180°クランクの高回転ツインは意外なほど力強いトルクを発揮!

カワサキは1972年に伝説の900cc、Z1で一躍ビッグバイクのトップメーカーへと躍り出た。
そこからザッパーと呼ばれたZ650RSに、Z750TWINとリリース、1973年には2気筒のZ400RS(Z400B)と中型クラスまで矢継ぎ早に4ストロークでラインナップを揃えた。
そして遂に1979年には250ccツインのZ250FTを発売、いかにもカワサキらしい硬派向けスポーツで、他メーカーのようにメジャーな400ccのボアやストロークを縮めた共通エンジンではなく、250cc専用にコンパクトでスリムな構成でデビューしたのだ。


その250cc専用ツインは、ボア×ストロークを55mm×52.4mmとややショートストロークな設定で、248ccから27ps/10,000rpmと2.1kgm/8,500rpmの、高回転型出力と中速トルクにレスポンスにも強さを感じさせる二面性を併せ持っていた
クランクシャフトは一般的な一体型ではなく、初代Z1以来の組み立てクランクを受け継ぎ、両側をボールベアリングとセンターにローラーベアリングを組み込んだ、高回転を前提に耐久性の高いエンジン仕様。
しかもクランク位相は左右のピストンが交互に上下する180°。
往復慣性を打ち消し合うため振動が少なく超高回転域まで伸びるメリットと、180°と540°の不等間隔爆発でパルシブなグリップ感から確かなトラクションも得られる活発なフィーリングに仕上げられていた。

フレームはダウンチューブが1本のセミダブルクレードルで、軽く前傾したシリンダーと共にリーンのレスポンスとフロントの安定感を優先した、Z系の乗りやすくコーナリングで攻めやすいアライメントとなっている。
そしてそのフォルムは、Z1000MKIIにはじまるZ750FXに国内で超人気モデルとなったZ400FXと同じ「角ゼット」と呼ばれた丸みを廃したスリムな燃料タンクで、テールカウルまでを含めいかにもカワサキが一目瞭然なデザインが人気を呼んだ。



その後デビューモデル(A1)から間もない同じ1979年末には車体カラーを変えたA2が加わり、1981年モデル(A3)ではオートカムチェーン・テンショナーでメンテナンスフリー化、A5ではCDI点火と時代に沿った進化が反映されていった。
その乗り味は400ccとは明らかに別格で、両膝で挟んだ車体がスリムでコンパクトながら、軽々しい軽快感ではなく安定感に包まれた運送性で、大型バイクのようなフィーリングの質感を楽しませるスポーツ性が好評だった。


250ccは欧米だと日本の125cc的に小型バイク扱いされがちだが、カワサキは海外でもZ250AとZ250B(前後スポークホイールでドラムブレーキ)の車名で、他とは違う硬派な本格スポーツの評判で存在感を得ていた。
ツーリング向きなハンドリングと、車体やエンジンの頼もしさなど、距離を走るライダーには、これぞカワサキといわせるアイデンティティが脈々と流れ、そうした信頼の厚さで選ばれた傑作マシンのひとつとしてファンの心に刻まれたバイクだ。



