静止した車体にライダーが乗ってリヤサスがどこまで沈むか
サスペンション調整と聞くと、自分は知識もないし慣れてない走りにはメーカーが出荷時にセットした万人向けで充分と思いがち。
しかし攻める走りをするしないではなく、たとえば誰でも体重には違いがあって、個々に合わせた位置をセットすることで「安心できる安定感」や「スリップしたときのリカバリー能力」を高めることができるのだ。
服や靴のサイズを選ぶのと同じような意味なので、快適と安全のためにこの調整は必ずやっておきたい。
ではどこを調整するのかというと、リヤのサスペンションが乗車時にどこまで沈むか、その沈む深さをプリロード調整というスプリングを予め撓ませておくために締めている強さをアジャストして位置決めをする。
この撓ませる(たわませる=sag)量の調整なので、別名「サグ出し」と呼ぶプロも多い。
但しその沈ませておく適正な位置は、伸び切ったゼロ荷重状態からフルストロークの25~30%ほど沈んだところ。
注意したいのは静止した状態で、ライダーが乗らずに車重だけで沈んでいるのを1G、車重が載らずに伸び切った状態を0G、ライダーの体重が加わって沈んでいるのを1G’といって、調整して探すのはこの1G’の位置だ。
またフルストローク量は、何人がかりでもそこまで縮めるのは難しいので、メーカーのSPECや取扱説明書に記載してあるので調べておこう。
なぜ予め沈んでいる量(リバウンド・ストローク)が大事なのか
サスペンションは路面の凸凹を吸収するとき、衝撃をうけたときの圧縮側へ縮む動きと、その圧縮動作の次にある路面へ追従するための伸びる動きとがある。
この伸びる動作をリバウンド・ストロークといって、イラストにあるようにライダーを不安にさせない安定性や、バンクして滑ったときに伸びる動きで一気にスリップダウンしないよう危険な状態を回避する大事な役割を担っているのだ。
ライダーの体重でサスが沈むと、柔らかい足応えの軟弱なイメージと勘違いしがちだが、その逆の体重で沈みにくい硬いサスをハードに攻めるライディング向きと思い込んでいると、それはリカバリーに弱い呆気なく転倒してしまう性能の低いサスペンションということになるのをお忘れなく。
因みにスリップ直後にライダーを放り出す「ハイサイド」は、滑って路面から離れかかったトレッドが何かのきっかけでグリップしてリヤサスが一気に縮まり、反発で伸びることで起きる危険な現象だ。