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チャンバー、モノサス、ライポジまでレースパーツだらけ。 まさかの夢の具現化で時代は一気に動いた!【RZ伝説 Vol.3】

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2ストのレーシングマフラーと同じ
チャンバーと呼ばれる形状で市販車に装着されたのはRZが初!

RZ250が圧倒的な注目を集めていたのは、それまでの常識を覆すレーシングマシン直系の仕様にあったのは間違いない。

それを象徴するひとつが、チャンバーと呼ばれる排気管の形状。2ストロークエンジンは、4ストロークのような燃焼室に機械的なバルブ(弁機構)を持たない。吸気も排気もシリンダーに開いたポートに対し、ピストンが上下動することで開いたり閉まったりする構造だ。
このためエンジン回転域でによっては、吸気が燃焼される前に排気へ押し出されてしまったり、逆に前回の燃焼で出た排気の圧力で次の排気がされにくくなるなど、気体が圧縮されて起きる圧力の管理をする必要がある。
このため排気を膨張室へ誘導して、出口を絞ることで抜けにくくしたりなど、毎回の排気の脈動を吸い出したり押しとどめたりするために、究極の性能追求するレーシングマシンでは、マフラー中央部分の直径を常識的なマフラーの倍ほども太くして、出口に向かって絞り込む構造とするのだ。
このシリンダーの排気出口から、なだらかな曲線で膨らんで絞られるカタチを、エキスパンションチャンバー(expansion chamber=膨張室)と呼ぶ。これが転じて一般的には「チャンバー」が名称として飛び交うようになっていった。

とはいえ、これはレーシングマシンのためのモノ。一般のスーパースポーツは4ストのスポーツバイクと同じように直線的なマフラーで、内部に隔壁を設けることで膨張管に似た効果を与えていたのだ。
それをレーシングマシン直系の水冷で高出力化したのを象徴するかのように、常識的なメッキ仕上げの直線形状のマフラーではなく、レース専用と同じ膨張管の中央で膨らむ形状で、しかもレーサーと同じ黒で仕上げるという、レーシングパーツそのままに見える仕様としたのだ。
このセンセーショナルなマフラー形状は、その後に続いたライバルメーカーの2ストマシンすべてが採り入れることとなり、「チャンバー」の呼び名と共にカスタムパーツのマフラーが多くのチューナーから市販されるようになった。

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上:TZ250 1977年 下:RZ250 1980年

レーシングマシンだけの排気システムだったチャンバーが市販車のデザインに採り入れられたRZ250。さらにヤマハではモノクロスサスと呼ばれた、1本のショックユニット(モノサス)もレーシングマシン直系で採用されるというハイエンド仕様

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上:RD250 マフラー 下:RZ250 チャンバー

2ストでもスポーツバイクは4ストと同じメッキ仕上げで直線的な形状が常識だった。それをレーシングマシン専用とイメージされていたエキスパンションチャンバー(膨張管)の、中央が膨らんだフォルムで黒い仕上げとファンにはまさかの仕様で装着されたのだ

リヤサスが見えない!モノサスもレプリカ必須の仕様に。

RZがどれだけ革新的だったか、そのTOP3に位置づけられるのがリヤのサスペンション。当時の常識でいえば、リヤサスは2本。スーパースポーツであろうと、現在のネイキッドのように後輪アクスル(車軸)の近くからほぼ垂直に車体側のシートレールとでマウントされていた。

それがRZでは「見えなくなった」のだ。ヤマハでは’73年からモトクロスでこの1本サスを採り入れていたが、それは大きなストロークを必要とするオフロードでの発熱を、2本サスの位置では不可能な大容量のユニットと置き換えたもので、吸収力と性能の安定で圧倒的優位を築いた歴史があった。
それをエンジン性能の向上で、コーナリングスピードも高くなり、激しい動きを許容する容量の大きな、このモノクロスサスと呼ばれた方式をロードレースでも採り入れることになったのだ。
ワークスマシンに続いてヤマハでは市販レーサーでも採用がはじまっていたが、そこまでの性能は公道を走るスーパースポーツには必要ないと思われていた。
その常識を覆し、ヤマハは何と250ccスポーツにこのモノクロスサスを装備したのだ。RZがいかに一歩も引けぬ切り札であったかを伺わせるフィーチャーといえるだろう。
そのたっぷりとした許容量の大きなリヤサスのおかげで、そして前回紹介したあり得ないほど高剛性なフレームによって、RZ250は路面状況の良くないコーナーでも安定して駆け抜けられるハンドリングとして、多くのライダーにコーナリングの醍醐味を楽しませる大人気車種となったのだ。

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当時のRZ250カタログに掲載されていた透視図イラスト。リヤサスがカンチレバー方式といわれたパイプで三角形を組んだスイングアームの先に1本の容量の大きなモノサスをマウントしていたのがわかる

ステップ位置がスイングアームピボットより後ろに!

さらにもうひとつ、あまり意識されてこなかった大きな違いが、RZ250にはまだあった。

それはライディングポジション。上半身が前傾して下半身では腰の位置、シッティングポジションが思いきり後退、ステップの位置が何とスイングアームピボットより後ろという、まるでレーシングマシンの位置関係に設定されていたのだ。
どれほど違うかといえば、RD250ではクラッチの膨らみ直後、比較するとRZ250はRD250のタンデムステップよりやや前というほど後退している。

燃料タンクを見るかぎり、従来のRD250より際立ってロングタンクに見えていないかも知れない。ところがシートとの関連などデザインの妙で、実際は従来の250ccでは前例のない、大型バイクでもようやく後退がはじまったばかりのライディングポジションとなっていた。
この思いきった位置関係の違いに、RZ250の独占は許さないと追っかけ登場したホンダVT250Fをはじめ、250ccレプリカと呼ばれるハイエンドマシンすべてが同様なライポジ設定で追随していくことに。
このため、大型バイクと変わらない自由度の大きなライポジで、後輪にたっぷりと体重を載せダイナミックにコーナリングしていく250という、剛性の高いフレームや許容量の大きなモノサスと共に、大人気を博した大きな魅力でもあったのは間違いない。
そしてこのレプリカブームはさらに火がつき、カウリングを装着したりアルミフレームを採用したりと’80年代後半にはGPマシンのどんどん近づき、’90年度に入るとついにはレーシングマシンと同時開発と、すでにレプリカ(複製)ではなくなるまでエスカレートしていったのだ。

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上:RD250 1973年 下:RZ250 1980年

ヤマハはスポーツモデルで前傾したライディングポジションを設定するため、RD250でもロングタンクといえる形状だった。それをRZ250はさらにステップ位置を後退させたライポジとしていた。ステップ位置がRDではクラッチの膨らみに近い場所だったのが、RZではスイングアームピボットより後ろにまで後退させている。タンクは一見それほどロングタンクに見えないかも知れないが、タンク後端もスイングアームピボットより後ろと、RDのタンク後端がピボットより前と比べると一目瞭然

2ストロークと4ストロークは何が違う!?(教えてネモケン)|ネモケンのBike Meeting.003 Part.3|RIDE HI