カスタムパーツで、バックステップあたりから始めようと思うのですが、何を基準に選んだら良いかわかりません。
ステップを変えるのは、どんなメリットがあるのですか?
A.バックステップは、体格や乗り方に合わせて前後関係を調整できる便利なカスタムパーツ!
数あるカスタムパーツの中で、まずは手頃な価格からとステップを変えるライダーは少なくありません。
’80年代に大流行したので、昔からのファンならばバックステップはワケ知り顔をするために必須アイテムのひとつだったのを憶えていると思います。
で、バックステップというからには、足を置くステップ(フットレストともいいますね)の位置を、後ろへ変えるのが目的とイメージしますよね。確かに’80年代当初はその通りだったのですが、いまはライディングスタイルも変わって、ステップは前寄りになりつつあります……といった誤解しやすい部分も解き明かしつつ説明していきましょう。
1979年にDOHC化して新世代CB750Kが登場。ステップは旧来の位置
数ヶ月差で続いてデビューしたCB750F。ステップを後退させスポーツ性をアピール
バックステップという呼び名のルーツは?
バックステップは、’60~’70年代に英国ブランドのスポーツバイクを前傾ポジションにカスタムしたカフェレーサーが元祖でしたが、それは所詮マイノリティでマニア向けの世界。
これを世界中で流行らせて、スポーツバイクのライディングポジションを変えたのがホンダCB750F(海外ではCB900F)でした。ホンダはアメリカで’70年から規制される排気ガス規制のマスキー法を自動車メーカーの中でひとり可能だと宣言、世界で名を馳せるチャンスと2輪開発のエンジニアも総動員して取り組んだため、この間にカワサキZ1やスズキGSに席巻されてしまった位置関係をひっくり返そうと、1979年にDOHC化した新型CB750Kを投入、続いてヨーロッパのカフェレーサー風にスポーツ度合いをアップしたCB750Fをデビューさせたのです。
それは威風堂々の上半身が起きたいかにもビッグバイク然としたKタイプを、ハンドルを低く燃料タンクをロングにしてステップ位置を後退させた、あのカフェスタイルを彷彿とさせるものでした。
これがバックステップをある種カルチャーにまで流行らせた源流となり、それ以降メジャーなスポーツバイクはバックステップを標準仕様とするようになったのです。
この着座位置をグンと後ろに引いたレーシーなポジションは、燃料タンクもニーグリップ部分が後ろに延びたロングタンクとなり、必然的にステップ位置も後ろへ下がるようになったのです。チェンジペダルもステップ位置に合わせてリンクを介する方式に変わりました。
ということで、さらにステップ位置を後ろにしているライダーほど、腕に自信がある……ようにみえてた?かどうかはともかく、猫も杓子もバックステップでした。
MotoGPマシンでも市販のスポーツバイク並みにステップは前寄りに位置する
しかしその後、ステップ位置はスポーツ度合いの高いモデルほど前寄りになりはじめました。スーパースポーツでは腰を落とす乗り方が前提のライディングポジション設定がされたからです。このライディングフォームだと、あまりステップが後ろにあるとコーナリングに都合の悪い側面もあります。
先ず足首の位置が後ろにあると、どうしても上半身が覆い被さるような姿勢になり、体重をシート座面でうけにくくなります。これはトラクションなど旋回加速のパフォーマンスで、ライダーの体重を後輪へ効率良く伝えるのを損ないます。いわゆる下半身が開いた状態は腰の位置が前にズレやすく、後輪をしっかりグリップさせにくい姿勢になりがちです。
さらにバンク中のアウト側ステップで、外足の脛から膝までの面で車体をホールドしてライダーを安定させるにも不都合な位置関係になってしまいます。
同様に内側ステップも、腰を落としたフォームだと前寄りのほうがシートに対し腰との位置関係が安定します。
さらにブレーキングで、強烈な減速Gで腰が前に滑らないようアウト側のステップを蹴るような踏ん張り方が、コーナリングアプローチへの繋がりがよく、この腰を(お尻を)後ろへ突き出す姿勢はステップが前寄りのほうが安定します。
さらに右から左へと傾いた車体を反対側へ切り返す腰の移動も、ステップが前寄りなほうが上半身に影響せずできる……ライダーアクションが激しいレーシングマシンは、ステップ位置は意外なほど前の方にあるのです。
AELLAのライディングステップキット、DUCATI PanigaleV4用でAE-10089
エッ、だったらバックステップなんて要らないってコト?
そうですね、バックステップという呼び方が残ってしまっているのは誤解を生じてしまうので、カスタムパーツのメーカーも”バック”を表記しないケースも増えてきました。少なくとも後ろのほうがエライ時代はとうに終わりを告げています。
またステップの高さも、低くしないとコーナリングで下半身がイン側へ収まらなかったり、足の長さによってはコーナーで接地しやすくなっても、低くしたほうが無駄なチカラが入らず都合が良い場合もあります。
このように最新のバイクほど乗り手にとって、高すぎたり後ろ過ぎると良くないことが多いのは事実です。
いずれにせよ自分に合った位置決めを可能にするのは、高価なスーパースポーツを手に入れたらやっておきたいことのひとつ。いうまでもなく体格はひとりひとり違います。無駄なチカラが加わらず、リラックスした状態でもしっかりホールドできて、アクションもしやすい……そんな微妙な調整はカスタムパーツならではです。
軽量かつ剛性も高く、仕上げも溜め息もののハイクオリティ揃い。ぜひ専門知識のあるプロのアドバイスなど聞きながら、自分に合った位置を探してください。