アメリカ・カナダだけのアメリカンスポーツはネイキッド!

1986年、ヤマハはYX600 RADIANをリリースした。
エンジンは輸出モデルXJ600の空冷DOHCで気筒あたり2バルブ、58.5mm×55.7mmの599cc。
66hp/9,500rpmと51.9Nm/7,500rpmと、穏やかなパワー特性で誰にでも乗りやすいミドルクラス・スポーツが狙いだ。
そしてご覧のように、日本のネイキッドとは雰囲気が全く異なる独得なアメリカン・スタイルを纏ったデザインにまとめられている。

ヤマハには1981年にXJ750をリリースしたとき、デザインをアップライトなライディングポジションを強調したXJ750Aがバリエーションとして存在していた。
それはホンダのホライゾンに見られるように、アメリカン・チョッパーではなくアップライトでもロードスポーツを標榜した、アメリカ・カナダのマーケットならではのカテゴリーだ。
そもそも1970年代まで、ロードスポーツはアップライトなライディングポジションを標準としていたが、アベレージスピードが速いヨーロッパ向けを前提としたスーパースポーツでは前傾した姿勢へと進化。
ただアメリカではそうした使われ方が少数派で、アップライトなポジションが主流で、チョッパースタイルともカテゴリーを分けた位置づけとなっていたのだ。


このため、YX600(RADIANの車名もつけられている)のこのデザインは、ヨーロッパはもとより日本でもカタログには載らないカテゴリーとなっていた。
どこかややマッチョな雰囲気と容量の小さな燃料タンクは、1985年にリリースされたV-maxとも通じるところがあるのが見てとれる。



ただ、いまこうして眺めて見ると、プルバック・スタイルのチョッパー風アメリカンより日本での使われ方に向いているようにも思える。
しかしこれまでほとんど紹介されてこなかったフォルムだけに、こうしたデザインの復刻も新しいバイク・カルチャーとしての刺激となる可能性もありそうだ。
