1000ccクラスが手に負えず、800ccクラスへ乗り換えました。
しかし軽くて扱いやすい期待と裏腹に掴みドコロがなく戸惑うばかり。
これって何とかなるのでしょうか?
A.まず減衰力を調整してピッチングしやすい状況を作ってみましょう!
せっかく手に入れた大型免許、どうせ乗るならリッタークラス……そんな思いから手に入れた頂点バイク。余裕の低回転域トルクなど、扱いやすさでもリッタークラスのメリットは大きなものがあるのを実感できます。しかし思うように扱いたい、華麗に乗りこなしたいとなると、やはり手に余る重さやパワーに感じてしまうのも無理はありません。
そんなニーズに応えるのが、800ccクラス。排気量だけダウンサイズではなく、車体も含めて全てをコンパクトに新設計した機種で傑作揃いです。
中間排気量のバイクがリッターバイクと大きく違うのは?
中間排気量のバイクとリッターバイクでは当然のことですがパワーというか力量感が違います。さらに中間排気量の軽快さの根拠となるピッチングの違いがあります。
ピッチングとは、バイクの重心を中心として前後に円を描くような運動のことで、スロットルの開け閉めによるフロントフォークの伸び縮みなどがピッチングを誘発します。これは丁寧に開け閉めすれば、シーソーのように大きく動くことはないと思われがちですが、駆動系にはいくつもの連なる各ギアの遊びや、チェーンの遊びなど、専門用語で言うバックラッシュという遊びの集積が多く内在しているため、ベテランのように最小限の動きに抑えるのは至難のワザなのです。
これが同じエンジンを排気量だけダウンサイズしたバイクだと、トルクの違いがそのまま車体のバックラッシュを少なくして、ピッチングが抑えられるのです。
このひとつひとつのアクションに対するピッチングの減少が、車体のアクションのタイムラグを減らし、車体の挙動としての慣性が残らないため、軽快で思うように操れるような感覚をライダーに与えてくれるのです。
軽快なら乗りやすいはずなのに中間排気量に馴染めないのはナゼ?
ところがビッグバイクに長く慣れ親しんだライダーは、このピッチングが様々な動きのきっかけとして身体に染み込んでいて、気づかないうちにこれを利用して操る乗り方を身につけています。そのためピッチングが小さいと、本来身体にインプットされた車体が安定した挙動をはじめるきっかけを感じず、軽くて扱いやすいはずのバイクが頑固で曲がりにくいものに感じてしまう可能性もあるのです。
敢えてピッチングを誘発すると、シビアさを感じず緩さが馴染みやすくする
そんなライダーはどうすれば良いか……ピッチングの話でピンときている方もいらっしゃるかもしれませんが、サスペンションの減衰力をピッチングに効く伸び方向の調整を思い切り弱め、場合によっては圧縮側も弱めてピッチングしやすい状況を作ることが先決です。調整は最弱まで一気に弱めても、減衰力がゼロになるワケではないのでリスクを心配する必要はありません。
もちろんこれには個人差がありますが、ほとんどのライダーはピッチングの少なさを軽く扱いやすいものに感じ、慣れるのも早く乗りやすさから楽しいと思える走りが手に入るはずです。
そうやって馴染みやすくなれば、もともと小さなアクションで軽やかで鋭い運動性が楽しめるようになるはず。この「ひと越え」で世界は一変します。
そもそもピッチングというものは「人間がバイクに乗りアクションする上で安心感を与えてくれるタイムラグ」という側面も介在しているため、ネガティブなように思えて実は大事な味方であることをお忘れなく。
MotoGPでさえ、迷ったらサスを動かしてプロライダーはスライドしやすいゆっくり大きく動くアクションで感覚を馴染ませ、それから必要のない動きを抑えていくのが定番です。
どのバイクも一緒でリヤサスの減衰調整は伸び側を弱めると軽快で乗りやすくなる
フロントフォークも伸び側を緩めると違和感が解き放たれて乗りやすくなる場合が多い