400で唯一の油冷だったイナズマ(400)は、もとはといえばGSF750/1200からの派生で逆発想のイナズマ1200が誕生!
1997年、スズキの400ccにはなかった油冷エンジンを搭載したネイキッドを企画、イナズマ(INAZUMA)と命名して国内向けに発売した。
ベースはGSF750/1200系なので、これを400ccへスケールダウンした構成。
これが僅かだがコンパクトになり、輸出向けをメインにもとの油冷1200ccを搭載するINAZUMA1200が誕生することになった。
車体は基本骨格をイナズマ400と共通のコンパクトなもの。各部の肉厚を上げるなどしてフレーム全体を強化している。
フロントフォークも400のφ41mmからφ43mmへと換装、エンジンマウントの追加、バネレートやダンピング特性を見直したリアショックを採用し、1200ccエンジンならではのバランスを考慮した強化が施されている。
ホイールサイズはGSF1200と共通(前3.50-17/後5.50-17)で、ブレーキはブレンボのキャリパーを奢っていた。
国内向けには地味なカラーリングだったが、輸出仕様では鮮やかなレッドや輝く黄金虫色もリリース、コンパクトで親しみやすいネイキッドに一定の人気を得ていた。
油冷と聞くと、大型のオイルクーラーで潤滑系統でも冷却を助ける的な解釈が多いなか、スズキはオイルをシリンダーヘッドの内部で燃焼室の外壁へ、専用のオイルポンプで高圧噴射する特別な仕組みで冷却。これは手に息を吹きかけるとき、同じ体温でもゆっくり吐くと暖まるのに、勢い良く吹きかけると冷える原理と同じ。
つまり高圧で噴射すると、オイル温度が高くても燃焼室の外壁の表面にある境界層が吹き飛ばされて冷却されるテクノロジーだ。
このためオイルは冷却だけの回路があり、ヘッドからオイルパンへ戻す経路がある得意な構造。
ただ国内では元からあったGSF750やGSF1200との差違が伝わらず、注目を浴びないままが過ぎ、2000年にはBANDIT1200へと車体関係を変更、INAZUMAのほうは2001年にこれをベースにトラディショナルなカウルやシートを艤装したGS1200SSへと変身、GS750/1100系を懐かしむファンに受け容れられることになった。
油冷が築いた数々の歴史の中で「イナズマ」はマイノリティな存在で知る人が少なかった。
しかしこだわりのスズキ・エンジニアたちが受け継いだ愛情は並々ならぬものがある。