燃料タンク部分に収納スペースと給油口はテールカウルの思いきった新しいデザイン!
1990年4月、スズキはいかにもエアロダイナミクスの良さそうなフルカバードボディの250cc4気筒をリリース。
最大の特徴は250ccクラスのモーターサイクルでは初の、フルフェイスヘルメットが収納できる25リットルの大容量パーソナルスペースを、通常の燃料タンク位置に設けたこと。
このため燃料タンクはシート下となり、給油口はリヤのテールカウル内にあり、両方とも電磁ロックで跨がったままスイッチで開閉できた。
エンジンはスーパースポーツのGSX-R250がベース。
水冷DOHC16バルブ4気筒で49×33mmとショート・ストロークの248cc。キャブレターは2気筒分をワンボディに収めるBSW27の2連装で、45ps/14,500rpmと2.6kgm/10,500rpmのスペックだが、エキゾーストに連結チャンバーを加えるなど中速域でのレスポンスを強めて街中やツーリング対応のチューンが施されていた。
またフレームはダブルクレードルと剛性確保で安定性に留意した設計。
ガソリンスタンドでは給油口が電磁スイッチに触れるとテールカウル部分でカパッと開き、スタンドのスタッフを驚かせていたのと、ラゲージスペースは内装があり何でも放り込める完全なトランクとなっていた。さらにはこのスペースごど取り去ることで、点火プラグ交換などエンジン部分へ直接手を入れることも可能だ。
このメットイン仕様で、通勤や通学、さらには買い物やツーリングでも、煩わしいゴム紐やネットで荷物を縛る必要がなくなり、もっと自由度のある使い方でライフスタイルまで考え方を変えてしまえる……そんな新しい提案をスズキはニースが広範囲で最も多い250ccクラスで展開しようとしたのだ。
輸出モデルも存在し需要喚起に粘る姿勢で1998年まで生産を継続
果たしてレプリカ全盛期から需要が減りはじめたこの頃、原点復帰でネイキッドのブームにも火がつきだしたこともあり、フルカバードのメットイン・スポーツバイクに注目は集まりにくかった。
しかし1990年10月からは、日本国内向けだけではなくオーストラリアをはじめ250cc需要のあるエリアへの輸出もスタート。
いわゆるスポーツバイク・ファンのメリットをパフォーマンスだけではない部分に求めるユーザーを前提に、その車体色もレッドをベースにブラックだけではなく、様々な中間トーンのグラデーションまで含めたトライが繰り返されていた。
そもそもニーズを掘り起こすコンセプトでスタートしたプロジェクトだったことから、大きな成功を収めた販売台数には達していなかったが、何と生産は1998年まで続き、1999年までカタログモデルとして存在する隠れたロングセラーだったのだ。