運動神経抜群! 筋肉質なトップアスリート!
ブルターレ800ってこんなによく走るの? 走り出した瞬間にそう思う。スロットル操作とリヤタイヤが直結しているようなダイレクトさで、中速域では少しのスロットル開度でも簡単にフロントタイヤの接地感がなくなる。
あまりにも素直にフロントタイヤが浮くため、前輪が路面に接地してから浮いていたことに気がつくシーンがあるほど。スタンダードもこういった動きをするが、レーサーはよりリニアにエンジンと車体がレスポンスする。
エンジンはノーマル。マフラーはキャラメルモータースと鈴鹿のコンストラクターであるTSRが共同開発したチタン製フルエキゾースト。マフラーとエアクリーナーを交換しているが燃調はノーマルだ。確かに燃調は薄いが、中速のトルク感は強い。
見た目にもコンパクトだが、走り出すと800ccの質量をまったく感じさせない。どんどん旋回スピードを上げていきたくなる
素性が良いMVアグスタの3気筒エンジン
この3気筒エンジンの3,000〜4,000rpmのトルク感は本当に頼りになるし、中間排気量にありがちな回さないと走らない感じがまったくない。高回転で盛り上がる二次曲線的な加速はないが、どこから開けても車体をきちんとレスポンスさせ、加速に繋げる力強さを持つ。レーサーはそこにレスポンスの良さと気持ち良さが倍増された印象だ。
そして忘れてはならないのは、このエンジンは市販車でいち早く(2012年のF3セリエオロから)逆回転クランクを採用したことだろう。現在、MotoGPは全車、ドゥカティのパニガーレV4やホンダのCBR1000RR-Rが市販車で逆回転クランクを採用している。
逆回転クランクのメリットのひとつは、進入時に強いエンブレが効いても前輪に大きな荷重が載らないこと。だからどこまでも後輪主体で曲がっていくフィーリングが強い。
旋回速度を上げていく走りの組み立てがしやすいから、筑波サーキットのようなコースだとインフィールドでかなり強みになる。
その後の加速でも理論上はフロントをリフトさせない方向に慣性が働くはずだが、キャラメルモータースのブルターレレーサーは、前途したとおり中速域の力強さが際立っており、容赦無く前輪を離陸させる……。
また、4気筒よりも爆発間隔の広い3気筒は、後輪が路面を掴んでいるフィーリングがわかりやすく、それが自信を持ってスロットルを開けられることに繋がっている。
オートシフターを使ってエンジンの回転の上昇を楽しむ。速さの中に気持ち良さがあり、それがMVアグスタに乗っていることを強く実感させてくれる。
タイヤはピレリのスーパーコルサSC1。イベントレースでNo.1シェアを誇るタイヤで、フィーリングを掴みやすい。ただグリップは猛烈に高いため、ネイキッドで履きこなすにはそれなりのセットアップが必要だ
メーターはL2M Chrome Plus。視認性の高いデジタルタイプを採用
マスターシリンダーは、クラッチ&ブレーキともにブレンボレーシング。キャラメルモータース&サンスターのコラボディスクと合わせてとてもコントローラブル。効きだけでなく、リリース感もよいため、曲がるタイミングも掴みやすい
ステップはMVアグスタの純正オプションパーツ。磯野さんはなるべく、一般の方でも手に入れやすいアイテムでレーサーを製作する
MVアグスタの輪を広げていきたい!
「いまはみんなSNSを見ていますよね。だからキャラメルモータースのお客様だけでなく、いろいろな人がブルターレ800のテイスト・オブ・ツクバ(以下、TOT)の参戦を知ってくれるんです。今回は大阪のクレアツィオーネさんや宇都宮のアドバンスMCさんのメカニックの方も手伝いに来てくれています。ウチのお客様だけでなく、みんなで盛り上がりたいなぁ」とキャラメルモータース代表の磯野さん。 他のショップでMVアグスタを買った人も遠慮せずにキャラメルモータースに遊びに来て欲しいそう。磯野さんはショップ、ユーザーという枠を超えてMVアグスタの輪を広げていきたいのである。
今回はクシタニのライディングミーティングで試乗させていただいた。ありがとうございました。キャラメルモータースの磯野さんと、国美コマースの菊地さんにも感謝
走るほどに楽しさが湧き出す!
失礼な話だが、実は乗りにくいんじゃないか……足周りは硬いんじゃないか……。そんな先入観もあった。菊地さんの出した1分0秒8はそういうタイムだ。
しかし、その先入観は良い意味で裏切られた。ピットアウトした瞬間から乗りやすいのだ。サスペンションは逆に柔らかすぎると思うほど。キャラメルモータースのブルターレ800レーサーはとてもコンパクトに旋回していく。前後タイヤのグリップも明確。走るほどに楽しくなってくる。だから自然とペースが上がっていく。
よく動くサスペンションは自由度の高さに繋がるが、逆に勢いだけでは走れないため、菊地さんの丁寧で正確なライディングが思い浮かぶ。
ペースを上げてもコンパクトにコーナーをクリアできる機敏さは変わらない。パイプフレームのしなやかさ、そしてコンパクトな設計の3気筒エンジンのメリットが様々なシチュエーションで活きているのがわかる。
見た目はネイキッドだが、どこまでも旋回速度を上げていきたくなるコーナリングマシンだ。ここまで運動性の高いネイキッドはなかなかない。
数周で5秒台が出た。攻めている実感はない。1コーナーも最終コーナーもフルブレーキングしていないし、リズムだけで気持ちよく走っているだけだ。キャラメルモータースのブルターレ800レーサーは、楽しさと気持ち良さが速さに直結している。
これは、MVアグスタユーザーにフィードバックすることのできる大切な要素である。
排気量&パワーはライバルより圧倒的に劣るのに、インフィールドでくらいついていく決勝レースでの姿は痛快だったが、実際に試乗させていただくとそのキャラクターがよくわかる。
向き変えが素早く決まり、すぐに加速体制に移行できる。フルチタンマフラーが奏でる3気筒特有のエキゾーストノートも心地よい
「足周りや燃調などまだまだやることはあります」と磯野さん。
「1分を切りたい。もう少し思うようなレースをしたい」と菊地さん。
2021年もその挑戦は続く。MVアグスタが、ブルターレ800が、3気筒/800ccがどこまで国産ネイキッドに対抗するか……もしくは凌駕するのか……次のステップが楽しみだ。
キャラメルモータースと菊地さんの挑戦は2019年からスタート。今後、どこまでタイムを伸ばしてくれるか期待したい!