レインタイヤが猛烈な雨の中でも深くバンクできるのは何が違うのですか?
A.暖めなくても柔らかく路面追従するゴム質と、深いグルーブのおかげです。
冷たい状態でも粘着質のコンパウンド、水幕で浮かない細かく刻んだ深いグルーブ
レース用レインタイヤは、水しぶきを上げて走るほど激しい雨でも、膝を擦れるほど深くバンクできていて、一般の感覚からすると信じられない光景としか言いようがありません。
そして実際、濡れた路面なのに深くバンクできて、急のつく操作をしなければ滑る気配もみせません。
まさにキツネにつままれた気分です。
レインタイヤには、細かいピッチでたくさんの深いグルーブ(溝)が彫られています。このグルーブによる排水効果で、タイヤのトレッド面が路面に接することができる……確かにそれも効果は大きいですが、一番の主役は冷たくでも粘着質で触れた面をペッタリ包み込むコンパウンド(ゴム質)にあります。
ご存じのようにレース用スリックタイヤやスポーツタイヤは、トレッドが暖まることでゴム質が柔らかくなり、どんな小さな凸凹にも追従して高いグリップ性能を発揮します。
つまり低温だとゴム質が硬くなり、グリップ性能はガタ落ちです。
そこで暖めなくても柔らかいコンパウンドが、ウエットコンディション用に開発されました。
雨の日は路面温度も低く、タイヤも暖まりません。
それでもグリップできるコンパウンドは、当然ですが少しでも路面が乾いてくると瞬く間に熱くなり、トレッドがちぎれるように減り、僅か数ラップで滑りすぎて走れなくなってしまいます。
そんなリスクがあるため、ウエットだったレースで路面が乾きはじめると、まだウエットパッチが残っていても、ほとんどのライダーがスリックタイヤへ履き替えるのです。
それともちろん細かいピッチで刻まれた深いグルーブも、激しい雨で水幕ができてしまうと路面からタイヤが浮いてしまわないよう、この深い溝へ水が流れ込むようなパターンがデザインされています。
ただ排水性がどれほど高くても、そもそも低温でも柔らかいコンパウンドでなければグリップしません。