A.全体像を見る訓練を!
「バイクで走るときには遠くを見る」とよく言われます。
しかし、気がつくと見ているのは近くの路面ばかり……。
これを克服するにはどうすればいいですか?
警戒心が強いほど1点を見つめてしまいがち
実は多くのライダーが陥りがちな事例で、ボクもやってしまうことがあります。
そもそもバイクで走りだすと、前輪のすぐ前の路面を見てしまいがちですよね。それはどちらかというと、目の前に避けなければならない段差や不整を早期に発見するためというより、単に警戒心が先立った行動といえるでしょう。
路面の段差や不整を早期に発見するなら、もっと遠くを見ることが必要です。それは、心理的にすぐ目の前の、実は対応しようにも間に合わないかもしれない、直前の状況を把握することで不安を減らしたいわけです。
しかし、たとえばワインディングでカーブを曲がっているとき、目の前のセンターラインばかり見つめていたらどうなるでしょう。
途中でセンターラインの曲がり方がきつくなり、バイクが曲がりきれないように感じたら慌ててしまうに違いありません。バイクを起こしてブレーキをかける……が、もっとも危険な対応方法ですが、ビギナーほどこれをしがちです。
もう少し先を見ていたら、とんでもない速度でコーナリングしていなければ、軽く減速して曲がれる速度への調整も間に合います。
これを解決するにはちょっとした訓練が必要です。
次の焦点を探すのではなく全体像を見る
ワインディングでは路面やセンターライン、アウト側にある対象物に焦点を合わせがちになりやすい。映画の大スクリーンを見るように全体像を意識して、遠くを見る訓練をしよう
視線を上下させず固定した状態で先を見る
まず人間の目は警戒する気持ちが強いほど一点を凝視します。そのため走っているとき、少し遠くを見ていても、焦点を合わせた場所が近づくにつれ視線もそのまま手前に来てしまうのです。そして、目の前まできたら、遠くを見つめる次の焦点を探す……この先を見たつもりが手前まで焦点を追い続け、また先を見るという繰り返しは、実は見えていない区間を生じるなど判断を誤るリスクもあるのです。
ではどうすればいいでしょうか? 映画の大きなスクリーンを見るように、全体を把握して一点を見つめない訓練をするのです。もちろんボンヤリ眺めていたのでは、危険察知もできません。視界の中にある大事なファクターに気づく集中力を維持しつつ、視線が上から下へ変化しないよう、固定した状態で先を見るクセをつけていくのです。
最初は集中できずに戸惑うかもしれません。慣れてくると視線が小刻みに変わらないため、目の疲れが減る効果も含め、快適さとなって身についてきます。
遠くを見るとバイクが曲がりやすい状態になる
遠くを見ようとすると、車体の中心線に対して身体の上半身が自然に内側に入る。重心がイン側に移るため、バイクが曲がりやすい状態となる。意識して、顔全体や両肩ごと進行方向に向けるとより効果が得られる