水冷Vツインの始動からはじまる新世代の息吹
キルスイッチを兼ねたスターターボタンで、V100の全く新しい世代のグッツィは呆気なく始動。これまでの重々しい2~3回クランキングしてから目覚める、クラシカルな余韻はない。
瞬く間に1,500rpmのアイドリングに落ち着き、軽くスロットルを捻ってブリッピングしても、グラリと横揺れしていた従来の縦置き独得のトルクリアクションも極く僅かでほとんど感じない。
またこれまでのOHVのようにメカニカルな駆動音も耳に届かず、この現存するイタリア最古のグッツィも、遂に新世代の最新モデルの生産がはじまったのを実感させる。
新しい低位置に構成したシャフトドライブで、ギヤをシフトしたショックから加減速でのリフトや沈み込むリアクションも抑えられているため、発進はスッと出て行くいかにもクールなフィーリングだ。
クラッチは軽く、テスト中に遭遇した長時間の渋滞でも左手が過度に疲れることもない。Sモデルのクイックシフターは、シャフトドライブにありがちなバックラッシュによるショックもなくスムーズだ。
高度な電子制御が楽しませるどのモードでもエキサイティングな醍醐味
ライディングポジションは、シッティングポイントが比較的後ろめの設定。高めのハンドルバー設定と、太いグリップが長時間でも疲れにくいバイクであることをアピール、ツーリング好きなら気に入るに違いない。
815mmのシート高は、前端をかなり絞った形状で足つきは問題ないと思うが、800mmと835mmのシートも購入可能で、小柄な女性から体格の良い人までの広範囲なユーザーを意識しているのも新世代ならではだろう。
水冷ショートストロークの4バルブヘッドでアタマが大きくなった新型エンジンが、吸排気を90°ひねったレイアウトのためスロットルボディが燃料タンク下で、旧来のOHVエンジンのように膝が当るようなこともない。前輪荷重への配慮も兼ねてシリンダーを5°前方へ傾け、従来のクランク前方にあったジェネレーター系をシリンダー背面へ配した設計も寄与している。
新しい縦置きVツインは、2,800rpmを越えるとまっしぐらに力強い加速ゾーンがはじまり、3,000~6,500rpmはどこでも変わらないダッシュ力が引き出せて、ライダーに醍醐味あふれる至福のときを過ごさせてくれる。
高い回転域でもカウンターバランサーのおかげで、4気筒バイクで経験を積んだライダーにも不快な振動を伝えることはないだろう。
4 つのライディング モードは、すべて8,700 rpm で 115PS/84.6 kW という同一の出力を持ち、レブリミッターは 9,500 rpm に設定され、最大トルクは 105 Nm/10.70 kgm/ 6,750 rpm。 レインモード(Pioggia)も他のほとんどのメーカーのように20%出力ダウンさえしていないのだ。
すべてスロットルのレスポンスをモードに準じて穏やかにする対応で(もちろん空転に対するフェイルセイフは全域で機能している)、高速域のパフォーマンスを犠牲にしない手法が特徴的。
ツーリングモードとロードモードは非常に良く似ているが、細かいニュアンスで駆動レスポンスが異なりライダーが自分スタイルでスポーツ性を楽しめる意図が込められていた。スポーツモードがその典型で、エキサイティングな気分に浸れるはずだ。
これら電子制御系を含む開発が、同じピアジオ・グループで常に電子制御の最先端にチャレンジしているアプリリアR&Dセンターで行われたという事実を知ると、この高いレベルの完成度と具体的な使いやすさに、なるほどと納得がいったのも付け加えておきたい。
電子制御サスがサポートする様々なシーンでのアクティブな走り
多くが注目しているだろう初の可変フラップは、100km/h以上で影響をもたらす可能性があるようだが、130km/hでトンネルを抜けてもこの形状では残念ながら空力の変化が感じられなかった。
また90mmと高さ調整が狭い可変スクリーンは、風圧に対する違いはかなり大きい。欲をいえば長距離ツーリング好きには、両肩にも影響がある形状が欲しくなる。
マンデッロSに標準装備されているオーリンズ製Smart EC 2.0セミアクティブ電子サスペンションは、スタンダードモデルの機械的にフルアジャスタブルなサスペンションと比べると、高いレベルの状況に対する応答性(ECUが様々なセンサーから感知して0.20秒以内に継続的な動作)と、デリケートに微入力でも作動するコンプライアンス性能で大差がついていた。重量差が僅か1kgと聞くと、これは選択の余地がない気がする。
オーリンズECシステムが4つの電動ステップモーター(圧縮と伸びでリヤサスに2つ、フォークは左に圧縮と右に伸びで2つ)を搭載する必要があり、この重量に収まるのは驚異的といえるからだ。
そもそもアライメントが適正な設定でるのを伝えるニュートラルなステアバランスだが、コーナー立ち上がりでトラクションから前輪がアンダー気味になるのを抑え、旋回中に向き変えのためにブレーキングを加える際に安定を崩さないサポートで、実にうまく操ることができる。
個人的には190/55のリヤタイヤが、通常のライディングにはややオーバーサイズな気がしたのが正直なところ。
5インチのTFTメーターパネルは、縦表示のタコメーターを除けばイタリア感性とは思えない直感的な見やすさだ。
これだけの先進性を、強烈な個性というべきモトグッツィ独自の縦置きVツインと融合することに成功したV100は、新たな他とは違うバイクに乗りたい層を獲得していくだろう。
そしてこのNewエンジンは、次々にバリエーションを増やすことになる。11月のEICMAではBMWのR1250GSのライバルがデビューするはずだ。
吸排気の方向を90°変えて足下すっきり
5インチの見やすい表示のTFTメーターパネル
高速域でライダーへの風圧を変える可変フラップ
電子制御サスで走りの醍醐味とマージン大幅アップ
エキゾーストノートを含むサウンドと走りの動画はこちら
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SPEC
- 最大トルク
- 105N-m(10.7kgf-m)/6,750rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- 高張力鋼管ダイアモンド
- 車両重量
- 212kg
- タイヤサイズ
- F=120/70R17 R=190/55R17
- 全長/全幅/全高
- 2,125/835/NA
- 燃料タンク容量
- 17L
- 価格
- イタリアで標準モデル 15,499 ユーロ、S バージョン 17,999 ユーロ(それぞれ 22% のVATを含む)