ミドルクラスで世界のメジャーバイクへ進化、
25年超えロングランの基盤となったSV400/650



1990年代の国内400スポーツは、並列4気筒(直4とも呼ぶ)のご存じネイキッド・ブーム真っ只中。
海外にはほぼないカテゴリーで、欧米のミドルクラスがツーリングモデルで進化していたプロセスを経験していない特殊な状況にあった。
そこへ1998年にスズキが水冷DOHCの400ccVツイン、SV400とSV400Sを投入してきた。
実はコレ、メインは1年後にリリースしたSV650の先行量販車、世界戦略バイクとして現在も継続生産される壮大なプロジェクトのはじまりだったのだ。

ボア72.0mm×ストローク49.0mmの90°Vツインは、53ps/10,500rpmと高回転型スペックだが、トルクは4.2kgm/8,000rpmの400ccクラス最強。
ツインの瞬発力を感じさせるレスポンスと、扱いやすくコーナーでのトラクションを楽しめるトルキーなエンジン特性を目指していた。
さらにアルミ製パイプでトレリス構成とする贅沢で軽量かつ強靭なシャシーを備え、乾燥重量は163kgと高いポテンシャルを予感させる。

SC400Sはハーフカウルを装着したセパレートハンドルと、スーパースポーツではないものの親しみやすいツーリングスポーツをアピールしていたが、何せ国内では馴染みのない400Vツインは、イメージしにくい存在。
バーハンドルのセミアップ・スタイルのSV400に至っては、さらに想像もつかないキャラクターで、注目を浴びないままが過ぎていった。
ただ乗ればわかる、リーンアングルの大小に影響をうけにくい超ニュートラルなハンドリングと、小気味良いレスポンスと旋回加速の醍醐味が存分に楽しめるエンジンとシャシーは、ベテランには安心して身を委ねられる希有な特性として評価が高かったのだ。

こうして理解されないまま、2003年モデルでフロントをダブルディスク化するマイナーチェンジをうけたが、一旦は国内向けの生産を休止している。
そしてヨーロッパのトラディショナルな街並みに合うデザインを採り入れたSV650に合わせ、2010年にGRADIUSというシンプル且つネオクラシカルな造形のシリーズとして再スタートを切ったのだ。




さらに2016年モデルから、パイプで構成されたフレーム部分が増えた新デザインの、よりベーシックなSV650へとモデルチェンジ。
キャブレターをインジェクション化したメリットで、出力も国内仕様で76.1ps/8.500rpm、64Nm/8,500rpmへとアップされた。
そして2018年、ネオカフェなイメージを狙った現在でも継続生産されているミニカウル装着のSV650Xが加わったのだ。
このSV650を起点とするスズキのミドルVツイン実績は、ツーリング需要に特化したVストロームを派生し、これも大きな拡がりを生みながらいまも主要カテゴリーを形成している。
これだけの長期間、バリエーションを増やしながら多くのライダーに愛されてきたスズキのSVシリーズは、その確かな信頼度と共にいまも安心してお奨めできる現役レジェンドバイクだ。
