化はZRX1200Rまでは5速だったミッションを6速化したことだろう。
他にもエンジンの吸気バルブ径からカムプロファイル、バルブスプリングにロッカーアームに至るまで細かな仕様変更が加えられ、熟成を確実に深めていた。
そして2016年、ZRX1200 DAEGは遂にファイナルエディションを発表。1997年から継承されてきたローソンレプリカのグラフィックによって締めくくられることとなったのだ。